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多くのMMAファイターをマネジメントするシュウ・ヒラタ氏が北米MMAシーンを縦横無尽に語りまくるコーナーの特別編。今回のテーマは、ついにUFCと契約した魅津希選手について。16歳でプロデビュー後、MMAではDEEPジュエルス王座戴冠、立ち技ではGirls S-cup2連覇するなど輝かしい戦績を残し、18歳で女子MMA最大団体インヴィクタと契約。2018年の夏から練習拠点をニューヨークに移している。

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――シュウさんがマネジメントする魅津希選手がUFCと契約しましたが、デビュー戦は8月31日の中国・深セン大会と急ですね。

シュウ じつは8月17日のUFC241と、8月31日のUFN157で行われる女子フライ級に欠員が出たんですよ。マッチメーカーがもう2週間ほどフライ級の選手を探していて、ボクがマネジメントしていてUFCのストロー級で戦っているジャンジ・ローバーに「1試合だけでもいいから階級を上げてやってくれないか」というオファーもあって。でも、ジャンジは意味がないからやりたくないと。

――たしかに意味はないですよねぇ。

シュウ 多くの選手が断る中、ストロー級適性の魅津希ちゃんにもオファーがあったんですが、さすがに17日は間に合わない。でも31日ならオッケー。対戦相手が魅津希ちゃんとの試合を了承するかどうかだったんです。

――相手が合意したことで契約できることになった。17日しか空きがなかったら契約できなかった、というわけですね。

シュウ はい。いまのUFCはこういった緊急じゃないと契約できないケースが圧倒的に多いんですよ。よっぽどの選手じゃないかぎり、普通には契約はできない。

――UFCの登龍門企画「ダナ・ホワイト コンテンターズ」シリーズからの選手契約が優先されている。状況関係なくUFCが契約しそうな日本人は堀口恭司ぐらいかもしれないですね。

シュウ 本当にそのとおりです。もしくは堀口くんを倒した選手ですね。魅津希ちゃんには以前からオファーはあったんです。 いまから6年前、UFCが女子ストロー級を始めるときに世界最大の女子MMA団体インヴィクタのストロー級ファイターを移管したじゃないですか。あのときに唯一断ったのは魅津希ちゃんなんですよ。彼女は当時18歳だったんですけどね。

――それもまた凄い話ですね。

シュウ そのときは業界で話題になったんですよ。「なんで断るのか。負けてもやり直しがきく年齢じゃないか」と。 当時魅津希ちゃんが所属していた白心会の会長が「まだその時期じゃない」という理由だったんですけどね。いま魅津希ちゃんは24歳。この6年間で5回オファーがありましたから。

――そんなに!

シュウ そうなんです。日本大会の時も中井りん選手よりも先にオファーが来たんですけど、同じく会長が時期早尚ということでノー。そしてその次の日本大会のときも、朱理選手より先に魅津希ちゃんにオファーがあったんです。そのときはケガで1年以上試合してなかったのに、復帰戦をUFCでやればいいというオファーだったんですけど。ケガ明けだから、試合でちゃんと動けるか確認してからでないとダメという会長の考えだったんです。そのあとは、オファーが入ってもケガで受けられなかったというのが2回続いたいんです。

――それでいつのまにか6年も経ってしまった。

シュウ 魅津希ちゃんも思うところはあったと思いますよ。明らかに自分より格下の選手が次々にUFCと契約したり、互角だった選手がタイトルマッチをやったりして。弟(井上直樹)にも先を越されちゃったわけですからね。今回急なオファーを受けたのは、いまのUFCでこのチャンスを逃したら、またいつになるかわからない……という理由があるからだと思うんですけど。

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UFCの契約書にサインする魅津希

――今回はフライ級でやるとして、次回からはストロー級で試合はできるんですか?

シュウ 2試合目はストロー級で、という約束のもとUFCと契約しています。でも、ストローよりフライのほうが層は薄いんですよね。試合後に魅津希ちゃんとはもう1回話そうと思ってますが、正直フライ級でもランキングに入れる可能性はありますからね。このあいだフライ級のタイトルマッチに挑戦したジェシカ・アイともスパーリングをしたんですけども全然通用しましたし、ランキング3位のケイトリン・チョケイジアンと練習してても互角なので

―― フライ級で地位を築くのも悪くないっていうことですね。

シュウ  はい。ストロー級に落とすときはタイミングを見てもいいかもしれないですね。

――こないだのインヴィクタの1dayトーナメントを計量失敗で欠場したときは、しばらくチャンスは巡ってこないのかと思ってましたが……。

シュウ あのトーナメントのときはもう大説教したんですよ(苦笑)。 「UFCは当分ないぞ」と。しがみついて頑張っていれば、人生何が起こるかわからないですよね。

――じつはもうひとり日本人ファイターにオファーがあったそうですが、あまりに急なオファーだったこともあったのか断ったそうですね。

シュウ そうみたいですね。

――日本やアジアでそれなりに地盤がある選手、もしくは築けそうな選手は、UFCの緊急オファーに無理に契約する必要がないってことなのかなと。ボクもその選手の立場だったら断るかもしれません。

シュウ 北米やヨーロッパに生活圏があるファイターからすれば、UFCに上がるメリットは大きいですが、まだまだUFCは日本で知られてないですからね。魅津希ちゃんはニューヨークに住んでいますから、 彼女にはUFCしか見えないんですよ。アメリカのテレビ(無料ケーブルか配信サービス)で見れるのはUFCとベラトールとPFLだけですからね。

――魅津希選手はUFCを目指してニューヨークに移住したわけですもんね。

シュウ 同じ大会でジェシカ・アンドラージがストロー級のタイトルマッチをやりますが、早めに現地入りするんですよ。 なぜかというとUFCからの要請で上海のUFCパフォーマンス・インスティチュートで練習をするんですけど、魅津希ちゃんも2〜3日早めに入ってジェシカと調整する予定になってます。対戦相手のフライウー・ヤナンは長身でサイドキックとか散打系の動きをする厄介な相手ではあるんですけど、グラップリングでは全然魅津希ちゃんのほうが上ですからね。契約という第一関門は突破したので次は勝つだけです。 

――楽しみにしています!