多くのMMAファイターをマネジメントするシュウ・ヒラタ氏が北米MMAシーンを縦横無尽に語りまくるコーナー!今回は17000字でお送りします!(聞き手/ジャン斉藤)
――シュウさん、今回もよろしくお願いします!最近話題になってるのは、パンクラスのチャンピオンがBD(以下BD)のオーディションに出演したことでベルトを剥奪されてしまった件です。
シュウ けっこうな騒ぎになってますね。
――この件をきっかけに「チャンピオンなのに食えないのか?」とか議論になってるんですけど……10年前と比べて国内王者のベルトの価値はだいぶ変わってますよね。
シュウ 10年前どころか、ボクはずーっと前から言ってることなんですけど……。こんな言い方するとすっごい怒る選手や関係者がいるけども、フィーダーショーやローカル大会って言い方があるじゃないですか。これをLFAやCFFCの関係者の前で口にすると怒るんですよ。「フィーダーショーなんて呼ばないでくれ!」と。
――えっ、そうなんですか?フィーダーショー以外の何物でもないですよ(笑)。
シュウ そうなんですよ。ボクはCFFCのマッチメーカーを昔から知ってるんですけど、「フィーダーショーとは言わないでくれ」ってのがボクらの会話の始まりだったりするんです(笑)。
――5~6年前にシュウさんが「修斗はローカル団体」と言ったら、修斗関係者が大激怒した件がありましたけど。べつにバカにしてるってわけじゃなくて、いたって普通の評価なんですよね。
シュウ そうです。MLBだったら3A、2A、1Aってありますよね。3Aの選手だって、いつでもメジャーに昇格できる奴がゴロゴロしてるじゃないですか。佐々木朗希だって3Aで調整中にバカスカ打たれたりすることもあるわけですよ。修斗、パンクラス、DEEPはローカル大会ですけど、チャンピオンやトップの人たちの中にはUFCと契約できる選手はいるってことなんですよ。
――ただ、いまの国内団体が3Aかというと……10年前ぐらいだったらUFCと直接契約できたじゃないですか。いまRTUに出れるかどうかも怪しい感じになっちゃって。
シュウ それはありますよね。いまはPFLのチャンピオンたちがUFCと交渉してもなかなか契約しないじゃないですか。それはUFCは取る気がないってことですよ。パッチー・ミックス選手とか、ベラトールから何人か流れたのが最後で、今後はPFLのチャンピオンでも、よほどの理由がないかぎりは高い条件では取らないと思うんですよ。たとえばダコタ・ディチェバみたいに人気があるから「潰してやろう」みたいな感じで取ることはありえますけど(笑)。
――いま世界中に強い選手はゴロゴロしてるんだけども、契約するにあたってプラスアルファ、何を持ってるかが問われますよね。一番求められるのはフィニッシャーなんでしょうけど……。
シュウ あとは今度のマカオ大会でもそうですし、地元ファイターですよね。本来ならばコンテンダーズ(DWCS)に回されるんだけども、マッチメイクにうまくハマるから出そうと。そういう新規契約パターンはありますよね。
――UFCからPFLに移ったジェレミー・スティーブンスも引退状態でしたけど、地元開催ってことでUFCに再復帰しましたね。
シュウ 地元の選手が出たからって、爆発的にチケットが売れるかといえば、そういうわけでもないし。UFCのレベルでは、渡航費とかはたいした経費ではないので、1年1回ぐらい試合をさせて、なんとなく使いこなしちゃうところはありますね。
――濱田選手の件でいえば、「パンクラスの王者になっても食えないなんておかしいじゃないか」という意見もありますね。
シュウ これ、名前は出さないけども。ある元パンクラス王者と離婚した奥さんのことを知ってるんですけど。離婚する際に弁護士を雇ってファイトマネーの詳細を知ってガッカリしたといってましたよ。
――いきなりとんでもない話が出てきました(笑)。
シュウ やっぱり離婚の調停となると、収入とか開示請求ができるので。
――いまの大会規模だとチャンピオンになったからすぐ食えるわけじゃないし、逆にチャンピオンじゃなくてもスポンサーがつけば食えますよね。
シュウ ハッキリいえば、UFCと契約した選手だって同じですよ。「いきなりは食えないから仕事やめるべきではない」ってアルジャメイン(・スターリング)でさえ言ってましたけど。ボクも「契約更新する前に仕事はやめるべきではない」と言ってます。それって、新規契約なら4試合、DWCSとかRTUからなら5試合。これをクリアして、再契約にたどり着いたら、という意味です。ということはですね、新規ならギャランティ1万2000ドル・ウィンボーナス1万5000ドル、DWCSかRTU経由なら1万ドル・1万ドル。これで再契約まで勝ち残るということは、多分2から3試合は勝ってないと厳しいですよね。勝つごとにギャランティ、ウィンボーナスともに2000ドル・2000ドルずつ上がるとなると、計算していただければ、再契約できてそのときにちょいとギャラもウィンボーナスも上がると考えて、どの程度のファイトマネーになるか、だいたい予想はつくと思うんです。「じゃあ、LFAやCFFCのギャラがいいんですか?」って話ですよ。全然良くないですから。前にも言いましたけど、DEEPでメインに試合したほうがLFAのタイトルマッチよりファイトマネーはいいですよ。パンクラスさんやLemino修斗さんも外国人選手を呼んでますけど、LFAより待遇はいいと思いますよ。
――LFAは渡航費は自腹のケースもあったりしますよね……。
シュウ 代表のエド・ソワレスが「LFAは世界で2番目の団体だ」って動画を出して炎上したんですけども、コメント欄に「500ドルしか払ってないのに偉そうなことをいうな」って書かれちゃうわけですよ。下の選手だったら500+500ドルの世界ですから。
――フィーダーショーはキャリアを積む場で、いかに商品としてメジャーに出荷されるかどうかってことですね。
シュウ ただ悲しいことに、いまはタイミングがうまくハマらないとUFCとは契約できないじゃないですか。たとえば日本大会でやるとか、マカオ大会で誰かがケガでアウトになって、ビザのいらない日本人に緊急オファーがあったりはします。それ以外はRTUやコンテンダーズから登り詰めるしかないんですよ。だからRTUやコンテンダーズからオファーが来たら、チャンピオンだろうが出られる契約にしておくべきですね。
――フィーダーショーに縛られる契約は怖いですね。
シュウ LFCもCFFCも基本的にはメジャーからオファーがあったら出ていいっていう契約なんですよ。そうしないと選手も試合に出てくれないからね。ただ今回のBDとパンクラスはかなり特殊なケースですよね。UFCやPFLとかでもないし……契約っていうことに関しての感覚がまだまだ選手のあいだでは薄いってことが問題だったと思うんですよね。
――いまはどこの団体もメジャーからのオファーなら出場を許しますけど、ちょっと前は違っていて。
シュウ まあ、UFC参戦が決まった日本人選手を横槍を入れて潰したような団体もあったくらいですから(苦笑)。
――当時でも、あの妨害は信じられなかったですね……。
シュウ あんなことするなんて信じられないじゃないですか。そうすると、さっき言った3Aとメジャーの構図が完全に崩れるわけですよ。
――メジャー行きを止めるなら、選手にちゃんとお金を払わなきゃダメですよね。妨害された日本人選手には、そこまでお金払ってないように見えたんですよね。
シュウ いや、全然ですよ。もう行かせたほうが団体としても商売として良くなると思ったんですけど。
・日本の特殊なタニマチバブル
・「バラエティ番組に出ただけでタイトルを剥奪されちゃいけないんですか?」
・格闘家もBDで有名になればいい
・UFCvsNetflix MMA
・井上直樹vsコレスニック!?
・ONE SAMURAIは難しい?
・その後の中井りん……17000字でMMAニュースを語っています