北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
春水堂 六本木店@六本木一丁目「五香湯麺」
長浜屋台 一心亭 本店@赤坂「ラーメン」
■異論激論!
(山路力也/山本剛志/福岡岳洋)
□告知/スケジュール
■編集後記
■巻頭コラム
「北島秀一は生きている」山路力也
ラーマガの共同責任編集者であり、ラーメン評論家の北島秀一さんが急逝されて一ヶ月が経とうとしている。北島さんが亡くなってから数日は、何となくポッカリと心に穴が空いたような気もしたが、すぐにお別れ会などの準備や、ラーマガの編集をどうするかなど、決めたりやらなければならないことがいっぱいあって、ドタバタしているうちに一ヶ月が過ぎていった気がする。この一ヶ月は本当に濃密であっという間に過ぎていった感があり、正直まだ一ヶ月しか経っていないのかと驚くと共に、もう一ヶ月も経つのだなぁという思いもある。
しかし、哀しいかな、私の日々の生活は北島さんが亡くなる前と何も変わることなく、相変わらず忙しく駆け回っている。仕事のみならず、美味しいものをたくさん食べたり、旅に出たり、遊んだり、本当に変わることがない。むしろ北島さんが闘病されている時の方が気にかけていたことが多く、亡くなってからは北島さんの病状を心配する必要がない分、逆に北島さんを思い出したり意識することが少なくなっているかも知れない。
これは非常にドライで、冷たいヤツだと思われてしまうことなのかも知れない。しかし私の中では、今でも北島秀一は生きているのだ。このラーマガでは北島さんの亡くなった後も共同責任編集者でいて頂いているし、彼の生前書いてきたレビューやコラムなども掲載をさせて頂いている。その文章を読むと、非常に生き生きとした文体で、本当に北島さんは死んでしまったのか?と思ってしまうほどだ。
さらに、北島さんの弟さんにお願いをして、これまでに書かれていた文章など、私たちがまだ見ていないものもあるようならばご提供頂くことを快諾頂いた。どんな文章が残されているのかは分からないが、少なくとも私たちがまだ知らない北島秀一にこれからも会えるのだ。だからあまり喪失感というものを感じないのかもしれない。
今、このラーマガは私と山本さんの二人で打合せをして、毎号どんな内容にしながら考えながら編集、執筆作業をしている。しかし、間違いなく私たちのあいだには北島さんが存在している。北島さんならどう考えるかな、北島さんはきっとこう思うだろうな、などと考えながら打合せをしているのはとても楽しいことだ。
10月の限定ラーメン「NAKED」はG麺7の後藤さんが作って下さるのだが、後藤さんにお願いしようと提案したのも実は北島さんで、実際のオファーも北島さんが直接かけている。先日、G麺7での最終試作に立ち会ったが、その時も私たちの作業の中には北島さんはいた。北島さんならこう思うよね、などと言いながら、一杯のラーメンを仕上げていった。きっと北島さんも納得する味わいになっているはずだ。
だから私の日々の生活は以前と変わらない。北島秀一は私たちが忘れない限り生きているのだから。そしてあれだけの存在感のあった男を、私たちがそうそう忘れるようなことはないわけだから。
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は8月20日、東銀座にオープンしたけいすけグループの新店『銀座鴨そば 九代目けいすけ』の「芳醇鴨そば極み」を山路と山本が食べて、語ります。
「芳醇鴨そば極み」1,300円