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【ジュニアドクター育成塾】第5テーマ「水素社会に必要な科学技術」背景解説【愛媛大学】
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【ジュニアドクター育成塾】第5テーマ「水素社会に必要な科学技術」背景解説【愛媛大学】

2017-12-17 09:00
    第5テーマ「水素社会に必要な科学技術」(12月5日開講)は,岩谷産業株式会社(以下,岩谷産業と略します)の中央研究所(兵庫県)の荘所正先生に講座を担当していただきました。

    内容について,背景,実験の2回に分けてお届けします。
    今回は背景,『なぜ水素が重要なのか』について考えてみましょう。

    1 『主婦の味方』岩谷産業株式会社
    岩谷産業は,LPガスやカセットコンロなどを中心としたエネルギー事業を行っている,わたしたちの生活にとても身近な会社です。「主婦をかまどから開放する」という理念で,エネルギー事業を推進してきた,主婦の強い味方です。これからの季節,お鍋をする機会は多いと思います。カセットコンロに『iwatani』と書いてあるかどうかを確認してみましょう。

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    図1 むかしは煮炊きするために,かまどが必要でした。火をおこすのはとても大変です。

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    図2 ガスコンロが使えるようになって,料理はとても楽になりました。

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    図3 カセットコンロでもIwataniは活躍しています

    岩谷産業は,こうした身近な分野だけでなく,水素などの産業ガスもあつかっています。今回の実施では,四国岩谷産業株式会社様にご紹介をいただいて,岩谷産業中央研究所から荘所正研究員に来学していただけることになりました。

    2 私たちの便利な暮らしを支えるエネルギー
    産業革命以降,私たちの生活はどんどん便利に,豊かになってきました。こうした現代社会の便利な生活は,多くのエネルギーによって支えられています。そして,現在,そのエネルギー源として化石燃料が利用されています。輸送用エネルギーでは石油,電気エネルギーでは石炭などが多く使われています。これらの化石燃料を燃焼させることによって,私たちは多くのエネルギーを手に入れて,安全で快適で便利な暮らしを送ることができるようになりました。

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    図4 私たちの便利な暮らしはエネルギーによって支えられています

    3 石燃料を燃やすと,なにがおこる?
    化石燃料は,植物や微生物からできていますので,炭素と水素をふくむ化合物です。化石燃料を燃やすと,以下のような反応が起こっています。

    化石燃料 + 酸素 → 二酸化炭素 + 水蒸気

    つまり,燃焼によって二酸化炭素が発生します。

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    図5 灯油を燃やしても二酸化炭素が出ます

    私たちの暮らしが便利になるにしたがって,二酸化炭素の量は増えていき,二酸化炭素の大気濃度は産業革命以降1.4倍になってしまいました。二酸化炭素が増えていった,この100年間で世界の平均気温は約0.7℃上がっています。このままでは二酸化炭素によって大きな気候の変化が起こり,多くの人の暮らしに影響が出てしまうかもしれません。そのため,世界で話し合いがすすめられ,1997年の京都議定書,2015年のパリ協定で,二酸化炭素を出す量をへらし,これ以上,気温が上がるのをおさえようという決定がされました。

    5 便利な暮らしを捨てられる?
    地球温暖化を防ぐために,一番かんたんな方法は,便利な暮らしをあきらめることです。

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    図6 地球のために便利な暮らしを捨てる?

    私たちの生活を江戸時代くらいまでもどせば,いまよりもずっと少ないエネルギーで暮らしていくことができます。そのためには,みなさんが生まれてきてから当たり前に思っている生活(そう,インターネットも!)を,あきらめなければなりません。それは大変なことです。そこで,私たちの暮らしを守りつつ,できるだけ地球環境を変えないようなエネルギーが求められています。

    6 地球環境を大きく変えないエネルギー
    地球環境を守る次世代エネルギーとして注目されているのが『水素』なのです。

    水素の利点①:反応後に出てくるのは水だけ!
    水素から電気エネルギーを取り出すときの化学反応は以下の通りです。

    水素 + 酸素 → 水

    酸素は,大気中に無限に存在します。水素から電気エネルギーを取り出したあとには,水しかできません。そのため,水素から電気エネルギーを生み出すときには,地球環境に大きな負担をかけません。そして,この水を電気分解で,水素にもどせば,新しい物質を使わずに(もちろんエネルギーは使います),水素を生み出すことができます。

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    図7 燃料電池フォークリフトの排水口(画面下にある銀色のバルブから排水します)

    水素の利点② いろいろなやり方で得られる水素
    水素はとても軽い気体で,反応しやすい物質でもありますから,大気中にはほとんどありません。つまり,使うための水素を作り出さなければなりません。しかし,心配はいりません。水素を作る方法はいくつもあります。

    ①水の電気分解
    ②産業の副成物
    ③化石燃料

    ①水の電気分解は,中学校2年生で習います。電気エネルギーで水を水素と酸素に分解する反応です。

    ②鉄鋼業や化学産業では,製品を作る過程で水素が副成物として得られます。むかしから企業は得られた水素を使って,製品を作ったりしています。

    ③水素はメタンから作ることもできます。これは水蒸気改質と呼ばれる方法で,たとえばエコキュートは,この水蒸気改質を使ってメタンから水素を作り,燃料電池を使って発電しています。

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    図8 いろいろな水素の供給方法 出典:福島新エネルギー社会構想(資源エネルギー庁)

    水素の利点③ 貯められるエネルギー!
    生活を支えるエネルギーを考えるとき,一番大事なことは『エネルギーを貯めておける』ことです。エネルギーを貯めることで,必要なときに必要なだけエネルギーを使うことができるようになります。
    ここで課題になるのは,電気エネルギーを貯めるのはむずかしいということです。電池は,使っていなくても少しずつエネルギーを放出しています。バッテリーの研究は進んでいますが,放電をゼロにすることはきわめてむずかしいのです。
    水素は,エネルギーを加えないかぎり分子の状態で安定していますので,電気エネルギーとちがって,貯めることができるようになります。そこで,たとえば再生可能エネルギーから水素をつくりだすなど,電気エネルギーを水素の形にして貯めるという使い方が計画されています。

    どうでしょうか?
    水素の利点見えてきましたか?
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