4月29日(月曜)
先週末はさすがに疲れたので(前回参照)、13時間寝て、つまり夜の9時に起き、朝食と夕食を兼ねた「ワンメーター晩飯」をして、そこで酒を飲んですぐ寝てしまう事にした。
寝溜めという奴で、30代はコレが得意、というよりも日常だった。7時間、7時間、2時間、3時間、14時間、7時間、9時間とかいった具合に週間精算(一週間で49時間寝れれば1日7時間寝た事に)でまかなっていたのだが、歌舞伎町に来てからは比較的安定した感じになり(早朝8時に寝て3時に起きるベース)、余りロングスパンの寝溜めをしないでいたのだが、最近サラリーマン樣方の様に週間の仕事が増え(この連載の読者の皆様方が日本で一番その事を御存知な訳ですが)、イレギュラーの仕事が入るとたちまち寝溜めモードに入るようになった。
<昔とった杵柄>という言葉があるが、大体コレは「久しぶりにやってみたらイケなくもなかった」程度の話で、すっかり元に戻れるという事ではない。現在の生活上の目標は、レギュラー仕事を少々減らして時間に余裕を持たせる事で、さてどれを削ろうかと一覧するとですね(並びには意味はありません)。
1)芸大
2)ペン大
3)粋な夜電波
4)美学校(今期から授業数を半分に落とした)
5)ビュロー菊地チャンネル
6)UOMOの連載(「売れてる映画は面白いのか?」)
以上が定期個人活動のレギュラーで、以下が不定期集団活動のレギュラーである
1)DCPRG
2)ペペトルメントアスカラール
3)ダブセプテット
4)HOT HOUSE
5)モダンジャズディスコティーク
6)JAZZ DOMMUUNE
7)ジャズドミュニュスターズ
どうしようひとつも削れない上に、ナニゲにジャズドミュニュスターズがさらっと入ってるんですけど(笑)。
まあでも、「著述家」という仕事は愚兄に任せ、自分は筆を折ってしまいたいと常に夢想している事は確かである。音楽も著述も両方やる人(実のところほとんどいないーー音楽家が、音楽家としてのエッセイを書く(広い意味でのタレント本)。というのを除外するとしたら。の話だがーーのだが)であれば、よおくお解り頂けると信じるが、書いても書いても理解されない上に、変に萌えられて恐ろしいし、訳の解らない嫉妬を買って(これは「萌えられる」に包含されているが)、面倒な目に遭う。「辻さんや町田さんは、そんな事おもってないぞ」と言われそうだが。
音楽と好対照である。音楽は「誤解」という概念は無いし(嫌いだろうと無関心だろうと、聴いた人は、聴いている訳なので、とこれでは実質、説明に成っていないが)、純聴衆に変に萌えられても全く問題ないが、純読者に変に萌えられると恐っろしい。要するに本人は音楽をやっている感じで本を書いているのだが、読者は本を読んでいるのだ。疲れて気でも狂ったかと思われるかも知れないが、本当の話である。
とはいえ今年は(本当に有り難い事に)書籍の出版が2冊以上決まっている。これが死ぬほど詰まらない本で、全く売れないまま著述家生命を奪う様な出来であれば自然に筆が折れるのだが、校正している限りにおいてはかなり面白く(解らない。音楽の様に万能感的な自信は無い)、やはり前田日明さんに言われた通り、こういう事は子供さえ出来れば総て自然に整うのであろうかと思うばかり。
ワンメーター晩飯どこにしようかなと迷った結果、グルメ友達がこぞって絶賛する、幡ヶ谷「オウ、ペシェ・グルマン」に行った。シェフもスムリエも女性で、特に料理が素晴らしい。もうとにかく、ワンメーター(つうか、実際はワンメーターではなく「一駅」と言った方が妥当なのだが、タクシーで行くので名称がこうなった)領域まで拡大すればトラットリア/ビストロ/バル/バールは、一定以上の水準と看做される店だけ厳選しても山ほどあり、勢い「通う」身体から「開拓する」身体に動いてしまい、心身のバランスが若干崩れるので、この遊びも一段落したら、再厳選して「通う」身体に傾け直そうと思っている。
人参のムースに塩水ウニと塩水のジュレ、新タマネギのポタージュ、鴨コンフィのサラダ、仔牛のフィレ網脂包みのソテー、と無茶苦茶な注文をしたのだが、自分の目が飢えていたか、スムリエーヌ兼セルブーズの女性は顔色一つ変えずに(普通だったら「お一人には多いと思いますが」と言うと思う)注文を取り、料理を出した。ワインはグラスの赤を3杯やったが(マルサネか何かだったと思う)すげえ旨かったというより、ああ、ブルゴーニュを美味しい肉料理と一緒に飲んだな。という感覚が強く、これは疲労時というハンデをつけるべきだろう。
帰宅して消化とアルコール分解を待ち、風呂にも入らず寝る。