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記事 6件
  • 『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』第6回 消極も積もれば積極となる(濱崎雅弘・消極性研究会 SIGSHY)

    2018-09-27 10:30  
    540pt

    消極性研究会(SIGSHY)による連載『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』。今回はコミュニティ研究者の濱崎雅弘さんの寄稿です。濱崎さんがSNSブーム以前に開発した「学会支援システム」は、消極的な人でも紹介・被紹介による「出会い」を享受できる仕組みを目指したものでした。この試みで明らかにされた、「紹介」にまつわる意外な心理的負担とは……?
    はじめに
     皆さんこんにちは。緑豊かな学園都市つくばでインターネットとコミュニティ、さらにはニコニコ動画と初音ミクの研究をしている濱崎雅弘と申します。「ニコニコ動画と初音ミクの研究?」と思ったかもしれません。私はインターネットによって実現される新しいコミュニケーションとコラボレーション、そしてクリエーションに関心があり、そんな私にとって、ニコニコ動画上で初音ミク動画を中心として展開した派生作品文化は大変魅力的なものでした。2007年8月に初音ミクがインターネットの世界に颯爽と登場し、ニコニコ動画にて一大ムーブメントを起こしていた頃に、いったい何が起きているのかを明らかにしようとWebマイニング技術と社会ネットワーク分析技術を用いてデータ分析しました。
     そんな研究をしている私ですが、実は「消極性デザイン宣言」の著者の一人でもあります。こちらの連載で記事を書く予定になかったので、第1回の西田さんの記事にて紹介からは抜けていましたが、こっそり著者に入っていました。  本の中では、先述の初音ミク動画について、特に歌ってみた動画や踊ってみた動画と呼ばれる初音ミク動画の派生作品における消極性について書きました。動画を作ってインターネット上で公開するなんて、これぞ積極性と言わんばかりの行動ですが、そんな中にも消極性が垣間見えることを、拙著の中ではデータを交えて述べています。SHYHACKする道具や仕掛けを作っている他の4人と比べると、ちょっと異色な内容といえるかもしれません。それはそのはずで、初音ミク動画の分析は今から10年前の研究で、当時は消極性デザインやSHYHACKという観点でこの研究は行っていませんでした。その当時の研究を知っている方からは、以前聞いたときは派生作品がどんどん作られる積極的な現象として述べられていたのに、今回はそれが消極的な現象として述べられていて驚いた、とも言われました。  これだけ聞くとなんだか私が二枚舌みたいなエピソードですが、実はこれは大事なポイントで、作品が公開されたという結果そのものは「積極的な現象」なのですが、そのプロセスに「消極的な現象」が潜んでいた、ということが、あの本に書いた内容でした。
     本連載の第5回で、渡邊さんが「やる気は貴重な天然資源!」と指摘しましたが、ちゃんとした作品(動画)を作って公開するというのは、大変やる気が必要な作業です。動画は音も映像も作らなくてはいけないですし、作品を発表するというのはやはり勇気のいることです。つまり、投入しないといけない「やる気」は大量です。  しかし、初音ミク動画を中心とした派生作品のムーブメントにおいては、自分ができる部分だけ作って他は勝手に借用した「派生作品」が、「歌ってみた」「踊ってみた」といった「〇〇してみた」というやや及び腰なタグを添えて、大量に投稿されたのです。単体では投稿には至らなかったかもしれない作品が、他と足し合わせることで「やる気の壁」を越えて投稿に至ったわけです。  もちろん足し合わせるというコラボレーションだって本来は簡単ではなく、たくさんの「やる気」が必要になるわけですが、初音ミク現象が起きたその場所には、これを簡単にするいろいろな要因が詰まっていました。それが何か、ご興味のある方は消極性デザイン宣言の本をぜひ読んでみてください。また、初音ミク動画やその派生作品に興味を持ってしまった方は、この初音ミク現象をいろんな角度から可視化する音楽視聴支援サービス「Songrium」というものがあるので、ぜひお試しください。
     以上、私が「消極性デザイン宣言」に何を書いたのかという説明でした。ここまで話しておいてなんですが、実は私が消極性研究会に参加するきっかけとなったのは、これら初音ミク動画に関する研究ではありませんでした。初音ミク動画に関する研究は、消極性デザイン研究とはかけ離れた所からスタートしたもので、前述の話はSIGSHYに参加してから消極性デザインの文脈であの研究を見直してみて得られた知見でした。  では、どうしてSIGSHYに参加することになったのか。実はさらに昔に、まさに消極性デザインな研究をしていたのです。本ではこれについてはまったく触れていないのですが、良い機会ですのでお話したいと思います。昔話ばかりですみませんが、少々お付き合いください。
    学会支援システム
     学会や研究会は、研究者が自らの研究成果を発表するために集まるイベントですが、研究発表(プレゼン)だけでなく、研究者同士で情報交換したり議論したり、時には就職活動(若手研究者は任期付きがほとんど)したり、つまりはコミュニケーションすることも重要です。特に年次大会のようなたくさんの人が集まる学会は、むしろコミュニケーションの方が重要という研究者も少なくありません。  研究職といえば研究室にこもって良い成果が出るまで研究に没頭すれば十分でコミュ障向きの職業だと思いきや、ここでもコミュニケーション能力が求められるわけです。なんということでしょう。そこで消極性デザインの出番です。
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  • 『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』第5回 さよならスマートフォン――身近で遠いタッチポイント、消極性デザインが本領を発揮するIoTとインタラクションデザイン(渡邊恵太・消極性研究会 SIGSHY)

    2018-08-23 10:00  
    540pt

    消極性研究会(SIGSHY)による連載『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』。前回に引き続き工学者の渡邊恵太さんの寄稿です。次に観る作品を選ぶだけで時間がかかってしまうNetflixを、積極性を費やすことなく楽しむ研究や、スマホ画面の1ページ目の争奪戦を超えるAmazoDashボタンの狙いについて論じます。
    消極性デザインの連載、第5回目。今回も前回に引き続き明治大学の渡邊が担当します。 前回の串かつ盛り合わせからNintendo Switch、Netflixの話まで、一見よくわからない組み合わせから消極性デザインについて説明しました。串かつ盛り合わせが最新かはともかく、意外と最新の流行りのサービスやテクノロジーには消極性デザインが施されていたり、逆に消極性デザインを必要とする場面があることを知ってもらえたかと思います。
    今回も消極性デザインという切り口で、まずはNetflixの消極性デザイン的解決案から、さらに今回のタイトルでもある、みんな大好きスマートフォンの課題について考えていきたいと思います。そしてAmazon発のなんじゃこりゃIoTデバイス「AmazonDashボタン」が消極性デザインであるということを説明していきたいと思います。
    Netflixをいつ見るか?
    Netflixのような定額動画視聴サービスは、いつでも自由に観られる一方で、いつ観るかが問題になるということを前回ご紹介しました。さらに、膨大なコンテンツがあるために、どの映画を見るのかを自分で決めなければなりません。これは嬉しいことである一方、「今、この時間の気分に合う、まだ観たことのない何か」を選ぼうとすると、選ぶだけで時間かかってしまうこともあり、いつのまにか映画の約半分の時間、1時間も選ぶ行為にかかってしまうことがあります。Netflix社は「今夜Netflixで映画を見ませんか?」という形でレコメンデーションメールを流してくるわけですが、なかなか突然ですし、しかもメールという方法で来るので、そんなに簡単に予定調整ができるわけでもありません。
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  • 『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』第4回 串カツ盛り合わせにあって、Netflixに足りない消極性デザイン!?(渡邊恵太・消極性研究会 SIGSHY)

    2018-07-27 07:00  
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    消極性研究会(SIGSHY)による連載『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』、今回は工学者の渡邊恵太さんの寄稿です。積極性が、貴重なリソースになりつつある現在。それはゲームや映像といった娯楽も例外ではありません。消極的ユーザーをいかに取り込むかの工夫を、Nintendo SwitchやNetflixから考えます。

    消極性デザインの連載も4回目となりました。
    明治大学でインタラクションデザインの研究をしている渡邊恵太からのお話です。
    私は「融けるデザイン ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論」という本を2015年に出版し、iPhoneの操作感がなぜ心地よいのか?を自己帰属感という認知科学のキーワードを用いて説明したり、生活に融け込み、自然と情報技術を利用可能にするIoTのあり方について紹介してきました。この本は、出版以来、デザイナーやエンジニア、ビジネスマンなど多岐に渡り読まれ続けていまして、現在6刷目となっています。大学では、この本もあって、三菱電機さんやクックパッドさん、KDDI総合研究所さんなど、複数の企業と共同研究を行ってもいます。
    さて今回は、串カツ盛り合わせの話から、話題のNintendo Switch、Netflixまで。これらを消極性デザインという切り口で、考察していきたいと思います。
    「串カツ盛り合わせ」は消極性メニュー
    先日、消極性デザイン研究会のメンバーで、PLANETSさんのオフィスに行き打ち合わせをしました。その帰りに居酒屋に行きました。簗瀬さん「串カツ盛り合わせでいいですかね」ということで、盛り合わせを頼みました。ここであること気づきました。これは「消極性メニューだ」と。串カツは1本1本注文できるわけですが、積極的に1本ごとに決めていると意思決定に時間がかかります。居酒屋ではできるだけ早く乾杯に行きたいわけですから、ここでは意思決定のコストを最小化したいわけです。
    そういったときに、「盛り合わせメニュー」は店の串カツの定番的なものを入れつつ、バリエーションの豊かさの絵的メリットと試食的な満足度を提供しながら、複数人での意思決定のコストを最小化してくれるのです。このように人が積極性を発揮せず、消極的選択をしたとしても、残念にならない対象の「仕組み」が消極性デザインです。
    多くの飲食店、盛り合わせやセットメニューという消極性デザインされたメニューを用意することによって、メニューの選びやすさやを提供しています。さらに同じ商品であってもセットになることによる新しい名前付によって、新しい価値を生み出し提供メニューのユーザ体験を高めるUXデザインとも言えるでしょう。また、これはセットメニュー化によってお金を落としやすく仕組みにもなっていることは大事なことです。
    「人は弱い存在である」
    串カツ盛り合わせを選ぶという行為は、あまりに日常的でこれが消極性とはあまり感じないかもしれません。ですが、この感じないことこそ大事な現象です。自然に、無意識そちらに流れていく設計こそ大事だと思うのです。私の専門はインタラクションデザインです。日々こういった人間の認知の観点から、人の無意識や行為、活動を考えながら、道具やサービス、新しい情報技術でどうやって人間の日常生活に融け込ませる方法があるか研究しています。
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  • 『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』第3回 アレクサで始める #SHYHACK(栗原一貴・消極性研究会 SIGSHY)

    2018-06-19 07:00  
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    消極性研究会(SIGSHY)の連載『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』、今回は情報科学者の栗原一貴さんに、身近な #SHYHACK についてご紹介いただきます。最近身近になってきたスマートスピーカーは、じつは言いにくいことを人に伝えるときにも活躍をするのだとか。育児やビジネスの場面での効果的な消極性デザインとは?

    はじめに

    皆さんこんにちは。「物議を醸すモノづくり」が得意な情報科学者、栗原一貴と申します。2012年に珍妙な賞として世界的に知られている「イグノーベル賞」を受賞し、自らのマッドサイエンティスト人生を運命づけられました。現在は「秘境の女子大」と巷で呼ばれているらしい津田塾大学学芸学部情報科学科で、リケジョの育成に邁進しています。
    さて、拙著「消極性デザイン宣言」で私は、一対一、あるいは一対少数のコミュニケーションにおける「自衛兵器」の研究を紹介しました。
    おしゃべりな人を邪魔する銃「スピーチジャマー」、性能の悪い人工知能の暴走を装って自分のスマホやパソコンの画面を覗く人を撃退する「PeepDetectorFake」、耳の「蓋」として働くことで聞きたくない声や音を遮断する「開放度調整ヘッドセット」、そして人の目を見て話せない人のために視界のすべての人にモザイクをかける「視線恐怖症的コミュ障支援メガネ」などです。
    本日は執筆後の近況報告として、身近な話を一つ。家庭の話から、最後はビジネスコミュニケーションの話に繋がります。
    育児withアレクサ
    書籍執筆後の反響として、章末の寸劇でレイ子さんが言っていたように「コンピュータや技術にあまり詳しくない私は、どうやって消極性デザインすればいいのか」というものがやはり、ありました。これについては我々消極性研究会でも日々議論しておりまして、皆さんとともに「 #SHYHACK 」と称して日常の小さな工夫・デザインによって自分の環境改善に取り組んだ事例の共有を進めています。
    本日は、そのような中で最近我が家で流行している #SHYHACK のひとつ、「育児withアレクサ」をご紹介したいと思います。これは、消極性デザイン宣言の中で紹介した「性能の悪い人工知能の暴走を装って自分のスマホやパソコンの画面を覗く人を撃退するPeepDetectorFake」の原理を身近に応用したものの一つです。Amazon EchoやGoogle Homeなどの最近流行りのスマートスピーカーをお持ちの方であれば、その標準的な機能によって簡単に実践できます。すでに実践されている方もいらっしゃるでしょう。ですから新活用方法の提案というより、よくある利用実態の分析という感じでしょうか。
    PeepDetectorFakeのポイントは、以下のようなものでした。

    ・人間、特に消極的な人は、他人を咎める、責める、叱るようなことに多くのエネルギーが必要である。
    ・他人に咎められ、責められる、叱られるとき、そこに感情が込められていると、受け手も防衛反応からか感情的になってしまう傾向がある。
    ・コンピュータを使えば、人工音声やテキストメッセージによって、人に対して感情を排除して淡々とメッセージを送ることができる。
    ・コンピュータに発言を代理させれば、メッセージの発信責任について、「暴走した性能の悪い人工知能のせい」と偽装することができる。
    ・人が人にネガティブなメッセージを伝えなければならないとき、コンピュータを媒介にすれば、伝える側も気楽にできるし、伝えられる側も冷静にそれを受け止められる可能性がある。

    これを家庭内で応用することを考えてみましょう。こどもを叱るのって、難しいですよね。気持ちを込めて、心に訴える叱責。感情を抑えて、冷静に伝える叱責。その後のこどものダメージをフォローする工夫。我が家でも毎日、試行錯誤の連続です。私が特に苦手なのが、こどもが毎日のように忘れてしまう約束について、毎日のように守ることを促す叱責作業です。
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  • 『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』第2回 オーガナイズドゲームと消極性デザイン(簗瀬洋平・消極性研究会 SIGSHY)

    2018-05-23 07:00  
    540pt

    消極性研究会(SIGSHY)の連載『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』、今回は研究者・ゲームデザイナの簗瀬洋平さんの登場です。ゲーム開発を始めとした様々な分野で使用されているソフトウェア「Unity」に、エヴァンジェリストとして関わる簗瀬さんは、シンポジウムで参加者全員が遊ぶオーガナイズドゲームを実施しています。コミュニケーションの活性化に成功しつつありますが、「消極性デザイン」の観点からは、まだ課題も残っていると言います。

    エヴァンジェリストという仕事
     第一回で「モチベーション・やる気に関する消極性デザイン」として紹介されました簗瀬です。研究者、そしてゲームデザイナという肩書きで活動しています。
     私は子供の頃からコンピューターゲームが大好きだったのですが、ファミコンを買ってもらえない家庭に育ちました。しかしパソコンを触る事は許されていたので、中高は部活でゲーム作りに励み、大学時代からゲーム会社でアルバイトをし、そのままゲーム開発会社に就職して17年間ゲーム開発に携わってきました。
     代表的なプロジェクトは「ワンダと巨象」「魔人と失われた王国」などです。
      ▲『魔人と失われた王国』
     私のゲーム開発のキャリアは大学で学んだ情報工学や人間工学の知見によって成り立っています。ゲームは多くの要素が詰め込まれた総合芸術とも言える分野だと思っていますが、それをプレイするのはほとんどの場合人間なので、人間を深く知る事はゲーム開発をしていくうえで有利な事がたくさんあります。そうやって長年学術の恩恵を受けてきた私は、ゲーム開発者として現役の研究者の方々と交流を深めていくうちに、ゲーム開発の現場から学術の世界に知見を届ける事もできるのだということを知りました。
     そこで長年ゲームデザイナとして培ってきた知見を元に研究発表を行う様になったのが2012年です。
     現在はユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社に所属し、大学で教えたり様々な講演会、学会などで講演したり、論文を発表したりという学術系の活動をしています。
     私の会社が世に送り出しているUnityとはもともとゲーム開発に使われるソフトウェアでした。2018年5月現在、スマートフォンのゲームの50%はUnity、Nintendo Switchのゲームの30%がUnityで作られていると言われています。他にもPlayStation 4、XBOX Oneなどのハイエンド機やPlayStation VitaやNintendo 3DSなどの携帯機など多くのゲーム開発に利用されています。
     しかし、Unityの用途はゲーム開発だけではありません。先ほど書いた様にゲームとは多くの要素が詰め込まれた総合芸術のようなコンテンツとなっています。言い換えれば、ゲームを作れるツールはゲーム以外の様々な分野でも活躍出来るわけです。
     いま世界的に普及しつつあるバーチャルリアリティの世界では非常に多くの方がUnityを使っており、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)のOcurus Riftでは69%、HTC Viveでは74%、Gear VRでは87%、Microsoft HoloLensの91%のアプリケーションでUnityが使われています。
     他にも例えば現実感の高い映像をリアルタイムに描画する技術を使えば、映像作品を効率的に制作する事ができます。UnityでもAdamという一連のショートフィルムをリリースしていますが、ただのデモ映像という事には留まらず、様々なフィルムフェスティバルで賞を取ったり、「第9地区」「チャッピー」などで知られるニール・ブロムカンプ監督が続編の監督をすることになったりと大きな反響を呼んでいます。

    『Adam』
    https://unity3d.com/jp/pages/adam

     国内でも「魔法使いプリキュア」のエンディング映像や「正解するカド」に出て来るカドと呼ばれるフラクタル(シンプルな数式から生成される繰り返しパターンの図形)立体を描画するなど映像用途での利用も広がっています。
     アートの世界ではデジタルアートで多くの作品を生み出すテクノロジスト集団チームラボが「Story of the Forest」などを始めとした様々な作品にUnityを利用していますし、「デザインあ」などで知られる映像作家の中村勇吾さんもUnityを使って「GUNTAI」などの作品をスマートフォン向けにリリースし、現在は「HUMANITY」という作品を手がけられています。
    ▲『Story of the Forest』 ▲『GUNTAI』
    『HUMANITY』 https://vimeo.com/245474974
     また、こうした表現という世界だけでなく建築や自動車、家電など工業の世界でも製品を動かすインタフェースや製品を開発するためのシミュレーション、プレゼンテーションのための映像作りや教育のためのアプリケーション作成など広い用途で様々な企業がUnityを使って社内外にあらゆるソフトやサービスを送り出しているのです。 医療の世界では東京大学医学部脳神経外科で実際にメスを握って脳神経手術の執刀をされている金太一先生が自らUnityや3Dグラフィック制作のためのソフトウェアを修得し、実際に手術に使っている様子を講演で話されたのが話題になっています。

    【Unite 2018 Tokyo】Unityの医療と教育への応用 ~ちょっと人を助けてみませんか?~ https://www.slideshare.net/UnityTechnologiesJapan002/unite-2018-tokyounity-96499972

     多くの用途、様々なジャンル、個人から大きな企業までと社会の広い範囲で使われる開発環境、それがUnityです。
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  • 【新連載】『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』第1回 消極性デザインとは何か(西田健志・消極性研究会 SIGSHY)

    2018-04-17 07:00  
    540pt

    今回から消極性研究会(SIGSHY)の新連載『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』が始まります。「もっと積極的になりなさい」と言われる機会は多いものですが、人の性格を変えるように促すことは果たして合理性があることなのでしょうか。それよりも、消極的な性格のままでも人と交流しやすくする環境や道具をデザインすることが大切なのではないか。消極性研究会から西田健志さんに、消極性デザインと研究会の取り組みについて紹介していただきます。
    みなさんは「もっと積極的になりなさい」と親や学校の先生にたしなめられたことはありませんか。今でもそんな風に会社の上司に怒られてます、なんていう人もいるかもしれません。心の中で「もっと積極的にならなきゃ」とよく自分に言い聞かせてます、なんていう人もいるかもしれません。ちょうど、入学・入社して環境が変わったり、就職活動が本格化したりするこの時期、そういう悩みに自覚的になる人も多いのではないでしょうか。
    しかし、そもそも人の性格というものはそう簡単に変わるものでしょうか。簡単でないとしてもやるべきことはやるべきですが、そもそも性格を変えるように促すことには正しさや合理性があるのでしょうか。
    人の性格を変えるのは難しく、消極的な性格のままでも人と交流しやすい、あるいは行動を起こしやすいようにハードルを下げた環境や道具をデザインすることが大切だと私は考えます。
    この連載ではそのようなデザイン「消極性デザイン」にまつわる様々なトピックについて「消極性研究会」のメンバーが交代でそれぞれの得意とする切り口から考えていきたいと思っています。「消極性デザイン」ってどんなものだろう。「消極性研究会」って何者だろう。ほとんどの人はそう思うのではないかと思います。初回ですので、まずはその当然の疑問に答えながら、次回以降につなげていきましょう。
    第1回は、西田健志が担当させていただきます。情報理工学の博士を取得後、神戸大学で准教授をしているものです。学生時代からずっとコンピュータに向き合う人生を送ってきたのですが、人間への興味がだんだんと自分の中で大きくなって今ではコミュニケーションシステムの研究を主にしております。国際人間科学部グローバル文化学科というこの国でも「積極的になりなさい」圧がもっとも高そうなところで消極性を叫ぶ日々です。
    消極性デザイン?
    私は大学教員をしておりまして、冒頭のような悩みを抱えがちな学生たちを身近に見守る立場にあります。しかし、自分だってそう積極的なわけでもないのにそれを棚に上げて「もっと積極的に」とはなかなか口にできません。新入生歓迎のオリエンテーション行事では隅で会話の輪に入れないでいる人の存在に目を奪われてしまいます(それが教員だったりもすることもあるわけですが…)。授業中に学生をあてるときにはあてられる側の気持ちを想像してしまうのでこちらがひどく緊張してしまいます。
    一方で、授業中にはおとなしく、意見や質問をすることも稀だったような学生が、就職活動で突如として積極的に振る舞い始めるのも少なからず目にしてきました。これは一体何なのでしょうか。やはり、人は簡単に積極的に変わることができるものであって、「もっと積極的になりなさい」と叱責することには合理性があると思われるかもしれません。
    私は、その人自身の性格の変化よりも周囲の環境の変化の方が大きいのではないかと思っています。周りの学生が積極的に振る舞っている中、自分だけおとなしくしていたのでは逆に目立ってしまいます。目立たない程度に積極的に見えるように振る舞った方がまだましだということがあるということです。実際、そういう学生は大学では変わらずおとなしくしていますし、就活を通じてみるみる疲弊していっているようにも見受けられます。
    留学帰りの学生にも同じようなパターンが少なからず見られます。「留学先ではだんだんと積極的に振る舞えるようになったんです。でも日本に帰国して気が付けばあっという間に元通りでした。でもまた向こうに行ったら積極的になれるような気がします。」と話してくれることがありました。
    もちろん、どんなときでも積極的に振る舞ってよく目立つ人もいますし、就活に追い込まれても消極的なままという人もいます。しかし、大多数の人はその中間のどこかの性格を持っていて、周囲の環境によって振る舞い方が変わってくると考えるのが自然に思われます。消極的寄りである人が周囲の環境に合わせて積極的に行動することはあるけれども、それは性格が変わっているのではなく少なからず無理をしている結果であり、環境が戻れば振る舞い方もまた戻ってしまうのです。
    表に現れる行動と比べて性格の根っこにある部分は変化しにくいものだとして、消極的な人たちの振る舞いを引き出すには環境的に追い込んで無理をさせるしかないのでしょうか。建物をバリアフリー化することで車椅子生活をしている人の行動範囲が広がっていくのと同じように、心理的な障壁を取り除いて消極的な人の参加できる範囲を広げていくようなこともできるのではないでしょうか。もしそういったことが大きな負担なしに実現可能なのであれば、合理的な配慮であると言えるはずです。
    デザインを生業とする人たちにとっては、モノや環境に人が合わせるのではなく、人が快適に利用できるモノや環境を作るべきという発想はごく自然で当たり前のものといっても良いでしょう。ユニバーサルデザイン、ユーザエクスペリエンスデザインといった言葉の広がりとともに多くの人にその考え方は浸透し始めているようにも思います。しかし、こと消極性に関しては本人の努力によって乗り越えるべき問題とされ続けています。「もっと積極的になりなさい」という言葉の棘が呪いのように心に突き刺さったまま置き去りにされ、多くの人たちに少しずつの無理を強いているのです。
    消極性もデザインが対象とするべき領域なのではないでしょうか。このメッセージを象徴する意味も込めて、人の消極性を対象としたデザインのことを私たちは「消極性デザイン」と呼んでいます。(英語ではshyhackという語を用いています。「ハック」というと自分のためにちょっとした工夫を行うという印象で微妙にニュアンスは異なりますが、あまりそこは深く区別せず、響きやなじみやすさを重視しています。)
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