
デザイナー/ライター/小説家の池田明季哉さんによる連載『"kakkoii"の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝』。勇者シリーズの最終作『勇者王ガオガイガー』は、歴代随一の人気作でありながら異端作だとも言われます。今回は、その「異端にして集大成」という二面性を読み解きます。
池田明季哉 “kakkoii”の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝
■勇者シリーズ最終作品は「成熟」をどう描いたか
『勇者王ガオガイガー』は、これまで論じてきた勇者シリーズの最終作に位置する作品であるが、一般にその評価は二分されているといってよい。
ひとつめは『勇者王ガオガイガー』こそが勇者シリーズの代表作だという意見だ。実際、『勇者王ガオガイガー』は勇者シリーズの中では放送終了後のメディアミックス・商品化ともにもっとも恵まれた作品であることは間違いない。ダグオンと同様にOVAが発表された他、雑誌をはじめとしていくつかの媒体で派生作品が展開されていた。また現在においてもさまざまな商品がアップデートされながら発売され続けている。勇者シリーズというブランド(とここでは呼んでおくことにしたい)の中でも、その歴代商品化点数はおそらくトップクラスだろう。勇者シリーズ最大の人気作であると言ってしまっても、さほど問題はないように思われる。
もうひとつの意見は、『勇者王ガオガイガー』は勇者シリーズの異端作だという意見である。『勇者王ガオガイガー』はそれまでの勇者シリーズが持っていたどこか牧歌的なトーンを持ち合わせておらず、かなりハードな設定のSFとして描かれている。また木村貴宏によるキャラクターデザインも、男性・女性問わず総じていわゆるアニメ的なニュアンスが強いものである。そのため『勇者王ガオガイガー』は、あくまで子供に向けた玩具販促番組としての枠組みに留まってきた(あるいはときに逸脱しながらも留まろうという重力の影響下にあった)それまでの勇者シリーズに比べると格段に大人向け、あるいはアニメファン向けの作品だと受け止められている。

▲『勇者王ガオガイガー』。これまでとは大きく趣の異なるビジュアル。 勇者シリーズデザインワークスDX(玄光社)p211
このふたつは一見相反する意見のように思われ、ファンのあいだでもしばしばその評価について対立が起こっている。しかし本連載では、このふたつの立場は両立するもの、ひとつの現象の異なる側面として考える。つまり『勇者王ガオガイガー』は、異端作であるがゆえに代表作となったのだ。