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 さて、先週の続きはちょっとお休みして、炎上中の話題にいっちょ噛みせねばなりません。
「陰謀論」と言えば、(表のメディアではどういうわけか右寄りの人たちがハマっているという設定になっていますが、しかし言うまでもなく実際には)左派の得意技です。
 中でも人類史上最大最悪最強の陰謀論は言うまでもなく、「フェミニズム」でしょう。これにより人類は絶滅の危機に見舞われつつあります。
 しかし翻って、人類の歴史においてもっともショボい陰謀論として名を残すのではないかと思われるのが、「クラウドワークス陰謀論」です。

 左派というのがもうどうしようもない、語るに落ちた、嗤うのも虚しい、本当にもう、勘弁してくれよと泣き声を上げたくなるような存在になって久しいですが、それにしてもこの陰謀論、今の左派の凋落ぶりを象徴するかのようです。
 ごく簡単に説明するならば、クラウドワークスというのはネット上で仕事の依頼をしたい業者と、仕事を請け負いたいフリーランスをつなぐサービス。仕事は多義に渡るのですが、目立つのがYouTube動画などを量産したい業者がシナリオを書ける者、動画制作のスキルを持つ者にオファーするというものです。
 そこで「ツイフェミについての動画」、「高市早苗についての動画」、「日本をすごいという動画」、果ては「改憲に賛同する動画」などの募集が、近年かけられるようになりました。こんなにも表現の自由が許されていることは、我々の目指す全体主義国家にあってはならんのだ、というのが左派のお歴々の言い分なのです。
 普通に考えれば「そうした動画制作の募集があるのは、そうした動画が受けるから」ということになりましょう。「ツイフェミ」がいかに憎まれているかを考えるならば、そうした動画が再生数を稼ぐのも当然だし、現行の、圧倒的支持を集める総理大臣についての(誉める)動画、日本において日本を誉める動画が求められることは、一般的な感性に照らせば当たり前の、ごく普通のことでしかありません。
 ところが藤井セイラ師匠、シンホリ師匠などそれなりに名のある方々は、そんな常識を歯牙にもかけません。
 暗く閉ざされた共同体でのみ生息する左派は、自分たちの感性と大衆の感性に絶望的絶対的絶命的乖離があることがどうしても理解できず、「そんなはずはない」「だから陰謀なのだ」と、何の根拠もなく妄信しだしたのです。もう本当に、「ダメだこりゃ」と言うしかないダメぶりです。
 五年ほど前にも、やはり近いことがありました。クラウドワークスで「女叩き」とやらの原稿が募集されていたと「ツイフェミ」が噴き上がり、結果、募集していた業者(だか何だか)は案件を取り下げてしまいました。
 そもそもが、「女叩き」とか「ミソジニー」というものは、この世にありません。あるのは女に対して甘く甘く甘く甘く甘く甘く甘く甘く甘く甘く甘く甘く甘く甘く甘く甘く甘く甘く甘く甘く甘く甘く甘く甘く接し続け、それでも女の側の思い上がりがもう、人知を超越したレベルになり、堪忍袋の緒が切れての、批判です。
 いや、いわゆるアンフェの中にもさすがにちょっとどうかという物言いをする人はいます(ことに、YouTuberには)。が、それにしたって女性側の不当な主張、男性への度を超して品性下劣な攻撃と比べればそれだって可愛いものというしかない。
 ところが彼女らにかかっては「この国にはおぞましいまでのミソジニーが蔓延している」となってしまう。それを根拠づけるのが、クラウドワークスの下らぬ案件という「ようやっとみつけた、砂漠の真ん中でのひとしずく」のような事例であり、ところがそれが彼女らには「大洪水」に見えてしまっている、というわけです。

 ――まあ、しかし、ここは一億歩ほど譲って、仮に本当にクラウドワークスで募集される「ツイフェミdis」、「日本age」動画を「政府の陰謀」と仮定しましょう。
 しかしフェミニズムというものは、いつも言うように一〇兆近い国家予算が投じられた、人類史上、もっとも巨大な陰謀と言えましょうが、翻ってクラウドワークスってワーカーに対して、メチャクチャなダンピングが横行してるんですね。ギャラとか見てると、(これはぼくの感覚ですが)本当に本来の、プロに対する相場の1/10くらいが相場になっています。実際ちらと見ただけですが、フェミ様やリベ様の上げるその種の動画のギャラも、2000~4000円。費やす時間や手間を考えれば、昼寝してた方がいいような額です。お安いコンビニコミックなど、主婦をやっている自称漫画家などの労働力をぼったくって作られていると小耳に挟みますが、それのよりあくどい版ですね。
 つまり、そもそも、「ツイフェミ」などではなくプロの、学者だったり作家だったりするフェミニストが上にも書いたように莫大な国家予算を得ながら、品性下劣極悪非道無知蒙昧な「男叩き」を続けて来たのがここ数十年なのだから、それに対し、「クラウドワーク」案件を持ち出して憤ってみせるというそのショボさには、他人ごとながら情けなくなります。

 さて、もうちょっとクラウドワークについて、詳しくご説明しましょう。
 時々書きますが、十年ほど前はDLsiteなどで売られるゴミクズのようなアダルトゲームが、アマチュア、セミプロの絵師さんの絵をベンチャー企業みたいのが買い叩いて量産されている、といった状況が現出していました。そうした連中が、今はクラウドワークスに群がっているのだろうと想像できます。
 彼ら彼女らは「創作」とか「作品」とかいったものを、本質的に理解できない生命体です。ライターとか動画制作者とかには「センス」、「才能」が必要されるものですが、当然、それも全く理解ができません。そうした下等動物が経営する業者が小銭を求めて参入してきたが、彼ら彼女らの脳内に「創作能力」にカネを払うという発想が芥子粒ほどもなく、ただただお安く質の低いものを作り上げることしか、考えていません。ただただ利口に立ち回ってカネを吸い上げることだけが目的の存在であり、クリエイターというのは「工場の単純作業をするバイトさん」だという認識なので、ナチスのユダヤ人に対する、フェミの男に対するような扱いしかしません。
 そうした「ものを作る資格のないヤツら」によって日本の文化はもう、取り返しのつかないところまで破壊され尽くしているわけなのですが、そうした視点は措くとしても、あまりにも低いギャラで労働力を買い叩いている事実は憂慮すべきです。
 左派は貧者を、弱者を殺すためにこの世に存在しているので仕方のないところですが、普通の人間であれば(このクラウドワークス陰謀論を仮に正しいとするならば)まず、政府が低所得層の労働力をそうした環境で買い叩いていること、それにこそ憤るべきでしょう。
 だが、彼ら彼女らの口からそうした声は聞こえません。まあ、単純に陰謀論を唱えるのに忙しく、実態について調べる気がないのでしょうが。

 もちろん、普通に考えて国家が本当に国民を洗脳したいのであれば、そんなところで動画の作り手を募集したりせず、プロによる精鋭部隊を組織するはずでしょう。
 そう考えてもこの陰謀論には理がないのですが……先日、大槻ケンヂ『医者にオカルトを止められた男』を読んでいると、「クライシスアクター陰謀論」なるものについて書かれていました。
 大槻氏と言えばミュージシャンとしても高名ですが、一方でオカルトマニアとしても知られる人物。タイトル通り、精神状態が不安定な時、カウンセラーの先生に禁オカルトを言い渡されたというエピソードもありますが、基本的にはと学会的にオカルトを斜めに見て嗤うというのがそのスタンスです。
 そんな同書で言及されたクライシスアクターというのは凄惨なテロを捏造するため、そうしたニュース映像の制作に駆り出され、血糊メイクをして瓦礫の下でうんうん唸るのがお仕事。そもそも、役者は調達できても破壊された町などはセットで再現できるのか、もしホントに街を破壊していたとしたら本物のテロじゃないのか、いや今時はCGで作れてしまうのか、それならアクターなんかナシで被害者もAIでつくれるんじゃないか、と無限に疑問が浮かんできますが、大槻氏自身もそんな調子で、陰謀論者の心性を鋭く洞察してからかっているわけです。
 続けて大槻氏の筆はクライシスアクターが意外に薄給で、意外に開けっぴろげに求人サイトなどで募集がかけられていることに及びます。いえ、これは本当に陰謀論としてそのような説が流布されているのか、大槻氏のギャグなのかはわかりませんが、ともあれそれ以降、ハナシは「俳優を志し都会に出てきたが、仕事がなく挫折した男が、ふとしたことからクライシスアクターとして名を成して……」といった、彼お得意のギャグへとすり替わっていきます。
 が、仮にですがクライシスアクターが薄給で、求人サイトで募集がかけられているというのが本当となると(いや、本当にそうした事実がある、ということではなく、都市伝説でそうした話が流布している、ということね)、これってクラウドワークス陰謀論に近づいていきますよね。「んなアホな」という。
 また話が飛びますが、「MIB陰謀論」というのもあります。UFOを目撃した人間の下に現れ、「お前が見たことは誰にも口外するな」と脅して回る黒ずくめの男たちのことで、政府のエージェントとも、宇宙人が変身した姿とも言われています。
 昨年物故した、やはりオカルトに詳しい作家の唐沢俊一氏はこのMIBを「庶民派陰謀論」と呼びました。市井の、日常生活ではぱっとしないオカルトマニア。「俺は宇宙人が地球を狙っているという真実を知っているが、周囲の人間は誰もそれを理解しない」との不遇感を抱えている。そこへ現れたMIBは、彼を「巨大な陰謀勢力に危険人物扱いされているVIP」へと変えてくれるのです。一般人でしかないその人物の前に、国家や宇宙人のエージェントであるMIBが現れることで、彼は「巨大陰謀と戦う男」へとステータスアップできるわけです。
 基本、陰謀論というのは国家なり宇宙人なりといった大きなものと、市井の人間とを単線的につなぐ「セカイ系」的性質を持っているわけです。
 今回の陰謀論二件も、近い構造を持っていると言えましょう。
 ネットでふと見つけたどうと言うことのない募集案件は、「その辺でたまたま黒ずくめの格好で歩いていた兄ちゃんたち」です。
 それを「陰謀」であると解釈することであら不思議、ネットを眺めているだけの彼ら彼女らは「国家の陰謀と対峙する革命戦士」へと変身できるのです。
 そしてもう一つ、彼ら彼女らが騒げば騒ぐほど、クラウドワークスの持つ真の問題点、つまり労働力の搾取、文化の破壊というものは不可視化され、日本はさらに破壊されていくのでした……というのが俺の今考えついた陰謀論だけど、問題は左派がそんなことを考えるほどに頭がよくないことなのであった。