「合氣ック」とは何か? K-1MAX -63kgトーナメント優勝をはじめ、多くのタイトルを手にしてきたキックボクサー大和哲也。最近はキックと合氣道を融合させたスタイルを構築してるという。Dropkickは「達人大好き!」なのでさっそく話を聞いてきました。トリャッ!!
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――以前武道の達人の方を取材したときに、ユーザーの方から大和哲也選手がキックと合氣道を融合された「合氣ック」をやられてるのでぜひインタビューしてほしいというリクエストがありまして。
大和 あっ、そうですか。嬉しいです(笑)。
――キックと合氣道の組み合わせは興味深いですし、ネーミングも面白いですよね。
大和 久しぶりにK-1に上がることになるので、新しいスタイルを打ち出していこうと思って。
――まずは「合氣ック」の始まりから教えてください。
大和 あれは5年くらい前のことですね。カルチャーセンターみたいなところに合氣道を習いに行ったことがあるんですよ。それは合氣道をやりたいというよりは、古武術をやってみたいなあと。キック以外に何か学ぶものはないかなと思って行ってみんですけど、もの凄く馴れ合いの世界だったんですよ(笑)。
――アレな感じだったんですね(笑)。
――最悪の敗戦だったんですね。
大和 ある試合のときは「どうやって倒そうか?」って考えられるくらいメチャクチャ調子が良かったんですけど、ダウンを食らったときから5ラウンドが始まるまで記憶がないんですよ。なぜ減量ミスをしてしまったのか。なぜあんなに調子がいいのに負けてしまったのか……悶々してたんですよね。そんなときに合氣道と再び出会えたんです。
――一度は見捨てた合氣道に(笑)。
大和 はい(笑)。昔から持ってた本に『動じない。』というのがあったんです。王(貞治)さん、広岡(達朗)さん、そして、いまボクが習ってる心身統一合氣道会の藤平信一会長の対談本なんですけど。その本をあらためて読んでみたら「心が身体を動かす」と書いてあって。アメリカでも減量できたから日本でも同じようにできるとか、調子がいいからどんな技で倒そうとか……心に隙があったから負けたんだな、と。
――なるほど。精神性に問題があると。
大和 ボクはキックボクシングを15歳からやってきて、世界を獲ったり獲られたりしてますけど。「これから技術がどれだけ上がるんだろう? パンチや蹴りの速度がどれだけ上がるのか」って考えたときに、ちょっと不安を感じていて。悩んでいたところがあったんです。
――行き詰まりを感じていたんですね。
大和 そんなときに「心が身体を動かす」という言葉が凄く響いて。王さんも心身統一合氣道 宗主の藤平光一先生に合氣道を教わってたんです。最初のホームランから最後のホームランまで、バットに気を通して打っていたんですよね。
――「狂気の安打製造機」と呼ばれた榎本喜八も藤平さんに教わってますね。
大和 調べてみたら藤平先生が始めた心身統一合氣道会は名古屋にも道場があったので。ぜひこの合氣道を習ってみたいと思うようになったんです。
――カルチャースクールのときは認めなかったですよね。でも、今回は……。
大和 いや、まだ半信半疑でした(笑)。前日にYoutubeで合氣道関連の動画を見てみたんですよ。かかってくる人を次々に投げ飛ばす映像を嫁さんと一緒に見て笑ってたんですよね。「明日、検証してくるわ~」なんて言っていて。
――まるで信用してないですね(笑)。
大和 行ってみたら、その先生(山本岳見)はボクのジムに昔いたコーチに指導していたこともあったみたいで。 心身統一合氣道の教えは「心と身体はもともと一つでバラバラで使うものではない。いまはもともと一つのものを二つに分けて使ってるからよくない」と。心が重要だから姿勢が大事という話もされて、合氣道のテクニックも体験したんですが……。
――どうなったんですか?
大和 先生から「私の腕を掴んでもらっていいですか?」と言われたので、おもいきりギュッと掴んだんです。すると気がついたら投げられてるんですよ。
――大和選手に投げられた意識はなかったんですか?
大和 ないですね。柔道なんかだと投げられた感ってあるじゃないですか。でも、「どうやって投げられたのか」がわからないんです。
――いわゆる“崩された”ってやつですね。
大和 そうです。自分の身体がその方向に導かれてしまった、自分の意識してない方向に変えられてしまったというか。ビックリしちゃって「もう一回やってもらってもいいですか?」って頼んで何回もやってもらいました。10回ぐらい繰り返しましたかね(笑)。
――それくらいの衝撃だった。
大和 最後にはショックで立てなくなっちゃって。だってボクはいままでスピードとパワーを駆使する世界で戦ってきたじゃないですか。もう意味がわからなくて「なんだ、これは……!?」って倒れたまま天井を見上げていたんです。そうしたら先生が倒れているボクの顔を覗いて「……これがウチの合氣道です」と。後光が差してましたね(笑)。
――惚れますね、それは(笑)。