香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。香港は今、大きく揺れています。中国の司法介入を認める逃亡犯条例の改定案が審議されているからです。13万人が街頭に出た、雨傘運動以来という反対運動の様子を語ります。(翻訳:伯川星矢)
御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記
第27回 雨傘運動以来の大規模デモ、逃亡条例改定反対運動のゆくえ
いま、香港人がもっとも話題にしている「逃亡犯条例改定」については、3月の連載でお話しをしました(参照)。
この逃亡犯条例が立法会を通過すると、将来的には香港人、もしくは香港に入境しただけの人でも、香港当局に容疑者として拘束された場合、中国へと引き渡される可能性があります。
中国は公平な法制度や基本的人権が存在しない場所です。過去にも多くの人権活動家が政府の意に反する発言をしたがために、投獄されたり、あるいは「消されたり」しています。
4月末、民間団体による逃亡犯条例反対デモが行われました。このデモはの参加者は約13万人にもなり、雨傘運動以来、最多の動員数となりました。
もちろん、香港衆志とわたしもそのデモに参加し、銅羅湾(コーズウェイベイ)から金鐘(アドミラルティ)にある政府本庁へと向けて行進をしました。
出発前には、すでに銅羅湾の街道2、3本分を占める参加者が集まっていました。あまりに人数が多かったことから警察から開始時間を早めるよう要求があったほどです。
参加者の中には、大人から子供まで一家そろって参加している人たちもいました。彼らは中国と香港の司法制度、その公平性には大きな違いがあることを深く理解していて、今後、香港人が中国側に引き渡されるようになることを危惧していました。
わたしたちが何よりも怒りを感じたのは、当日の政府官僚たちのコメントでした。行政長官代理の張建宗(マシュー・チャン)は「(デモの)参加人数は関係ないし、多くの香港人は条例の内容を理解していない」とコメントしたのです。十数万人の香港人が街頭に出て意思表明をしたにも関わらず、政府官僚たちはそれに見向きもしなかった。これは彼らが民意を軽視していることの何よりの表れです。
これほどの大規模なデモになった理由は、逃亡犯条例改定に対する香港市民の「怒り」と「恐れ」のみではありません。先日、雨傘運動が理由で9名が起訴された事件も影響しています。
昨年末、元学生連合メンバー2名、現立法会議員2名、大学教授2名、牧師1名を含む、雨傘運動に関わった重要人物、合計9名が「公衆安寧妨害行為を扇動した罪」で起訴されました。裁判は4月に判決が下され、結果9名は全員が有罪となり、そのうち4名は8〜16ヶ月の禁固刑となりました。
彼らの中には、社会的地位があり、尊敬されている人も含まれています。彼らに私利私欲は一切なく、香港により良い、より民主化な社会がもたらされることを求めて雨傘運動に参加しました。しかし、裁判官はその動機には注目せず、市民的不服従(※注1)に基づく行為であることも認められず、厳しい判決を下しました。それは大きな失望ではありましたが、これから裁判への不服を申し立てる中で、彼らの理念を認めるような判決になることを願っています。
追記:この追記を執筆した前日、わたしの戦友である香港衆志のジョシュア・ウォンに、2ヶ月の禁固刑が言い渡され、即時入獄となりました。これは彼にとって3度目の刑務所となります。
起訴の原因となったのは、雨傘運動のときの、旺角(モンコック)占拠区の強制退去の日におきた出来事でした。その頃、ある団体が旺角の街道の占拠を止めるために差止命令を要求し、それが可決されたことで法廷は強制退去を命じましたが、ジョシュアはそれに抵抗したデモ参加者の一人でした。その後、彼は法廷侮辱罪で起訴され、3ヶ月の禁固刑が言い渡されましたが、ジョシュアはそれに反訴し、刑期は2ヶ月まで短縮されました。
わたしたち市民的不服従を行使する者は、常にいかなる法的な処罰も受ける覚悟でいます。政府が、「逮捕」という方法によってデモ参加者を脅迫することで、その背後にある反対者の声を無視し、政治問題から逃れようとしているうちは、社会は決して良い方向に進みません。わたしたちはこれからも強硬に抗い続けます。
(続く)
※注1:19世紀に米国の思想家ヘンリー・ソローが提唱した、個人の良心や信念に基づいて、特定の法や命令への服従を公然と拒む行為。
▼プロフィール
周 庭(Agnes CHOW)
1996年香港生まれ。社会活動家。17歳のときに学生運動組織「学民思潮」の中心メンバーの一員として雨傘運動に参加し、スポークスウーマンを担当。現在は香港浸会大学で国際政治学を学びながら、政治組織「香港衆志」に所属している。
『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』これまでの連載はこちらのリンクから。
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