
「運動前はウォームアップ!」ってのは一般常識のひとつ。ジムとかでも、いきなり走り始めるのではなく、まずは軽くジョギングをしたり、ストレッチをするように、指導されるはずであります。
ただ、ここで気になるのが、「そもそも、ウォームアップって本当に意味があるの?」って問題でしょう。というのも、「運動前にはなにをすべきか?」って問題には諸説がありまして、
- 運動前にストレッチをすると、ケガを防げる!
- いや、ストレッチをすると筋力が落ちるから、やらないほうがいい!
- 軽いジョギングで体を温めるのが一番だ!
- 本番と同じ動きを、少しだけやっておくのがいい!
みたいに、いろんな意見が飛び交ってるんですよ。難しいですねぇ。
そんなわけで、近ごろめっちゃ参考になったのが、『International Journal of Sports Physiology and Performance』に掲載されたコンセンサス研究であります(R)。
これは、スペインのダニエル・ブジョサ博士らを中心に、世界12カ国のスポーツ科学者やトップレベルのコーチ23人が集まり、ウォームアップについてわかっていることを整理したもの。最終的に72項目にわたる声明をまとめ、「現時点で言える最強のウォームアップとはなにか?」って問題を調べたんですよ。
新たな実験を行った研究ではないものの、既存の科学的な証拠をまとめてくれているので、ウォームアップ難民になっている方には、めっちゃ参考になるんじゃないでしょうか(私もめっちゃ参考になりました)。
では、調査の詳細を見ていきましょうー。
ウォームアップには3つの目的があるんだぞ
まず専門家たちが重視したのが、「そもそも私たちは何のためにウォームアップをするのか?」って問題であります。通常、ウォームアップというと「体を温めるため!」と考えられがちなんだけど、実際には大きく3つの目的があるそうな。
- 目的① 体温を上げる:筋肉の温度が上がると、筋肉や腱が動きやすくなり、神経の信号も伝わりやすくなる。結果として、運動に必要な力を発揮しやすくなる。
- 目的② 代謝を活性化する:軽く体を動かしておくと、心拍数や呼吸数が上がり、筋肉へ酸素を届ける仕組みが働き始める。そのおかげで、本格的な運動に入ったときにも、体が素早く対応できるようになる。
- 目的③ 心身を運動モードに切り替える:ウォームアップには、単に筋肉を温めるだけでなく、集中力を高めたり、これから行う動作に慣れたりする役割もある。
いずれも納得ですが、この3つのなかでも面白いのが、「体を温めるだけでは不十分!」ってポイントであります。なんでも、2011年に行われた実験では、20分間の軽いサイクリングと、20分間の温浴を比較したところ、運動パフォーマンスに関しては、実際に自転車をこいだほうが有利だったらしいんですな。つまり、ウォームアップに必要なのは、体温を上げることだけではなく、心臓や肺、神経系などを含めて、運動に適した状態を作ることだと言えるわけです。
さらに専門家たちは、ウォームアップには長期的なメリットもあると指摘しております。たとえば、
- 運動前に片脚立ちや軽いジャンプを取り入れれば、準備運動と同時にバランス能力や運動スキルの練習にもなる。
- ウォームアップ中に体の重さや動きにくさをチェックすれば、「今日はいつもより疲れているから、トレーニングの強度を下げよう」と判断する材料にもなる。
みたいな感じです。ウォームアップってのは、単なる準備ではなく、トレーニングの質を高めるための時間としても使えるわけですね。