グラップリングイベント「QUINTET」で現役バリバリの柔術家相手に、フラフラになりながらも最後まで極めを許さなかったヤノタクこと矢野卓見。以前から称賛されてきたその神秘的な力は48歳のいまなお健在だったが、その源はなんなのか? 2015年に合気道をテーマに取材したインタビューを再録するので、「東洋の神秘」に触れてほしい。
【喧嘩芸骨法の実態がよくわかる骨法シリーズ】
http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar985100■骨法会員番号229番!漫画家・中川カ〜ルが見た「骨法変節の瞬間」
■ヤノタク×中川カ〜ル「俺たちが愛した喧嘩芸骨法」
■船木誠勝「俺は真剣勝負がやりたかったわけじゃないんです」
――つい先日『巌流島』というイベントに“合気の達人”を自称する60歳の方が出場されたんですが、試合では何もできずに負けてしまったんです。
矢野 その試合の記事はなんとなくは読みましたけど。
――矢野さんは以前「合気道の道場に通っても無駄。合気の習いたいなら俺が教えてあげますよ」とおっしゃってましたけど、本当に合気の達人は存在するのかを含めて聞かせてください。
矢野 合気の達人は実在しますよ。
――ホ、ホントですか! どこにいるんですか?
矢野 ……俺かなあ? ハハハハハハ!
――達人は目の前にいた!(笑)。
矢野 まあ俺が合気を身につけた経緯を含めて話をしますけど、まず合気にはどんなイメージがあります?
――自称“合気の達人”のデモンストレーションにもありましたが、わずかな力で相手を吹き飛ばしたりするイメージはありますよね。
矢野 一般的にはそうですよね。簡単に言うと、合気というのは、相手を投げ飛ばす技術ではないんですよ。そういうことを言ってる合気の人間がいたら、全部インチキですね。
――なるほど(笑)。
矢野 そういう人間はまず合気自体がわかっていない。合気がわかってないからそういうインチキなことを言う。
――ちょっと触れただけで相手が吹き飛んだり、痛がるのはインチキなんですか?
矢野 インチキというか、簡単に言えば、タネがありますよね。手品というには手品師の方に失礼なんですけど。
――たしかに手品師には失礼なクオリティなものが多いですね(笑)。
矢野 相手が吹き飛ぶとかやってるのはヤラセですよ。彼らが持ってる合気のイメージがそういうもので、それを弟子を使って再現して「私は合気の達人で〜〜す!」とか言ってるだけで。ああいうデモンストレーションをやってる時点で合気とは何かをわかってない。なんでインチキをやるかというと、合気ができないからやるわけですよね。そもそも合気の道場は世の中にたくさんありますけど、そこで合気は身につかないですから。
――すると、なんのためにの合気道道場なんですかね(笑)。
矢野 なぜ身につかないかというと、要は型稽古しかやらないじゃないですか。開祖が作った型をそのとおりに再現するだけ。たとえばですよ。“自転車に乗る型”があったとして、自転車にも乗らずにその型をやり続けて自転車が乗れます?
――難しいですね。
矢野 そういうことですよ。かたちを真似しただけで自転車には乗れない。自転車を乗るにはバランスを保つ実地訓練をしないといけないんです。結果的には乗れたかたちをトレースにしたところで自転車は乗れないんですよ。
――野球で素振りだけをやったところでボールは打てないようなもんですか。
矢野 この角度から来た球をこのタイミングで……という素振りは意味があるんです。素振りというのは実戦を想定するから意味があるんです。タイミングの練習、身体をどうスムーズに動かすかという。
――合気の型稽古も何か目的をやってれば意味があるということですか?
矢野 いやあ、合気の道場でやってる型は、それをやり続けたところで、あらゆるシチュエーションに対応できないというか、合気は身体をどう使うかなんで……。たとえばここにぶら下がってるサンドバック、力いっぱい押せば動きますよ。でも、地面を踏ん張る足の力を腕に伝えることで、無理に力を入れなくてもサンドバックは前にドーンと動くんです。これが合気です。
――要は正しい身体の使い方が“合気”というか。
矢野 そうです。それは皆さんも普段の生活で無意識にやってることでもあるんですよ。
――そこを意識化することが型稽古というわけですね。
矢野 そうです。自分の動きの中に意識的に合気を取り入れることで機能向上するというか。だから合気というのは攻撃にも使えるし、防御にも使える。
――矢野さんはどこで合気を習得したんですか?
矢野 もともと骨法にはその理論はあったんです。堀辺師範はその昔、どこかの合気道の道場に通っていたみたいなんで、骨法の弟子たちも合気を身につける鍛錬をしていたんです。ただ、身につくわけがないんですよ。さっきの話じゃないですけど、「自転車の乗り方はこうだ!」と説明されても、実際に自分の身体が「これかな?」って気づくかどうかが問題なんですから。
――矢野さんはどこで気付いたんですか?
矢野 簡単にいえば、寝技をやっていたら自然と身についたんですよね。
この続きと、安田忠夫最終回、朝日昇、天心訴訟、ベイダー、QUINTET、ザンディグ……などの記事がまとめて読める「11万字・記事21本の詰め合わせセット」はコチラ
この記事の続きだけをお読みになりたい方は下をクリック!