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第325号 2019.8.13発行

「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしのひとたち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…今回の参議院にともに議席を得て、政党要件を満たした「れいわ新選組」(れいわ)と「NHKから国民を守る党」(N国)を一緒くたに論じる動きが出てきた。「所詮は衆愚の選択のたまものである」「かなりポピュリズム的な政党だ」というが、そもそも「ポピュリズム」の観念も時代によって大きく変化している。れいわとN国の決定的な違いとは何か?
※泉美木蘭の小説「正しい宗教のつくり方」…鶴見佑子の日課は、スマホで溶田宗泰のツイッターやフェイスブックをチェックして、日々の社会問題に関する溶田の見解を確認することだ。諸友学園問題について、溶田先生はどういう見解なのだろうか?私は正しい知識もなく、何が正しくて、何が間違っているのかを自分で判断できない人間なのだ。溶田先生から、正しい見解をすべて勉強しなおさなければ…!!
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!日本会議の影響力ってそんなに大きいものなの?「(天皇の)生前退位」という言葉は不敬、不適切?「オドレら正気か?IN大阪」は小4の子供も楽しめるイベント?「表現の自由」「芸術」をどう考えるべきか?自民党の小泉進次郎議員をどう見ている?6歳男児からおぼっちゃまくんに可愛い質問!この酷暑の中、高校野球をやる意義はある?日韓関係が改善した未来ってくるの?…等々、よしりんの回答や如何に!?


【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第336回「山本太郎のポピュリズムは大衆迎合ではない」
2. しゃべらせてクリ!・第282回「夏空の下!イルカに乗った少年少女とカメ乗りぽっくん!の巻〈後編〉」
3. 泉美木蘭の小説「正しい宗教のつくり方」・第3回「正しい答えが欲しい」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記




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第336回「山本太郎のポピュリズムは大衆迎合ではない」

 案の定、ともに今回の参議院に議席を得て、政党要件を満たした「れいわ新選組」(れいわ)と「NHKから国民を守る党」(N国)を一緒くたに論じる動きが出てきた。
 れいわとN国は全然違うということは、ここではっきりしておかなければならない。

 週刊新潮(8月8日号)は「衆院選に100人擁立をぶち上げた!『山本太郎』を台風に育てる慄然『衆愚の選択』」という記事を組み、れいわをN国と一緒に扱って「参院選で生まれた新しい芽は、所詮は衆愚の選択のたまものであるということか」と書いた。
 そして「月刊Hanada」編集長の花田紀凱は産経新聞(8月3日)のコラムでこの記事について、「ここで、『か』は不要。衆愚の選択そのものではないか」と評している。
 ネトウヨ愚民の雑誌を作っている編集長のくせに、自分を衆愚のひとりとは思いもせずに、上から評論しているのには笑わされる。
 れいわの躍進は衆愚の選択ではない。
 N国の方は衆愚の選択の極致である。
 その違いも見抜けないのでは、その目はフシ穴である。

 そもそも山本太郎には、参議院議員としての6年間の実績に対する信用があり、今回ネットで急に人気が出ただけのN国とは決定的に違う。
 山本のイラク戦争や消費税、原発などに関する発言を見て行くと、具体的な国家像といえそうなものが垣間見える。
 山本が国会で、イラク戦争の際に自衛隊が米兵をファルージャまで運んだじゃないかと追及するのを見たが、あれは素晴らしかった。そこには、アメリカに追従して侵略戦争にまで加担するような日本ではいけないという国家像があり、それはわしと全く一緒だ。
 消費税廃止の主張は、消費を増やすことによって経済を回していこうという資本主義の考え方であり、これもわしと考えが同じだから支持できる。消費税を財源に、国税で社会保障をやろうというのはむしろ社会主義的なのだ。

 また原発反対には、原発事故によって国土を喪失してしまったという思いがあり、それもわしと同じである。
 しかも原発問題について天皇陛下(当時)に山本が渡した直訴状は、毛筆縦書きで、使用する紙の質も正式なものだったらしく、これは単なるパフォーマンスではできない。もしかしたら山本は、かなり保守的な人間なのかもしれない。
 陛下がその後「私的ご旅行」で、足尾銅山の鉱毒被害を明治天皇に直訴しようとした田中正造の記念館を訪れ、その直訴状をご覧になったのは、明らかに山本の直訴状にお応えしてのことだろう。

 小沢一郎が開いた皇統問題の勉強会にわしが呼ばれた時にも山本は来ていて、れいわでは女性天皇・女系天皇を認める方針を明言している。
 さらに、憲法については護憲派ではないらしい。
 全部が理想的に備わった政党なんか出てくるわけがないのだ。ある程度具体的に共感できる国家像を持っていて、なおかつ身障者など社会的弱者を助けようという感覚もあり、バランスが取れているという判断でわしは支持した。
 それを、地上波に乗らず、ネットで人気が出たからというだけの理由でN国と一緒に扱っては絶対にいけない。

 もっとも、日本が韓国に対する輸出管理を強化したことに対して、山本が「『なめられてたまるか、ぶっ潰してやれ』という小学校高学年くらいの考え方はやめましょうって話なんですよ」「大人になろうぜってことなんですよ」などと言っていたのはいただけない。これはまだリベラル左翼な気分から抜けきっていないのだろう。
 国と国との約束を守らない韓国をこのまま甘やかすことこそ、大人の態度ではない。大人の態度=甘やかす態度ではない。むしろ韓国のためを思えばこそ、厳しくすべき時には厳しくしなければいけないのだ。
 こういう感覚が残っていてはまだ全幅の信頼を置くわけにはいかず、用心して見ておく必要があるということは前提として、以下の論を進めていく。

 評論家の東浩紀は、「れいわ新選組ってかなりポピュリズム的な政党だと思うんです。つまり、『現実に実現できないかもしれないけど、そうなったらいいな』という口当たりのいい政策を使い、かなり劇場型政治を演出して、一気に浮動層をかき集めることがポピュリズムだとしたら、今回のれいわ新選組はまさにそう」と批判した上で、「ここでポピュリズムに巻き込まれないでほしいなと僕は思っています」 と警告を発している(J-WAVE『JAM THE WORLD』7月22日)。