主張

経団連の春闘方針

富を社会に還元する発想を

 経団連が、ことしの春闘にのぞむ企業側の方針となる「経営労働政策委員会報告」を出しました。企業にとっていま重要なのは「競争力の強化に必要な資金を十分に確保していくこと」だといい、「ベースアップを実施する余地はない」「定期昇給制度の見直し議論が必要」などと、かたくなに賃上げを拒否しています。

 企業は、資金をためて生き残る。そのために賃上げはダメ、もっと下げるという主張です。デフレ不況からの脱出が日本経済の最大の課題になっているとき、これではさらに沈下するだけです。

常識はずれの危機論

 報告は、「経営環境は1年前と比べてさらに悪化しており、危機的状況が続いている」と、さかんに危機を強調しています。しかしその内容は、賃金を抑えるための方便でしかなく、まったく常識はずれです。

 日本経済の危機を考えるとき、最大の問題は、この10年以上、労働者の賃金が下がりつづけ、非正規雇用が働く人の3分の1にまで急増している状況です。「業績悪化」を理由にした残酷な人減らしリストラの横行も重大です。こうした賃金破壊、雇用破壊で、労働者の生活はかつてない困難におちいり、消費が伸びず、経済が低迷する要因になっているのです。これは財界がすすめてきた企業利益優先の労働・雇用対策の結果です。

 いま肝心なのは、労働者の賃金と雇用にたいする手当てをしっかりおこない、国内需要を拡大することです。ところが報告は、まったく逆の方向を向いています。

 賃上げしても「消費より預貯金にまわる可能性が高い」と抗弁し、下がり続ける賃金をさらに下げ、労働法制の規制緩和で派遣など非正規雇用の拡大、ホワイトカラー労働者の労働時間制限の撤廃など言いたい放題です。ことし4月から施行される65歳までの高年齢者雇用確保の賃金原資として、現役の中高年層の賃金抑制も主張しています。教育費や住宅ローンなどお金がもっともかかるこの層の賃金を下げるのは問題です。これに来年から消費税増税がかぶさってきたらどうなるか。ここに日本の本当の危機があります。これでは働く意欲をなくすだけです。

 では企業はどうか。たしかに中小企業は苦しんでいます。しかし大企業は260兆円もの内部留保をため込んでいます。メディアからも「『待機マネー』が滞留」などといわれるように、使いみちがないまま積み上げられています。これは労働者の賃金を抑え、下請け単価の買いたたきなど中小企業をいじめてため込んだものです。

 いま財界、大企業に求められているのは、経済再生のために巨額の富を社会に還元する自覚を持つことです。内部留保のごく一部を賃上げ、雇用拡大、中小企業の経営のために使うことです。

社会的責任を果たせ

 日本共産党は、大企業をつぶそうとか、どうなってもいいと考えているわけではありません。大企業がもっている力にふさわしい社会的責任を果たすことを求めているだけです。そうすることが労働者の働く意欲も高まり、企業の発展にもつながります。

 経済危機打開のために財界、大企業は社会的責任を果たせ―この声を大きく広げる国民春闘の発展が期待されています。