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田中芳樹の『アルスラーン戦記』がアニメ化するそうですね。より正確には田中芳樹の原作を荒川弘が漫画化した作品がアニメ化という流れなのだろうけれど、いやー、速かった。
どうせいつかはアニメ化するはずだと思っていたけれど、それにしても時期尚早じゃないか?と思わずにはいられない。何しろ漫画版はまだ単行本にして2巻しか原稿が溜まっていない。原作の1巻分をようやく消化したばかりなのです。
この状況でアニメ化を進めるとなると、確実にアニメが漫画を追い越すことになってしまうわけで、もうちょっと待ってからアニメにしても良かったんじゃないかなあ。まあ、待てなかったんだろうけれど。
いや、原作が既に14巻も溜まっているから問題ないといえばないんでしょうが――。『アルスラーン戦記』は田中芳樹の作品のなかでも代表作のひとつなので、大切にアニメ化してほしいものです。
『アルスラーン戦記』という物語の、少なくとも前半は田中芳樹の全盛期に書かれています。これがもう、ぼくの人生を変えたといってもいいくらい面白い。
ひとつには波瀾万丈のキャラクターエンターテインメントとしての面白さがあり、また、貴種流離譚をひねったプロットの独創性は類を見ないものです。
貴種流離譚とは、本来、高貴な血筋の人間が苦難に遭い、その末に元の地位を取り戻すという物語類型ですが、『アルスラーン戦記』はこれを逆転させているんですね。
具体的にどうやっているのかは本編を読んでいただきたいところですが、とにかくひと筋縄では行かない物語となっています。
そしてまた、この物語はぼくが最近良く取り上げる「王」のテーマの物語でもあります。どのような人物がマクロの為政者としてふさわしいか、というテーマですね。
このテーマを極北まで突き詰めると、ぼくがいうところの「生贄の王の類型」となり、世界を征服した悪の皇帝として命を散らしたルルーシュのようなキャラクターが出て来るのですが、アルスラーンはそこまでは行きません。
アルスラーンの物語はアーサー王伝説を下敷きにしているところがあって、より古典的なキャラクターといっていいでしょう。
かれはその資質により有能な部下たちを集め、統帥して行きます。最後には悲劇的展開が待ち受けていることは予告されていますが、物語はまだそこまで到達していません。
このアルスラーンというキャラクターのオリジナリティは、自分ひとりではほとんど何もできないという一点にあります。配下には天才的な剣士や軍師がわらわらといますが、本人は特に何の秀でた能力も持っていないのです。
それなら、アルスラーンの役割とは何なのか? それは
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