主張

予算案衆議院通過

閣僚の疑惑解明を積み残すな

 安倍晋三政権の2016年度の政府予算案が衆院で自民、公明の与党などで可決、参院に送られました。社会保障予算の圧縮や5兆円を突破した軍事費、大企業減税の一方での17年4月からの消費税増税の押し付けなど問題点が山積していますが、予算審議を通じて見過ごせないのは、辞任した甘利明前経済再生担当相など閣僚が絡んだ「政治とカネ」の疑惑が積み残されていることです。閣僚の疑惑を解明することは、国民の信頼を回復するうえでの安倍政権の最優先課題です。疑惑解明を棚上げして、安倍政権が予算審議などを急ぐのは許されません。

ますます深い甘利氏疑惑

 千葉県内の建設会社と都市再生機構(UR)との補償交渉などを「口利き」し、見返りに政治献金などを受け取った疑惑で甘利氏が経済再生担当相を辞任してから1カ月、甘利氏が入院したこともあり、疑惑解明は全く進んでいません。URは国土交通相が監督する独立行政法人であり、URがかかわる疑惑の解明は、予算の審議にとっても重大な問題です。

 甘利氏は建設会社から大臣室などで合計100万円の献金を受け取り、URと建設会社との交渉にかかわった秘書が謝礼の献金500万円の一部を費消していたことを認めて辞任しました。安倍首相の盟友であり、重要閣僚の一人だった甘利氏の閣僚辞任は、安倍政権を大きく揺さぶるものだったのは明白です。

 甘利氏は辞任にあたって献金など疑惑の一部を認めただけで、甘利氏と事務所の秘書らが「口利き」にどうかかわったのか、全ぼうを明らかにしていません。しかも甘利氏の辞任後も国会での追及などで、甘利氏にかかわる疑惑はますます深まっています。

 甘利氏側が最初に関与したとみられる道路建設をめぐるトラブルでは、甘利氏の事務所がかかわって補償額が上積みされ、その中から甘利氏への献金や秘書への供応などの資金が賄われた疑いがあります。2度目の廃棄物処分などをめぐる疑惑では甘利氏自身が建設会社から詳しい話を聞いて秘書に「口利き」にあたらせ、十数回の交渉で補償額を釣り上げていた疑いが指摘されています。いずれも徹底解明が不可欠です。

 国会議員やその秘書が、企業に頼まれて国の機関や国が出資する団体にトラブルの処理などを働き掛け、見返りに報酬を受け取れば、「あっせん利得罪」に該当する重罪です。甘利氏を重要閣僚に起用した安倍首相も、甘利氏任せで自ら解明の責任を果たしていません。甘利氏はもちろん、安倍首相も疑惑解明の責任を果たすべきです。

閣僚の解明責任は重大

 安倍政権ではこれまでの第1次、第2次政権でも、現在の第3次政権でも、閣僚が「政治とカネ」などをめぐって疑惑を抱かれる問題が続出しています。その結果、小渕優子経済産業相や松島みどり法相らが「政治とカネ」の疑惑で辞任、現在も、島尻安伊子沖縄北方担当相や高木毅復興相らがさまざまな疑惑で追及されています。

 内閣が決定した大臣規範は、閣僚が「清廉さを保持し、政治と行政への国民の信頼を確保する」よう求めています。閣僚の疑惑は国民の信頼のため最優先で解明されるべきものであり、閣僚を任命した首相と政権の責任は重大です。