弱いなら弱いままで。
連休には『ゲーム・オブ・スローンズ』を観よう!
あけましておめでとうございます――という時期でも既にないですね。あいかわらず更新が遅れていて申し訳ありません。
この正月、ぼくは何をしていたかというと、一心に小説を書き進めるほか、欧米を初め世界で大人気、既刊5作で7500万部突破!という超人気タイトル『氷と炎の歌』のテレビドラマ版『ゲーム・オブ・スローンズ』を借りて来ては見ないで返却したりしていました。
ええ、ぼくはいままで延滞金で数万円は使ってきた男です。これからはダウンロードオンリーにしようかな。それはそれでお金かかるけれど……。
まあ、観ずに返却しておいていうのも何ですが、『ゲーム・オブ・スローンズ』は原作もドラマも傑作の評判も高く、じっさい異様に面白い作品です。
最近、やたらにレベルが上がっているという噂のアメリカのテレビドラマのなかでも、頂点に君臨する作品だといいます。
いったいどこがそんなに面白いのか? ひと言でいうと、超が付くほど重厚なんですね。この作品に、『進撃の巨人』などと同じく「壁」が登場するのですが、ちょっと世界の分厚さが桁違いという気がします。
もちろん、『進撃の巨人』も傑作なのだけれど、『ゲーム・オブ・スローンズ』のそれは、ほとんど世界が「そこにある」という感じで、ほかのファンタジーの追随を許しません。
ちょっと一読しただけでは憶えきれないほどの膨大な登場人物が錯綜し、殺し合ったり、貶め合ったり、それはもう大変なドラマを繰りひろげています。
一応、ファンタジーには違いないのですが、むしろ架空戦国絵巻という色合いのほうが強く、特に序盤では魔法とかドラゴンといった存在はほとんど出てきません。
そのあとは徐々に幻想色が強まっていきますが、それにしても『指輪物語』みたいな作品とは一線を画す印象です。いわゆるダークファンタジーの理想的結実といえるかもしれませんが、ひと口にダークといっても、その「世界の色あい」の多様性は半端ではない印象。
とうてい善悪では割り切れない、途方もなく複雑な個性をもった登場人物たちの活躍やら暗躍やら没落には、強く惹き付けられるものがあります。
作者のジョージ・R・R・マーティンは、いわゆる「天才」というべき才能ではないかもしれませんが、なまじの天才ではとても追いつけない技量に到達していると思えます。化け物め……。
まあ、あまりにも世界を拡大しすぎた結果、新刊がなかなか出ないというよくある現象が例によって発生し、遅々として出ない続刊を待つ読者たちが焦れに焦れるという事態になったりしているようですが、それも大長編ものの宿命といえるでしょう。
作者の寿命から考えて未完に終わる可能性も高いという洒落にならない事実もあるのですが……。あと2作で終わる予定なんだけれど、果たしてほんとうに完結を迎えるものなのか、神々のみぞ知るというところ。
しかしまあ、とにかく、克明きわまりない描写の積み上げによって生み出されたそのリアリティは半端じゃないものがあります。
『銀河英雄伝説』とか『グイン・サーガ』、『ベルセルク』といった大河群像劇が好きな向きは必ず嵌まると思われるので、ぜひ読んでみてください。マジパネェっすよ。
とはいえ、この作品、いったいどういうわけなのか日本での知名度はあまり高くないようです。Googleで検索してもあまり多くの記事が見つかりません。
どうしてなのかと考えてみてのですが、そもそも翻訳ファンタジーというジャンルの需要があまり高くないのだと思い至りました。このライトノベルが百花繚乱のご時世に、翻訳ファンタジーなんて読んでいる人はマニアだよね……。
まあ、先述した通り、『ゲーム・オブ・スローンズ』はシンプルにファンタジーとはいい切れない作品ではあるのですが、そこら辺は読んでみないとわからないわけで、一緒くたにされて敬遠されているのでしょう。可哀想な子!
何といってもあまりに長いし、一冊は分厚いし、登場人物は記憶力の限界に挑戦する数である上に同名の人物がたくさん出て来るし、何かととっつきづらい作品であることは間違いありません。
しかし、一旦はまったら最後、ちょっと抜け出せない程の深みがあることはぼくが保証します。おそらく、世界中のあらゆる長篇ファンタジー小説のなかでも最高の一作です。厚みが違うんだよ、厚みが。
とはいえ、先に述べた通り、未完のままなかなか続刊が出ないこともたしかで、いまとなっては何とドラマ版が原作の展開を追い抜いてしまうという奇妙なことになってしまいました。
そう、原作ではまだ未刊の第六シリーズ「冬の狂風」がドラマでは既にリリースされているのですね。このままだとほぼ確実にドラマのほうが先に完結することになるでしょう。何てこったい。
まあ、このまま原作が未完に終わったらドラマを見ればいいということかもしれないけれど、でも、そんな訳にいくか。何とかしてよ、マーティン! と思いつつ、ぼくは小説を書くのでした。いや、ほんと、未完の大長編ロマンって罪だよね……。
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