私とODは、ODへの報酬としてワイン付きのディナーを重ね、周期的に菊地君とODが会う機会を持つこと、ODが小田朋美さんのマンションに住み、私服を借用し続けることで、成りすましのボディ・ダブル業にほとんど緊張することがなくなっていた。ただ、私は「菊地くんらしく」振舞えばよかったのに対し、ODは逆に、もしこれが恒常的なボディ・ダブルであるならば、小田さんにODらしく振舞わせることを強要することになり、流石にそれは無理だった為に、「あらゆる現場で、自由自在に入れ替わる」という、スパイめいた事まではできなかったが、我々4人が、4人で4役を担っているという屈折した形態に対する免疫は完成しつつあった。