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消極性研究会(SIGSHY)による連載『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』。今回は西田健志さんの寄稿です。西田さんが開発し、学会で好評を博した傘連判状システム。この仕組みは(悪い意味で)積極的な人の声ばかり目立つ昨今のウェブで、消極的な人たちの意見に力を与えるシステムになりうるのでしょうか。その可能性と課題について論じました。
※本記事に一部、誤記があったため修正し再配信いたしました。著者・読者の皆様にご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。【11月8日16:30訂正】

【お知らせ】
11月12日(月)にPLANETS CLUBの定例会で、消極性研究会から栗原一貴、簗瀨洋平、渡邊恵太の3名がゲスト講師として参加します(消極性研究会×宇野常寛 社会をなだめる #SHYHACK・PLANETS CLUB第9回定例会)。残念ながら私(西田健志)は参加がかないませんが、P10の座談会や本連載、そして消極性研究会の今後の活動について色々とご意見・ご感想いただけましたら幸いです。


消極性デザインは悪い積極性にも効く

本連載も無事1周しまして今回は西田健志が担当します。よろしくお願いします。

みなさん、PLANETS vol.10(以下、P10) はもう読まれましたか?今回はP10と併せてお読みいただくとより楽しめる内容にしたいと思いまして、私もいま8割くらい読んだところです。おもしろすぎて執筆が遅くなってしまいました。心よりお詫び申し上げます。(これを書き終わったら残りを読むんだ…)

P10には消極性研究会も「消極性デザインで平和を実現する―消極的な人よ、戦争を止めよ。いや、そもそも戦争しなければよい。」という座談会で登場させていただきました。宇野さんから「戦争と平和」というテーマをうかがったときには、これまで私たちが消極性デザインを試みてきたフィールドとの距離感を少なからず感じて期待と不安が半々くらいでした。でも終わってみると消極性研究会の持ち味が発揮された読み応えのあるものになったと感じています。ぜひご一読ください。

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▲『PLANETS vol.10

この座談会、2つの意味でいつもの消極性研究会と違いました。1つは、何も作らないでアウトプットしているところです。私たちも普段からSlackだとか飲みの席だとかで、ちょうどこの座談会のように大いにブレストを繰り広げていますが、それがそのまま世に出るということはまずありません。アイデアを実際に体験することができる何かしらのプロトタイプを制作したうえで世に問うというのが私たちの基本スタンスです。「消極的な人が暮らしやすいようにする」という目標設定で活動していくには言葉だけではインパクト不足だと考えてきたわけです。

しかし、今回の座談会で飛び交った突飛とも言えるアイデアの数々が思っていたよりも評判よく受け入れられているようで、今後の活動についても考えさせられるところがありました。司会や編集の腕前なのか、読者が訓練されているのか。それとも、実はいつものブレストにそれだけの価値があるのか…。

もう1つの違いは、「(悪い意味で)積極的な人を消極的にするには?」という枠で思考を広げる展開になったところです。普段、私たちの活動では消極的な人がメインターゲットで、積極的な人については「積極的な人にも消極的になるときがありますよね?」として、やはり消極性を念頭にデザインをしてきました。座談会でも序盤はどちらかというといつもの流れに乗っていたと思うのですが、後半にかけていつもと逆の流れになっていたように感じました。これまでにも栗原さんのSpeech Jammerのように積極的な人に対して用いるアイデア事例もありますが、それもあくまで「静かにしてほしい」と言えないでいる消極的な人の方を主語としているものでした。

しかし、流れは反転させながらも「人の性格を変えられなくても環境を変えることで行動は変えられる、ハックできる」という観点においてはいつも通りのやり口はキープされていたので、私たちにとってもちょうど次の一歩を示されたような、司会の確かな腕前を感じる時間でした。(誉めすぎ…?)

「遅いインターネット計画」

積極的な人こそどうにかしたいという発想になるのは、私たちよりも宇野さんは日ごろ積極的な人に目を向けることが多い(悩まされている?)からなのかなとも感じました。拙速なインターネット上のコミュニケーションから距離を置くことで良質な情報を提供することに注力しようというP10 の「遅いインターネット計画」にもそれが表れているように思います。そのつながりを感じたこともあり、遅いインターネット計画に関する議論についても大変な興味関心を持って読ませていただきました。

私がデザインしたコミュニケーションシステム、懇親会の座席を決めてくれるシステムを導入して利用してもらってきたのは学会や大学など、ある程度は人数が多いながらも外界からは閉じていて、たとえシステム上は匿名にしたとしても度を越した悪ふざけはしづらいし、積極的に問題行動を起こす人がいたとしても少数なのでその都度個別に対応すればまあ何とかなる、そういう世界でした。その視点から観測されやすいのは大多数の消極的な人たちと行動で、取り組まなければならないと感じるのも消極性デザインということになるわけです。


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