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開催が迫るRIZINライト級GP、その主人公のひとりとして目されているのが日系ブラジル人柔術家ホベルト・サトシ・ソウザだ。「柔術ぼんやり層」でもそのヤバさは耳にしたことがあるだろう。いったい彼の何が凄いのか? なぜ「日本代表」として誇らしいのか。ブラジリアン柔術黒帯にして柔術専門ライターの橋本欽也氏に熱く語ってもらった。



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【橋本欽也氏がソウザ兄弟にインタビューした動画はコチラです!】
https://www.youtube.com/watch?v=28XD6qXPids&t=867s



――
RIZINでサトシ・ソウザがブレイク寸前なんですが「柔術ぼんやり層」なので何が凄いのかよくわかってないんですよ。そこでアジア・ナンバーワン柔術ライターと言われる欽也さんにお話を聞きたいなと。

欽也 簡単に言うとね、「日本柔術界の最高傑作」がサトシなんだよっ!

――
「日本柔術界の最高傑作」!

欽也
 うん。だから本当は“そっち”に行ってほしくなかったんだよなあ。柔術をやってる側からすれば、ダミアン・マイアやビビアーノ・フェルナンデスとか柔術でどんなに実績を残していても、彼らのMMAにはまるで興味がないの。

――
それは欽也さんだけじゃなくて?

欽也
 ないったらないよ! みんな間違いなくないと思うよ。

――じゃあ、そういうことにしておきましょう(笑)。

欽也
 かつての日本には柔術のスターがいっぱいいたじゃないですか。ノゲイラとか。でも、いまのMMAってテイクダウンしてパウンドして……だからやっぱり柔術家としてはつまんないんだよね(笑)。でも、クロン・グレイシーとサトシは別で、この2人のMMAは気になっちゃう。日本柔術界にとってサトシはそれほどスペシャルな存在なんですよ。

――
クロンはグレイシー直系、あのヒクソンの息子……だから特別な存在であることはわかります。サトシはRIZINでまだ寝技で勝ったことがないので本領発揮はしてないとも言えますよね。

欽也
 ああ、RIZINでは2試合とも打撃で倒したわけだもんね。誤解される言い方になっちゃうけど、サトシってまだMMAを本気でやってないんですよ。柔術ライフの中で「一度はMMA をやっとかないとね」というノリなんですよ。もともと柔術大好きの山田(重孝)さんがサトシにMMAをやらせたんだけど。

――
REALですね。山田さんはクロン・グレイシーも口説き落としてMMAビューさせて。

欽也
 山田さんは大枚を叩いたんですよ。じゃなかったらサトシもクロンもMMAをやってないんじゃないかな。他のファイターよりギャラが全然違っただろうし、ちゃんと見合った相手をぶつけて育てていったわけですよ。

――
一流のグラップラーのMMA転向でいえば、ONEのゲイリー・トノンもメチャクチャ成長してますね。

欽也
 そんなに強いの?

――
強くなってますねぇ。北米のレスラータイプが相手になったらまだわからないですけど。

欽也
 ゲーリーって足関が得意じゃないですか。 柔術でも足関で勝つと「足関かよ……」って卑下されるところがあるんですよ。

――
へえ、邪道扱いされるんですね。

欽也
 結局足関ってパスにいかないでできる技でしょ。もちろん足関に技術論はありますけど、そういう風潮はいまだ根強く残っていて。ゲイリーは足関に特化した柔術家。もちろんバックチョークもできるけど、足関がクローズアップされてるから。一発はあるけどポジショニングで抑えられたら厳しい。

――
だからなのか、そこまでレベルが高くない相手にMMAで寝技に持ち込んでも逃しちゃうケースが多かったんですかね。

欽也
 足関が強い人たちは総じてパスがそこまで強くない。パスができないから足関というのはプランBじゃないですか。それで極められるならいいけど、極められなかったら負けるパターンの足関タイプはけっこう多いでしょ。

――
一発がハマると強いけど……っていう。

欽也
 ゲイリー・トノンは柔術家だけど、「柔術柔術」はしてないですよね。でも、サトシは「柔術柔術」している。

――
サトシは「柔術柔術した柔術家」なんですよね。舌を噛みそうになっちゃいましたけど(笑)。

欽也
 サトシは日本をベースにした柔術家の中ではトップ中のトップ、スーパートップですよ。以前ヒクソンの話をしたときにも言ったけど、ブラジル人の柔術家たちが「俺が一番だ」「いや、俺のほうが強い」と言い争っても、ヒクソンの名前が出ると「ああ、ヒクソンは別だから」って口を揃えるんですよ。

――
ヒクソンはそれくらい別格。

欽也
 サトシは日本でそういう存在なんです。みんな「俺が強い!」って言うけど「サトシは別として」。 そんな存在が日本という国で育ったんですよ。

――
サトシの生まれはブラジルなんですよね。

欽也
 日系ブラジル人。お父さんがブラジル人のアジウソン・ソウザ といってボンサイ柔術の創始者で、奥さんが日本人。長男はマウリシオ・ソウザ、次男がマルキーニョス(RIZIN.19で中村K太郎と対戦)、三男がサトシ、長女でマルキーニョスの妹でサトシの姉に当たるクリスチアーニ、その下にムリーロという弟がいて全員柔術兄弟。グレイシーファミリーと一緒で物心ついたときから柔術をやるのがあたりまえの環境で。

――
それがまたどうして日本に来たんですか。

欽也
 長男のマウリシオがまず出稼ぎで来日したんですよ。浜松の工場の出稼ぎブラジル人だったんです。サトシの家はそこまで裕福じゃなくてね、俺は一度ブラジルのサトシの家に行ったことがあるんですけど、それがお父さんが自分の手で作った家なんですよ。

――
だから日本に出稼ぎに。

欽也
 お父さんは自分たちより貧しい人たちがいるってことで、貧しい子たちに柔術を教えてあげたりしてて。そうやって地域貢献をしてるから裕福じゃなくても、彼らには品があるんですよね。ブラジル人特有のガツガツしたところはあるのかもしれないけど、俺に限っていえばそういう姿は見たことない。シュレック(関根秀樹)さんは元警察官で浜松の不良外国人の相手をしてたじゃないですか。ブラジル人のイメージはよくなかったんだけど、ソウザ兄弟が始めたボンサイ柔術に通うようになってから、ブラジル人のイメージが全然変わったと言ってたくらいだから。

――
シュレックさんが柔術道場に通ったのは、警官としてブラジル人ネットワークを探りにいったところもあったみたいですもんね。

欽也
 兄貴たちの後を追うかたちでサトシも来日して。ブラジルの高校を出てなくて17歳のときかな。 マウリシオは父ちゃんから柔術黒帯をもらってて、日本でもボンサイ柔術を立ち上げていたんですよ。ボンサイ柔術は世界中にあるんですけど、マウリシオは長男だから直系の道場ではあるんですよね。

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