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小飼弾の論弾 #28「ゲスト対談:行動遺伝学者 安藤寿康教授(その2):天才の家系を作ることもできる!?」
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小飼弾の論弾 #28「ゲスト対談:行動遺伝学者 安藤寿康教授(その2):天才の家系を作ることもできる!?」

2017-02-13 07:00

    「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。12月19日(月)に行われた、行動遺伝学者 安藤寿康教授との対談を4回に分けてお届けします。動画も合わせてぜひご覧ください。

    次回のニコ生配信は、2月20日(月)20:00。久しぶりの特集のテーマは、「生産性」。
    どうして日本の生産性は、先進国で最低なの? こんなに残業をしているのに、給料が上がらないのはなぜ? どうやったら残業なしに、仕事をこなせるの? など、プログラマの視点から、小飼弾が生産性の問題に切り込みます。
    参考図書はこちら。

    次回もお楽しみに!

    ■2016/12/19配信のハイライト(その2)

    • 教育が行き渡ると、遺伝的な差が顕在化する
    • 先生の教え方や学校のレベルは、学力に影響しない?
    • 交配によって天才を作ることは可能か?
    • IQが低いのはいけないことか?

    教育が行き渡ると、遺伝的な差が顕在化する

    安藤:小飼さんは、「ペケモコソ」っていうすごい技をご存知ですか?

    小飼:なんですか、それ?

    安藤:僕しか知らないんです。それ。僕が教えてあげないとその人は「ペケモコソ」できないわけですよ。ということは僕が教えたか教えてないかで、その環境の違いだけで、能力の差というのは明らかになる。

    小飼:出てきますね。

    安藤:そのペケモコソっていうのは、実はなんでもいいんですけどね。
     昔は、特定の家にだけ伝わっている家伝のなんちゃらを知っているかどうかで、武芸のなんちゃら流みたいなのが決まっていたかもしれない。ところが、学校教育のように、みんなに同じものを教えるようになってくると、教わったか教わらなかったかの差はまったくなくなってしまいます。元々の能力の差っていうのが出てくるようになっちゃった。

    小飼:なるほど。かえって顕在化したのだと。

    安藤:確かに才能を発見するために教育は必要なんですけど、才能が他の人と比べてないことも発見されちゃう。そういうプラットフォームを学校教育は作った。

    小飼:ただ、学校教育でも、3×6だとマルで、6×3だとバツだとか、そういう変なことがあります。

    安藤:そういう馬鹿馬鹿しいことはさっさとやめてもらいたいですね。

    小飼:教科書にそうやって教えなさいと書かれちゃったら、先生としては教えざるをえない。

    安藤:でも、明らかに馬鹿ですよ。それは。

    小飼:だから、良心的な先生ほどローカルに直すんですよね。これは、学校指導要領に書いてあるけど、まっとうな思想じゃないからと。実はそうやって考えていくと、優秀な教師ほどコピーしにくいということになりますよね?

    先生の教え方や学校のレベルは、学力に影響しない?

    山路:安藤先生は、教育がみんなに平等に与えられるようになったから、遺伝の差が顕在化するとおっしゃいました。じゃあ優秀な教師とそうでない教師、たとえば6×3の順番はどうでもいいと教えてくれる教師と順番は守れと教える教師とか、教師の教え方によって学力は変わってくるものなんじゃないんですか? そんな遺伝の差だけで学力の違いは説明できたりするものなんでしょうか?

    安藤:そのクラスにいるときは、いい先生だとか悪い先生の影響はあります。でもダメな先生に3年間教わったおかげで、一生数学ができない人間になるかというと、どうもそうではなさそうだ、と。
     別々のクラスに入った双子の研究があります。学力がどうやって決まるのかを調べてみると、遺伝が50%なんですよ。あと、家庭環境の影響っていうのが25~30%あるわけですよ。学校の先生の違いっていうのは2~3%にすぎません。
     もちろん、生徒にとってみればいい先生のほうが頼もしかったり、理解度が高まったりするので、その影響力は無視していいってものではありませんが。

    小飼:でも、合否のボーダーラインにいる時の2~3%の違いはむちゃくちゃ大きいこともあるじゃないですか?

    安藤:その合否が人生を変えるっていう可能性っていうのはないわけではありません。でも、どの先生につくかのかは偶然ですよね。偶然の要因っていうのは人生の中でかなり大きい。

    小飼:たとえば、オリンピックの400m水泳で1秒の差って言ったら、そもそもオリンピックに出られないか優勝できるくらいかの違いがありますからね。

    安藤:そうです。うん。でも凡人まで含めた全体の能力差で言ったら、1秒なんてのは誤差ですね。

    小飼:誤差になりますね、はい。そもそも泳げないという人だって少なくないわけですからね、はい。

    山路:じゃあ、あまり、そういう先生の教え方や、あるいは先生にかぎらず学校と言っちゃってもいいんですかねえ。いい学校、悪い学校みたいなもので、その人の学力というか、知能に与える影響というのはそんなに大きくないと考えていいという。

    安藤:全体としてみれば。これ、授業でこれ言うとみんな嫌な顔をする(笑)。たしかにちょっとでもうまい教え方ができればそれはいいかもしれない。だけど、それで人生を劇的に大きく変えるっていうことができるかっていうと、それ以外の分の方がずっと大きい。

    交配によって天才を作ることは可能か?

    山路:いま「天才をつくるにはどう交配したらいいか」というコメントが出ています。

    安藤:行動遺伝学の基本は、統計学であり、量的遺伝学、あるいは育種学です。たくさんお乳が取れるホルスタインをどうやって交配して作ったらいいかといった学問を応用しています。

    小飼:「家畜化した動物がおとなしい」ですが、これはもう遺伝です。

    安藤:はい、遺伝です。

    小飼:遺伝子なんて知らないころから、そういうふうに交配していました。

    安藤:そうです。

    山路:あらゆる才能・能力が遺伝するのなら、掛け合わせによって優秀な子を作ることも、できるってことになるんでしょうか?

    安藤:それは理論的にそうなると思います。
     
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