2010/06/06
9:36 pm
昨日、パルコ劇場で「吸血鬼」を観て来た。
とてもよかった。
茅野イサムさん渾身の代表作だろう。
こういう芝居を観ると人生に芝居は必要なんだと腑に落ちる。
人の生き方を深く考えさせる。
一瞬の連続で通り過ぎていく人間の人生、その一瞬のどこかに切り替えポイントがある。
一瞬の判断で人の一生が変化する。通り過ぎて初めて分かる切り替えポイント、では遅い。
この舞台では、時間は行きつ戻りつする。その時間に従って空間も変化する。
時間の不可逆性に逆らう舞台、そこに浮かび出てくるのは、
思い通りにはならなかった人生とあってほしい人生の交錯だ。
人生ははかない、寂しいと、暗い都会の孤独をたっぷり見せておいて、
そんなことないよ、みんな人生温かく生きてるよ、と茅野さんは言う。
去年の遅い結婚と長男の誕生で、
今、人生孤独でも寂しくもない茅野さんが放った最高の傑作ができた。
牧田哲也くんは非常に良かった。
お芝居になっていた、チンドン屋さんの軽さ、喫茶店のアルバイト、最後のテナーサックス吹き、
どれもよくその役になりきっていた。特にサックスほめてあげたい。
楽屋で会った瞬間、良かったよと言ったら、表情が崩れ、体全体がくにゃっとして、
ほんとですか、良かった、とほっとした顔になった。
マッキーがこんなにきちんと芝居できると思ってなかった、すごい成長だと思う、
とちょっと偉そうにほめたら、それでも嬉しそうに握手の手が出て来た。
サックス大変だったんじゃない、とそうなんです、大変でした、でも努力した成果出てるね、
特にラストシーン、きれいに流れるようなサックスの音でなく、
たどたどしいけど必死に吹いているサックスの音、
その音のぎこちなさが物語の終幕に重なって、狙い以上の劇的なやるせなさが出ていたよ、
と長めにほめたら、頭ショートしたみたいでついてきてくれなかった。
でもマッキー、君の努力、演技の質、素直にほめる、よかったよ。