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橋下市長の入試中止要求に批判続々―大阪・桜宮高体罰自殺事件
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橋下市長の入試中止要求に批判続々―大阪・桜宮高体罰自殺事件

2013-01-21 11:32

    橋下市長の入試中止要求に批判続々

    受験生に罪があるのか 在校生さらに傷つける

    大阪・桜宮高体罰自殺事件

    2e4e3cbd6a90caf1c45c03985fff6698b5b5442d 大阪市立桜宮高校バスケットボール部の男子生徒が顧問の教諭から体罰を受け、自殺した問題で、2月に迫った同校体育系2科(120人)の入試中止などを要求している橋下徹市長の対応が、子どもたちや保護者の不安と苦しみに拍車をかけています。21日に可否を判断する市教育委員会には、市長への批判や入試実施の判断を求める市民の声が多数寄せられています。(藤原直)

    権力かさに教育に不当介入

     「なんで何にもしてない受験生が被害受けなあかんのですか。…夢叶(かな)えるために必死に頑張ってきたのに最後の最後で、簡単に中止とか言われてほんまに最悪です」。高校受験関係のサイトの掲示板に書き込まれたコメントです。

     発端は15日、橋下市長が同校の関係者の意識を批判して「連続性を断ち切る」と体育系2科の入試中止を教育委員会に要求したことにあります。

     17日の会見では、決定権が教育委員会にあることを認めた上で、「予算の執行権は僕にある」と予算の凍結を示唆。「体罰を誰も止められなくなってしまったというのは、教員だけじゃなく生徒や保護者の問題でもある」と生徒や保護者にまで責任を負わせました。

     「受験生に罪はない」「体罰の被害者になった在校生たちをさらに傷つけるのはやめてください」。翌18日、保護者や弁護士など各界から市長への批判や要請が集中しました。

     弁護士である橋下氏も所属する大阪弁護士会の有志は「首長に、既に議会の議決を経た予算の執行を自在に停止しうる権限はない」と批判。子育て世代でつくる「発言する保護者ネットワークfrom大阪」は、次のような要請書を提出しました。

     「市長が現場の意見も聞かずに入試の中止を強く主張するのは、体罰と同じ一方的かつ強圧的な手法であり、真の合意形成や問題解決とは程遠いものです」「いま大切なのは、在校生・教員・保護者が深く話し合う機会を設けることです」

     大阪市立高等学校教職員組合など3教組の委員長の要請書は、実態調査と対策の徹底によって同校を早く正常化すべきだと強調。「体罰と無縁の新生桜宮高校に新入生を迎えることこそ当面の目指すべき方向だ」と指摘しています。

     いずれも体罰が学校教育法11条で明確に禁止されている許すことのできない人権侵害だとの認識で、真の解決策を求めています。

    体罰の否定に立てない市長

     ところが、学校現場で体罰は許されないという認識に立ちきれていないのが橋下市長です。

     生徒の自殺発覚後の1月10日にも「体罰禁止とか手を上げることは絶対あり得ないなんていう、うわべっ面のスローガンだけで事にあたっていたことが最大の原因」と強弁。手を上げるという「指導」法が「あるんだったらあるで、ルール化すればいい」と語ってきました。

     ところが、スポーツの指導における体罰を完全否定した元プロ野球選手の桑田真澄さんのインタビューが報道されると「桑田さんに言われたら反論できる人なんかいない」と発言。「僕自身も意識を改めなければ」と「反省」を口にしました。(12日)

     その後、学校でのスポーツ指導では「手を上げることは禁止」と言いだしましたが、それ以外の場面については「文科省がよくいっている体罰禁止というところを超えて一定の範囲で手を上げることを認めることができるのか、徹底して議論していきたい」(15日)と語っています。

     橋下氏はもともと、府知事時代に「教育とは2万%、強制」と断言。「口で言ってきかないなら手を出さなきゃしょうがない」などと述べ、体罰容認の風潮をあおってきました。

     市長就任後も、昨年10月の市教育振興基本計画策定有識者会議で「(生徒に)痛さを体験させておかないと過剰な暴力になる」「胸ぐらつかまれたら放り投げるくらいまではオッケーだとか」「(教員の)懲戒権について文科省のぬるいガイドライン以上にしっかりと一つの指針は出すべきだ」と求めてきました。

     橋下氏の発言は教員の「正当防衛」を超えた発想が随所にみられるもので、市教委がかつて「体罰防止に向けて」と題して教職員向けに作成した資料(1999年11月)で批判した「『場合によっては、体罰も止むを得ない』という考え方」そのものです。

     同資料では、体罰は子どもの心の成長を阻害し、学習意欲を低下させるだけではなく、子ども同士の関係でも力で解決する風潮を生みだし、教員全体への信頼も崩すと指摘。子どもに話す機会を十分に与えたり、生徒を多面的な視点で理解することを勧め、教員が「体罰否定を強く貫く」ことの大切さを説いています。

    「改革」自体が問われている

     教育現場に体罰容認の風潮を生む背景に何があるのでしょうか。

     日本共産党の井上浩市議は18日の市議会でこう指摘しています。

     「公教育が異常な競争至上主義に駆り立てられていたということを根本的に反省すべきです。競争や管理、統制では暴力はなくならない。生徒に声をかける余裕が先生にあるのか、生徒の内面の真実に接近して生徒が一番分かってほしいことを理解する教育の営みが行われているのか、改めて検証しなければなりません」

     教育に不当に介入してきた橋下氏の教育「改革」自体が問われているのです。

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