弱いなら弱いままで。
東京で友人と集まって『ヱヴァQ』を観て来た。いやあ、凄かったねー、とだれかに語りたくなるような作品であった。集団で観に行って良かった。観た後に作品についてああでもないこうでもないと語りあうことも含めて『ヱヴァ』。作品が作品を超えて現象の次元に到達しているのが『ヱヴァンゲリヲン』という作品なのだ。
以下、一応はネタバレなしで語るつもりだが、完全に情報をシャットアウトして観たい人はやはり読まないほうがいいかも。
さて、待望の映画『エヴァQ』であるわけだが、まさに「問題作」というにふさわしい作品となっている。通常の劇映画のセオリーからすれば失敗作といい切ることもできるかもしれない、それほどの作品だ。いまのところあまり確認していないが、ネット上では賛否両論の大激論が続いているだろうことは想像がつく。
これで「否」がないようなら日本社会は完全に狂っている。しかし、熱狂的に支持する人もいないわけではないだろう。何しろ狂っている。「お客をもてなして気分よくさせ帰す」というエンターテインメントの定石から完全に逸脱した展開であり、内容である。
いままで散々庵野秀明監督とスタッフに翻弄されてきた耐性ができているファンにとってすら、やはり衝撃的な作品といっていい。ただ、ある程度予想できたことではある。シンプルな構成でストレートなメッセージを伝えてきた「序」「破」は『ヱヴァ』にしてはあまりにおとなしすぎた。
視聴者の予想と期待をことごとく裏切り、娯楽作品の常識をあっさりと捨て去って殺伐とした世界に叩きこんでこその『ヱヴァ』、という見方に従うならば、まさにこれこそ『ヱヴァ』なのだろう。
それにしても、一応はエンターテインメントの枠組みのなかで物語を紡いでいた「序」「破」に比べ、膨大な情報量が錯綜しつつミステリアスな展開が続く「Q」はとにかくわかりにくい。
まったく意味がわからない単語が次々と羅列され、登場人物はだれひとりとしていま何が起こっているのか説明しようとしない。主人公であるはずの碇シンジはひたすらな困惑のなかに取り残され戸惑うばかり。テレビシリーズや旧劇場版から付き合っている「古参」のつわものどもはともかく、「序」から入った新参のファンは当惑させられることだろう。
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