弱いなら弱いままで。
ダーク、アダルト、エロティック。大月悠祐子『彼女達の最終定理』の魅力にハマる。
『楽園』という雑誌があります。まあ、大人向けの恋愛漫画だけを集めた雑誌なのですが、そこで連載されていた大月悠祐子の「衝撃のピカレスクラブ」こと『彼女達の最終定理』全一巻を読みました。
良い。素晴らしい。ぼくはこういうものを読みたかったのだ!と思いますね。ま、ある種のエロ漫画なんですけれど、直接的な行為のシーンはほとんどありません。
ただ、どこまでも匂わせているだけ。ある少年と、美少女と、美女の間の不純で、みだらで、猥雑で、それでいてどこかピュアな関係を、どこまでもていねいに描いた作品です。
いや、ね。ぼくはこの大月さんという作家さんをずっと、ずーっと追いかけているのです。それはもう、彼女が連載を持つよりもっと前から。美少女ゲームのコミックアンソロジーでぽつぽつ漫画を描いていた頃からです。
その頃、彼女は「かなん」という名前で活動していたのですが、それはともかく、好きだったんだよー。彼女の描く漫画が。
おかげで、まったく興味がない『ファーストKiss物語』だの、『デ・ジ・キャラット』だののコミックアンソロジーを集めて、「ああ、この人、もっと有名になってもっとたくさん漫画を描かないかなあ」と願ったりしたものです。
じっさい、初連載の『Piaキャロットへようこそ!2』はそれはそれは素晴らしかった。いや、これもエロゲ原作なんですけれどね、はっきり云って原作の数十倍は面白い。
原作はいまはもうちょっとプレイに耐えないと思うんだけれど(そもそもWindows7じゃ起動できないかも)、漫画は名作です。ラブコメディのマスターピース!
また、大昔にちょっと話題になった『With You』というエロゲがあるのですが、そのなかに攻略不可能キャラの乃絵美という妹キャラクターがいました。
で、大月さんはその乃絵美ちゃんを主人公にして、禁断の恋の物語を描いたりするわけなのです。といっても、べつだん近親相姦とかそういうことではない。
ただ、彼女が兄を一方的に異性として愛しつづけ、そしてその兄は最後までまったく気づかず、気づいているのは何と乃絵美の恋人だけで、彼女はただ「この恋は一生隠しつづける」と誓うという、そういう話を描くのですね。
男性視点で描かれた物語が女性視点から再構築されているわけです。いやー、これはもう、一読してゾクゾクした。凄い才能だな、と思ったものです。
ところが、その後、初の長期連載となった『ギャラクシーエンジェル』とか読んでみると――何だろう、正直云って、それほど面白くない。
いや、面白くないわけではないのだけれど、「普通」なんですよね。そこまで飛び抜けて凄いとは感じられない。ぼくはそこでようやく悟りました。ああ、この人は本質的に短編作家なんだ、と。絶対に短いもののほうが出来がいい。少なくともぼくはそう感じる。
『彼女達の最終定理』は、その大月悠祐子がひさしぶりに描いた連作短編です。しかもエロエロ! 三角関係! これに萌えずに何に萌えるだろう。
一応、恋愛漫画という括りではありますが、ぼくはそれ以前の、一作の漫画としてのスマートさに惚れます。この人の
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