弱いなら弱いままで。
いま、緩やかに読み進めている『リテラリー・ゴシック・イン・ジャパン』に収録されていた「就眠儀式」が途方もなく素晴らしい吸血鬼ものの掌編であったので、須永朝彦の傑作選『天使』を手に取ってみることにしました。
二十編の掌編が収録された一冊で、いずれも美貌の吸血鬼や天使といったモティーフをもちいたいわゆる「耽美」な幻想文学なのですが、その完成度は異常に高い。
たった一冊の本が、どのようにしてその美の達成によって猥雑な現実世界と拮抗するのか、典型を見せられている想いがします。
もし一手を誤れば他愛ない冗談に堕ちかねない耽美と闇黒の世界を、本当にこの上なくうつくしい言葉で綿々と描き出しているのです。
いわゆるショートショートとは異なり、別段、物語として何が面白いというものでもないのですが、その昏い美の趣きの深さはくり返し読み返すに値すると感じました。三島由紀夫や中井英夫の跡を追う作家の一
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