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なぜデモに暴力がともなうのか、その原因と意義|周庭
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なぜデモに暴力がともなうのか、その原因と意義|周庭

2019-11-28 07:00
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    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。流血の事態が続く香港の民主化デモ。警察の暴力的な対応のみならず、親中国派による襲撃も相次ぎ、混乱は増す一方のようです。なぜ民主派は武器を手に取るのか。11月24日に行われた区議会議員選挙の結果と合わせて、香港の「今」を報告します。(翻訳:伯川星矢)

    周庭 御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記
    第32回 なぜデモに暴力がともなうのか、その原因と意義

    香港の戦いは、まだ続いています。

    香港人が求める「五つの要求」はいまだに達成されていません。そしてこの戦いは、わたしたちの「家」を守るための重要な一戦になりました。この原稿を執筆する数日前、警察は香港中文大学に攻め込もうとしました。学生、教師、卒業生たちは校門を死守し、警察の突入を許しませんでした。その日、香港中文大学で撮影された写真を見た多くの外国の方々から「天安門事件を思い起こさせる」と言われました。
    少し前に香港メディアの取材を受けたドイツ人記者は「香港警察はイスラーム国(ISIS)よりも恐ろしい」とコメントしています。香港警察はなぜこうなってしまったのでしょうか。まさに「悲憤慷慨」であり、香港人としてとても複雑な心情です。

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    確かに6月頃と比べると、デモの活動スタイルは大きく変わりました。文字通り「平和的」から「急進的」になったこの変化は、警察と政府に対する市民の不信感、さらには香港の法治制度全体に対する不信感によるものです。言い換えれば、香港人は気づいてしまったのです。今の香港の法治制度はとうてい受け入れられるものではない、と。これらの「不信感」が、皆さんがテレビで見たであろう「暴力」に変化したんだと思います。


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    警察の不公平な対応により、デモ参加者や民主派支持者の多くが逮捕され、時に一般市民や記者までもが巻き添えになっています。でも、黒社会(香港マフィア)やデモを襲撃する人については見て見ぬフリをするか、あるいは形だけ何人かを拘束して起訴はしません。警察は一般市民を守らないことを香港人は理解しています。今の警察はただ、親中派支持者と親中マフィアを守るだけの職権乱用者に過ぎないのです。
    デモ行進の参加者は頻繁に中国支持者に襲われ、ナイフを突き付けられるなどしています。警察が守ってくれないのなら、わたしたちは自らの手で自分たちを守るしかありません。怪我をするのはもちろんのこと、下手をすると命まで奪われるかもしれないからです。

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    先日、民主派の区議員が、ナイフを持った中国支持者に襲われ、耳を噛みちぎられました。別のデモ活動では、ナイフで刺された参加者もいました。近くにいた民主派支持者やデモ参加者が止めに入らなければ、結果はさらに酷いものになっていたと思います。

    火炎瓶は、警察によるデモ参加者者への暴力と無理な逮捕を止めるために使われています。
    なぜ、わたしたちは逮捕を阻止しようとしているのか?
    デモ参加者は法的責任を負うことを恐れていません。実際、最前線にいる参加者たちは10年以上の実刑を受ける覚悟ができています。しかし、今の警察は職権乱用が横行し、逮捕者に対し規定の手順や法律に沿った対応をしていません。逮捕者は虐待、殴打、セクハラ、レイプまでされることがあるし、弁護士の立ち会いがないまま事情聴取が行われるなど、逮捕者側の権利は一切無視されています。
    だから直近のデモ活動では、なるべく逮捕されないようにしていますし、警察に拘束された参加者を救出しようとしています。

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    わたしは、今の香港の現状をみて、単純に「暴力は悪い」と結論づけることはできないと思います。少なくとも現状の打破には役立たないでしょう。香港人は決して最初から急進的な活動をしていたわけではないし、数え切れないほどの平和的活動を行ってきましたが、権力からの無数の弾圧を受け、ここまでになってしまった。
    暴力はあくまで最終手段ですが、戦友が目の前で殴り殺され、刺し殺されるところを黙って見ていることはできません。政府と法の執行者による不公平な対応、公義に欠けている法制度。わたしたちのような民主主義を求めるか弱い凡人は、このような原始的な方法で身を守るしかない。香港がこんな状態になってしまったことは、本当に悲しい。

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    たまにこう思うことがあります。民主的な国で生活し、自由な空気を吸っている人たちが、遠い他国で弾圧されている香港市民に対して「暴力はあってはならない」「暴力は間違い」とコメントするのは、少し傲慢ではないかと。
    もちろん意見すること自体を咎めているのではありません。でも、皆さんには知って欲しい。わたしたちは本当に心から、自由と民主主義を求めています。
    しかし、それを追い求める過程では、わたしたちは絶望し、悲しみ、無力を感じたりもします。
    これがわたしがずっと感じている、一番率直な気持ちなのです。

    【11月27日追記】
    11月24日に香港区議会議員選挙が行われました。投票率は71.2%で、約294万人の香港市民が投票しました。これは歴史に残る新記録です。
    今回の選挙で、民主派はまさに「圧倒的な」勝利を収めました。これまでの区議会は親中派が大多数を占めていましたが、今回、民主派は452席中388席を獲得しました。
    条例改定反対運動の開始から半年が過ぎて、その活動もこれまで以上に積極的になってきました。一部の日本のメディアの分析では、香港の民意が「市民の大部分が運動を応援」から転じて「一部の民主派支持者が運動に反対」になっていると報じられたようです。でも、選挙結果はご覧のとおり、民意の逆転が起きることはありませんでした。
    今回の選挙では民主派が勝利を収めましたが、これは運動の勝利でもないし、運動の終結も意味していません。私たちの目標は「5つの要求」であり、警察の暴力行為の調査や民主選挙です。これは、ただの始まりにすぎないのです。

    (続く)

    ▼プロフィール
    周 庭(Agnes CHOW)
    1996年香港生まれ。社会活動家。17歳のときに学生運動組織「学民思潮」の中心メンバーの一員として雨傘運動に参加し、スポークスウーマンを担当。現在は香港浸会大学で国際政治学を学びながら、政治組織「香港衆志」に所属している。

    『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』これまでの連載はこちらのリンクから。

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