弱いなら弱いままで。
いや無理無理無理、絶対に無理な展開なのですが、発想としては面白いなあ。無理だけれど。
ここまで徹底的に史実を無視して話を進めているので、どうするんだろうと思っていたんだが、こういうふうに持ってきたか。
ぼくはアイディアと意欲は買いますね。無理だけれど。
このまま行くと全三巻くらいで完結かな? これは少女漫画の異色作として歴史に名を刻むかもしれません。
いやー、しかし、何を考えてこういう漫画を描いたんだろう。完結後には作者にインタビューをしてほしいところです。
未読の方のために説明しておくと、『さよならソルシエ』は天才画商テオドルス・ファン・ゴッホとその兄で天才画家のヴィンセントの物語。
ともに超一流の才能を持ちながら、それが正反対の方向に発現した兄と弟の対立と対決の話――だと思っていたんだけれど、このオチには驚きましたね。
おそらく単行本になったあかつきには、賛否両論の激論がくりひろげられることでしょう。だって、ありえないもん。このアイディアは。
いや、本格ミステリか何かだったらそこまで荒唐無稽とは云えない着想かもしれないけれど、一応も二応も歴史ものですからね。
「実は――だったのだ!」って、怒るひとは怒ると思いますよ。ぼくは喜びますけれど。
物語冒頭からずーっと続いてきた違和感がここに結実するとは想像しませんでした。
少女漫画には『ベルサイユのばら』を初め、歴史ものの傑作と云われる作品がいくつかありますが、ここまでひとを食った作品はほかに例がないでしょう。
それはもう、無理、無茶、無謀と三拍子そろっている感じです。
あのゴッホに取材してこんな漫画を描くとは――やはりこのひと、ひと筋縄では行かない作家なのかもしれないですね。
穂積は短篇集『式の前日』で高い評価を受けてデビューした作家なのですが、初の長編でこうも冒険的な作品を物そうとは驚きです。
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