TABOOレーベル」をご愛顧頂いたカスタマーの皆様へ(レーベル閉鎖→運営母体移動のお知らせ)

 

 

 残暑お見舞い申し上げます。というのもすっかり手遅れな感じですが、御健勝をお祈り申し上げます。

 

 まず最初にレーベル運営状況のご報告を。現在我々は、SONY傘下の最後の一枚、オーニソロジー(新人、辻村泰彦のソロユニット)のデビュー作「101」の製作を終え、発売日程が決まり、ジャケットとMV製作に着手したところです。極めて大雑把に、年内にリリースされます。

 

 そして、本作のリリース、およびプロモーションの初動をもって、我々TABOOレーベルは、2013年のクリスマスから5年強の時を経まして、SONY傘下であることを止め、運営母体、並びに体制を変えてレーベル運営を継続します。

 

 今の所、新しい経営母体に関しては契約関係が完全にフィクスされてはいないので、まだ詳細は「移動第1作が<「最終スパンクハッピー」の1stアルバムになる>」ということ以外は、現在のところ何も申し上げられません。

 

 タイトルに「2つのリストラ」とあり、TBSの件と対置させている様に見えますが、実際はまだ契約期間は続いており(オーニソロジー「101」の初動プロモーションの終了をもって、一旦、という形)、その後も遺す形となるタイトルの販売などなど、業務関係の残務は続きますので、TBSの件と等しく、会社批判をするような話では全くありませんことを、最初に強調したく思います。

 

 確かに我々が、4年の活動歴で、巨万の富をSONYに提供した訳でこそありませんが、4年前のレーベル第1作「戦前と戦後(菊地成孔とペペトルメントアスカラール)」から、最終作の「101(オーニソロジー)」まで、世辞でも内輪贔屓でもなく、1タイトル残らず、いずれ劣らぬ傑作ばかりであり、世評も批評も芳しく、少なくとも音楽的には、参加アーティストさんの優れた才能により、一種奇跡のレーベルとして日本の音楽シーンに於ける立場を明確にさせて頂いたつもりです。

 

 これは全て、どこの馬の骨ともわからぬ私に、レーベルを一枠任せてくださり、メジャーカンパニーのプロダクツセンスなど気にもかけずに、好きなように好きなものを作り続けた、プロデューサーを4年間も飼ってくださったSONYの誠意と実験精神、企業体としての余裕に感謝します。

 

 

 因みに以下、全タイトルを列記します。「1タイトル残らず傑作」というのがブラフではないことがご理解いただけると思います。自分で改めて列記しながら慄然としています。駄盤はおろか、平均的な盤も一枚もない、全てがエッジに満ちた問題作であり、これだけ多様なアーティストを抱えながら、クオリティの平均は異常に高かったと評価しています。

 

 

2014年>

 

「菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール/ 戦前と戦後」

「菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール/ 夜の歴史(ベスト盤)」

UA×菊地成孔 / cure jazz reunion(ライブ盤)」

「ものんくる / 南へ」

Rinbjö  a.k.a 菊地凛子 / 戒厳令」

 

 

2015年>

 

dCprG(*現DC/PRG / フランツカフカの南アメリカ ft W・シェイクスピア」

「菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール / 歴史は夜作られる(ライブDVD作品)」

 

JAZZ DOMMUNISTERS / ドミュニストの誕生(ビュロー菊地からのリイシュー盤)」

 「菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール/ニューヨーク・ヘルソニックバレエ(EWEからのリイシュー盤)」

 同上「記憶喪失学(EWEからのリイシュー盤)」

 同上「野生の思考(EWEからのリイシュー盤)」

 同上「南米のエリザベステーラー(EWEからのリイシュー盤)」

 

 

2016年>

 

 

「菊地成孔 / 機動戦士ガンダム/サンダーボルトOST

「大西順子/ TEA TIMES

「ペンギン音楽大学生 ビート集(*配信のみ)」

 

 

2017年>

 

JAZZ DOMMUNISTERS / Cupid Bataille, Dirty microphone

「けもの /めたもるシティ」

「ものんくる / 世界はここにしかないって上手にいって」

「菊地成孔 / 機動戦士ガンダム サンダーボルト2 OST

 

 

2018年>

 

「菊地成孔&小田朋美/ <素敵なダイナマイトスキャンダル>OST

「市川愛 / MY LOVE,WITH MY SHORT HAIR

 

 

 現在のところの各アーティストの最高傑作がずらっと並んでいると思うのですが、如何でしょうか?

 

 しかし、SONY側からレーベル継続終了の通告を受けたのは、半年前の5月であり、タイミング的には、市川愛氏の「MY LOVE,WITH MY SHORT HAIR」のリリース直後、そして活動を再開したスパンクハッピーのデビューシングル「夏の天才」が伊勢丹185月のグローバルグリーンキャンペーンソングに抜擢されたばかり、という状況で、「さあ、18年度が始まったぞ。今年も頑張ろう」というところでした。

 

 弊社の代表取締役である私と、取締役である長沼、SMASONY MUSIC ARTISTS / SONY内の、事務所機能を担うセクション)の管理本部の責任者の方と直接お会いし、レーベル閉鎖の理由をご説明いただきましたが、エクゼクティヴの業務内容に関わることですので、一切の詳述はできませんが、SONY側の決定は、一言で言えば、無慈悲で容赦ないとは全く言えません。繰り返し、SONY側の4年間の実験精神と寛容に感謝させて頂きます。「機動戦士ガンダム/サンダーボルトOST」の売り上げと評価によって、ニューヨーク公演を行ったのはつい昨年の11月です。私にとってそれは、自分のリーダー作で合衆国ツアーをする、初めての経験でした。この点に関する感謝は特に強調させて頂きたく思います。本当に良い思い出になりました。

 

 ただ、妥当かつリスペクトに満ちたレーベル閉鎖通告を受けるまでは、ニューヨーク公演後から制作が着手された市川愛氏の「MY LOVE WITH MY SHORT HAIR」続く「2018年度のコンテンツ」として、冒頭に書いたオーニソロジー、次いで最終スパンクハッピー、次いで私のソロ、以下、私の新バンド「SONG-XX」、ペペトルメントアスカラールの二枚目、けものの二枚目、、、、といった流れを想定しており、牧歌的なことに、レーベルの未来は明るいとすら思っていました。

 

 しかし、「後一枚」と言われてショックを受けた我々に対し、歴史のあるバンドであり、若干の話題性も知名度もあるので、売れ行きが期待できるであろう最終スパンクハッピーではなく、我々のレーベルからデビューするべく奈良から上京してきたオーニソロジーの熱意、バンドサウンドである彼らに先行投資としてのバジェットが必要であること、何より、彼とサポート陣の高い才能と技術を評価し、「最後の一枚」を、どうしてもオーニソロジーにしたいという私の最後の我儘を快諾くださったことにも大いに感謝します。感謝の意に替える意味でも、オーニソロジーの音楽、リリースしてきた全ての音楽が、今後一人でも多くの人々に届くよう、鋭意努力させていただきます。 

 

 ただ、レーベルプロデューサーとして、全ての参加アーティストの皆さんがレーベルに対して帰属意識を持って(契約はワンショットずつで、包括的な囲い込みではないので、帰属意識を持っていただけたのは、全て、心意気というか、オプショナルなものです)、ホリデーやグレートホリデーに参加してくださった事、レーベルから次回作を出そうという夢を持ってくださった事に応えたかった、という気持ちは捨て切れません。

 

 ブランドとしてのレーベルカラーを最大手のメジャーカンパニーの中で確立するという、夢のような可能性も、参加アーティストの皆さんの、豊かな才能があれば、そして新たな才能の発掘があれば、ない話ではないと信じていました。この件については第二TABOO(仮称)がどれだけ達成できるか、もう一度、私の手腕が試される時だと肝に銘じ、音楽家人生の最後のチャンスであると自認した上で、次の展開を思案中です。

 

 

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 私はこうして、8年間継続した自分のラジオ番組と、4年間継続した自分のレーベルを、今年同時に失います。前回も書きましたが、今は両手と両足をいきなり切断された気分ですが、いっその事すっきりした、という気分も一方で事実です。

 

 アンチやヘイターの皆様には、胡散臭いキモオワコンの転落という朗報と福音に酔いしれて頂きたく思いますし、ファンの方は、どうか喪失感などで気を落としたりせず、長い目で見守って頂ければ、と思います。早急にリフレッシュ&バックアップを図ります。

 

 番組にも、レーベルにも、私は今でも誇りを持っており、狂気に近い集中力の賜物であるとしか言いようのない、クオリティ経年維持の成果は、いずれ歴史が証明すると思っています。私は「儲かってるけど、仕事の内容がなあ、、、」という人生よりも「なんであんなに凄かったのに、売れなくて潰されるわけ?凄すぎたからだな。あっはっはー!」という人生を是としますし、是とする以前に、そもそもそういう風にしか生きられません。

 

 とりあえず今申し上げられることは、2019年には、まずは私個人を、次いで主宰する各バンド(ペペ・トルメント・アスカラール、最終スパンクハッピー、そしてDC/PRGは来年結成20周年です)をオンステージに戻し、各バンドなるべく長いツアーを敢行することに腐心します。つまり、全てをもう一度、ステージに上げ直したく思っています。

 

 

 以上です。大変な長文におつきあい頂き、ありがとうございました。番組は終わり、レーベルからのリリースは後1作ですが、レーベル業務はまだ続きます。SONY傘下のラストアルバムにして、私が4年出し惜しんだ真のアンファン・テリブル、オーニソロジーのデビューアルバム「101」、第二TABOO(仮称)の始動を飾る、世界中のバディ・ミュージックにも類例がない、異形かつ究極の男女デュオ、最終スパンクハッピーのデビューアルバム「FOR LIVE & INSTAGRAM ONLY(仮題)」にどうかご期待ください。

 

 

TABOOレーベル レーベル・プロデューサー 菊地成孔