26日に行われた「ニコニコ超会議3」の日本共産党ブースの目玉企画―志位和夫委員長とジャーナリストの角谷(かくたに)浩一さんの45分の「スペシャル対談」。若者の雇用問題から日米首脳会談、集団的自衛権の問題まで語り合いました。

若者と雇用

角谷 多様性どころか使い捨てだ

志位 “正社員が当たり前の社会”つくろう

d6a45529ddc2d09d74e5b0df03108a0ba26b1082 冒頭テーマは、若者と雇用の問題。「エントリーシートを送るけど就職に結びつかない。フタを開けたら正規雇用でなく非正規雇用だったこともたくさんある。若者を取り巻く不安が多い」と角谷さん。志位さんは、若者の雇用問題には、(1)若者の2人に1人が非正規雇用で懸命に働いても「ワーキングプア」から抜け出せない、(2)正社員になっても「ブラック企業」が横行し長時間過密労働で「過労死」が広がる―という「二つの大問題がある」と指摘。「過労自殺」の半数以上が20代、30代とのデータを示しました。

 志位 いま多くの若者が、「ワーキングプア」か「過労死」かという“悪魔の二者択一”に追い込まれています。これはほんとうに日本の大問題です。若い人が「使い捨て」、「使いつぶし」の労働をさせられていたら日本の社会の明日はありません。企業だって、まともな競争力はなくなるでしょう。これはどうしても政治の責任で解決しなくてはならないと思っています。

 角谷 働き方の多様性が広がったように見せかけ、実は使い捨てが広がっただけになってしまっては意味がないですよね。

 志位 それが一番の問題ですね。私たちは、非正規の雇用を全部なくせといっているのではありません。たとえば、ヨーロッパでも1割ぐらいは非正規雇用がある。しかし、9割は期限の定めのない雇用―正社員です。“正社員が当たり前の社会”にしていかないと、安心して結婚して子どもをつくってということにもなかなかなりません。

就活問題

志位 悪いのは若者ではない。政治の責任で解決を

角谷 SOSの声、一段と大きくよせられている

 就職できず自分を責めている若者たちに心を寄せた角谷さん。志位さんが、「就職失敗」を苦に自殺した20代の若者が2007年の60人から2012年には149人まで急増している実態をあげると、会場から驚きの声があがりました。

 「若い人たちは“自分は社会に必要とされていない”と絶望を感じるのだと思う。しかしこの状況は、自然に起こったものでも、若い人が悪いのでもないということをいいたい」と志位さん。労働者派遣法の相次ぐ改悪で非正規雇用が広がったことをあげ、「政治の責任である以上、政治の責任で“正社員が当たり前の社会”にすべきです」と強調。労働者派遣法の抜本改正やブラック企業規制などに取り組む決意を表明しました。

 角谷さんは、昨年の東京都議選、参院選での共産党躍進にふれながら「その最大の理由は“何とかしてくれ”というSOSの声が一段と大きいということでしょう」と質問。志位さんは「暮らしのSOS、民主主義のSOS、平和のSOS、たくさんのSOSが、いま国民のみなさんから発せられています。私たちはそのSOSを耳を澄ましてよく受け止め、発している人の気持ちに寄り添って、政治に生かすために力をつくしたい」と答えました。

成長戦略

角谷 首相は成果いうが…

志位 中身は「生涯ハケン」「正社員ゼロ」「残業代ゼロ」

 26日のニコニコ超会議企画の中で安倍晋三首相にインタビューした角谷さんは、「安倍さんは“アベノミクス、成長戦略(の成果が出るのは)もうちょっとです”と言っていましたが」と問いかけました。

 これに志位さんは「いや、そうはなりません」ときっぱり。安倍政権が今国会に提出した労働者派遣法改悪案が、「常用雇用の代替にしてはならない」「一時的・臨時的な業務に限定する」という派遣労働の大原則を取り外し、正社員の派遣への置き換えを歯止めなく進め、いつまでも派遣のまま使い続けることができるものとなっていることを指摘。さらに、労働時間の規制をなくし、ホワイトカラーだけでなく一般の労働者も対象にして残業代をゼロにする制度を検討していることを告発しました。

 志位 いま「成長戦略」といわれているものの目玉は、派遣法の大改悪と残業代ゼロです。「生涯ハケン」「正社員ゼロ」「残業代ゼロ」。ぜひ若いみなさんに、こういう方向は絶対に許さないという声をあげてほしいと思います。共産党は一緒に頑張ります。

野党とは

角谷 共産党のチェック機能、国民は支持

志位 悪いものには反対。対案、共同も

 角谷さんは「しがらみがあってはこの法律はおかしいとチェックできない。しがらみがない共産党のチェック機能が、国民にいま支持されている」と述べやりとりに―。

 志位 よく「野党は反対ばかりでけしからん」という声があるけれど、まず悪いものには反対するのが野党の仕事だと私はいいたいですね。

 角谷 わかった! 最近「責任野党」っていうのもありますから。(笑い)

 志位 もちろん、共産党は対決するだけじゃなくて、ブラック企業規制法案など対案もどしどし出していきます。それを実現するうえで共同が必要です。国民と力を合わせる、若い人と力を合わせる。「対決」「対案」「共同」―これでやっていこうというのが私たちの立場なんです。

 角谷 そうすると、共産党は何でも反対というのは間違い?

 志位 間違い。法案も半分くらいは賛成です。共産党が賛成するような法案というのは、ほかの党も安心して賛成していますよ。(笑い)

日米首脳会談

志位 日米で三つの食い違い

角谷 一般紙読んでいるだけではわからない

 「一般紙を読むと、安保条約の確認ができて本当によかったということばかり書いてあるんですが…」。24日の日米首脳会談の見方をたずねた角谷さんに志位さんは「『日米同盟の強化』がうたわれたのは危険ですが、同時に食い違いがあらわれた。TPP(環太平洋連携協定)の問題以外でも、オバマ政権と安倍政権の食い違いが三つの点ではっきり見えた首脳会談でした」と述べました。

83cc22c462b6c28b5cb77cd3ce38021e4a1965c1 志位 一つは、中国に対する姿勢です。オバマ大統領は、尖閣諸島を日米安保条約第5条の適用範囲に含めると言いました。同時に、問題をエスカレートさせず、外交交渉で平和的に解決してほしいと繰り返し言いました。ところが、安倍首相からは、外交交渉で問題解決をはかろうという姿勢が見られませんでした。

 二つ目は、集団的自衛権をめぐる問題です。集団的自衛権の行使容認をアメリカが支持したかのような一部の報道がありましたが、日米共同声明をよく読んでみますと、そう書いてないんです。集団的自衛権については、「日本が検討を行っていることを支持する」と言っているだけなんですね。「容認を支持する」とは言っていない。

 共同記者会見でも、安倍首相は集団的自衛権について言ったけれども、オバマ大統領からは一言もなし。慎重な姿勢があらわれていました。歴史問題で、日中、日韓の関係がギクシャクしているときに、集団的自衛権行使容認を急ぐ必要はないという声が、アーミテージ元国務副長官などからも出されていますが、ここに本音がある。

 三つ目は、歴史問題です。靖国神社は、「過去の日本の戦争は正しかった」と宣伝している神社ですから、それに参拝するのはアメリカの立場からいっても許容できず、安倍首相の参拝について「失望した」との批判をしたわけです。この問題については、両者の温度差ははっきりしていました。

 この三つの問題はことごとくチグハグなんです。

 志位さんは、1月に行われた日本共産党の第26回党大会で、米国の動向について、軍事的覇権主義に固執しつつ、国際問題を外交交渉によって解決する動きが起こっているという二つの側面でとらえたこと、この立場で今回の日米首脳会談も分析したと語りました。角谷さんは「一般紙を読んでいるだけじゃ、まったくそういう認識まで思うには至らない。日米同盟が強化されたっていう議論ばっかりがされたようにも読めちゃう」と感想を述べました。

集団的自衛権

志位 若者を戦場に送るな!

角谷 自衛官も“雇用条件”が変わってしまう

 安倍政権が狙う集団的自衛権の行使問題もテーマに。行使容認となれば、海外での「武力の行使をしてはならない」「戦闘地域に行ってはならない」という「歯止め」が外されると強く警鐘を鳴らした志位さん。

 志位 これが若者に何をもたらすか。NHKの特集で、イラクに派兵された自衛隊員のべ1万人のうち1~3割が精神の不調を訴え、28人が帰国後に自殺していると伝えられた(会場からどよめき)。アメリカの場合は、アフガン・イラク戦争からの帰還米兵の3分の1、60万人がPTSD(心的外傷後ストレス障害)を患い、1日平均22人が自殺で亡くなっている。

 戦争に駆り出されるのは若いみなさんです。自衛隊の場合は「非戦闘地域」という建前だったけれど、それでも危険な業務で心が傷つき、自殺で命を落としている。文字通りの戦闘地域で戦闘活動に携わったアメリカの青年の場合は、たくさんの戦死者が出ただけでなく、戻ってきた人も心の病がより深刻です。これが戦争なのです。集団的自衛権の行使というのは紙のうえだけの話じゃない。若者がそういう状況に追いやられるっていうことですよ。若者を戦場に送るな! これをいいたい。

 共産党は、党をつくって92年、一貫して侵略戦争に反対した歴史を持っていますから、ここは頑張りどころです。若者を戦場に送っちゃいけない。若者を「殺し、殺される」ような場面に送り出しちゃいけないと強く訴えたい。

 角谷 国防に携わる自衛官の人たちだって海外の戦場に行くとなったら“雇用条件”が変わることになりますね。

 志位 そうですね。自衛官の「服務の宣誓」では、「我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命」を自覚して、責務の完遂に務めるとある。そういうつもりで入隊したのに、海外での米国の戦争に参加してたたかうことになったら、話が違うということにもなる。自衛隊で働く若者のことを考えても、この道は進んではなりません。

 最後に、志位さんは、安倍政権の解釈改憲の動きに、自民党元幹部、歴代内閣法制局長官、改憲派の憲法学者らも反対していることをあげ、「力を合わせ安倍政権のたくらみを必ず打ち破りたい」とキッパリ。角谷さんは、「責任野党という、与党だか野党だかよくわからない政党もある。そういうなかで志位さんの仕事はずいぶんと忙しくなるはず。がんばってくれなければ困ります」と期待を込めました。