「つくす」若者が「つくる」新しい社会 (ベスト新書)

 藤本耕平の新書『「つくす」若者が「つくる」新しい社会』を読みました。

 同著者による『つくし世代』という本の続編的な位置づけの本らしいのですが、ぼくは『つくし世代』のほうは未読です(続けて読んでみるつもり)。

 タイトルからわかるようにいわゆる「若者論」に属する一冊ですが、ほかの若者論本と一風変わっているのは現代の若者(「つくし世代」)をあくまでも肯定的に捉えていること。

 この本のなかで書かれていることのなかには、「ほんとうにそれは良いことなのか?」と疑いたくなることも含まれているのですが、著者はあくまでポジティヴに受け止めます。

 その姿勢をどう評価するかはひとによって違ってくるでしょうが、とりあえずここではどこまでも若者に寄り添う態度に敬意を表することにしておきましょう。

 著者は現在31歳以下の若者世代を「つくし世代」と名づけています。

 これはちょうどぼくが仮に「新世代」と呼んだジェネレーションと重なっています。

 しかし、著者による分析はぼくなどとはまったく違う。

 なるほど、同じ事実を材料にして正反対の結論を出すこともできるのだな、と感心しました。

 著者によれば、漫画『ONE PIECE』のルフィ海賊団のように「仲間」のために「つくす」ことを第一に考える世代、それがつくし世代だといいます。

 かれらにとって最も大切なものはなんといっても自分をあたたかく受容してもらえる「居場所」であり、その居場所のためなら努力することも惜しまないのだと。

 この観測がどこまで正しいのか、ぼくにははっきりとはわかりませんが、著者のものの見方はそれほど外れていないようにも感じます。

 というのも、この本ではぼく自身が実感している社会の変化を反映した若者像が描かれているからです。

 しょせん世代論とか若者論といったものは一定の限界を抱えたものであり、最終的にはひとはひとりひとり違っているという現実があることを合わせて考えるなら、当面は「こういうものなのかな」と受け止めておくことも問題ないでしょう。

 著者はつくし世代の個性を五つ並べ上げているのですが、ぼくにはそれらは主にこの世代のふたつの特徴、「チョイス」が豊かであることと「デジタル・ネイティヴ」であることから来ているように思えます。

 もちろん、このふたつは密接に関わりあっている。

 チョイス(選択肢)の豊かさについてはいうまでもないでしょう。

 この社会はかつてないほど色々なチョイスを許すように成熟してきている。

 そして、デジテルネイティヴ。

 つくし世代は