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東京オリンピックを騒がせた小山田圭吾とイジメ告白記事! その問題を巡って原稿チェックのあり方が議論になっているが、原稿チェックといえば、やっぱり『紙のプロレス』に掲載された菊田早苗インタビューだろうということで、編集担当だった松澤チョロさんに話を伺いました。無駄話が多すぎて18000字!(聞き手/ジャン斉藤)

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――
小山田圭吾と東京オリンピックの件で原稿チェックのあり方が話題になってましたけど。原稿チェックといえば、松澤さんが担当して『紙のプロレス』に掲載され物議を醸した菊田早苗インタビューだろうなと。

松澤 あー、そういうことか。たしかに小山田さんの謝罪文が出たときに、ある出版社の知り合いから「これってチョロさんと菊田さんっぽくないですか?」って連絡があって。

――
簡単に説明すると、プロレスは真剣勝負ではなくファンを裏切ってるということで、菊田さんが「天コジはろくな死に方しない」と発言したことが大きな波紋を巻き起こしたんですが、後日になって菊田さんは実際には言っていないと。小山田さんと同じく編集側に勝手にやられたという主張をしてますね。

松澤
 そう、最初はそうだった。小山田さんのイジメ告白記事が載った『クイック・ジャパン』の件でいえば、自分たちの先輩の吉田(豪)さんは当時の空気感に詳しいんで的確なこと言ってると思うんだけど。

――吉田さんはこの件について立体的に解説してましたね。

松澤
 それでも吉田さんに「おまえが言うな」みたいに突っ込む人がいるのは、吉田さんがそういうことをやっていた側の『紙プロ』の人間だったからで、 『紙プロ』も鬼畜系雑誌の部類に入るだろうと。

――あら、そういう指摘があるんですね。

松澤 そこは短絡的に結びつける人もある程度いるね。「『紙プロ』も読者プレゼントで冬木弘道のおしっこをプレゼントしただろ?」とか言ってる人もいたし(笑)。 

――懐かしすぎる(笑)。あれは本当にプレゼントしたわけじゃないですよね。

松澤 まあ当時の新生FMWのカラーに合わせたネタっちゃー、ネタなんだけど。

――
そのときボクはまだ『紙プロ』に入ってなかったんですけど、『紙プロ』と一口に言っても、小さい判型の頃の『紙のプロレス』時代はミニコミ誌的で、判型の大きくなった『紙のプロレスRADICAL』時代は業界に片足を踏み入れて、そしてより業界紙となり名称を変えた『Kamipro』時代と分かれるじゃないですか。歴代編集長は山口日昇さんとボクなんですけど、責任の所在が明らかになっていない時期もあって。

松澤
 知ってる人は知ってるだろうけど、会長は編集長だった時期も、ほとんど現場にいなかったからね。

――
そのへんの話を吉田さんの『書評の星座』単行本発刊記念で配信された『紙プロ』 同窓会でいろいろと話したいと思ってたんですよ。でも、松澤さんが泥酔しちゃって、あちこちに絡み始めて。

松澤
 あー、その件に関しては本当に申し訳ございませんと言うしかないです。久々にみんな集まったから嬉しくて飲み過ぎてよくない方向に暴走してしまったというか。いろいろご迷惑をおかけしました!

――
面白かったからいいですけど!

松澤
    途中から記憶なくて、最後の挨拶でハッと意識が戻ったんだけど、吉田さん見たら明らかに不機嫌そうな顔してたんで、マジで生きた心地がしなかった。ジャン斉藤の話に期待してたDropkickファンにも申し訳ないというか。……あれ、今日はなんの話なんだっけ?

――いまも酔っ払ってるんですか? (笑)。小山田問題と『紙プロ』みたいな、ざっくりとしたテーマで。

松澤
    でもたしかに『紙プロ』というだけで、こっちは関係ないのに責任を背負わされることはちょくちょくあったよなあ。『Rintama』ってあったでしょ。当時流行ってた『リングの魂』の雑誌版みたいな。俺は時期的に『Rintama』にはまったく関わってないんだけど。

――小さい頃の『紙プロ』とRADICALのあいだに出していたムックですね。

松澤 そこにゆでたまご先生の『ハダカーン ~パンクラチオンの星~』というマンガが掲載されてたんだけど、その生原稿を編集部の誰かがなくして。俺はキャラ的になくしそうだから、あるとき嶋田隆司先生に会ったら「チョロ、おまえがなくしたんだろ!?」みたいに弄られたことがあって。

――
ボクも『Rintama』には一切関わってないんですけど。ゆでたまご先生の自伝でもその件が触れらていて、その自伝の版元の人間から「原稿をなくすなんて、本当にどうしようもない」みたいに言われたことがあって「こっちは無関係なのに!」って憤慨した記憶がありますね。

松澤
 なくしたのは、当時関わってた、のものもなのか、中村カタブツ君なのかはいまだにわからないけど。

――
のものも姉さんで思い出しましたけど、『紙プロ』同窓会で松澤さんが「ジャン斉藤のような性格の悪い男が再婚できたなんて信じられない」という話を繰り返して「みんなが知ってる人と結婚した」みたいな話をしたから、コメント欄で、のものも姉さんと結婚したことになってて。会ったことすらないんですけど。

松澤
 え、そんなこと言ってたんだ!?   我ながら酷い。のものもさんと言えばアレク(サンダー大塚)と離婚してるからそう思った人もいるのか。のものもとは会ったことすらない?

――ですね。だから『紙プロ』とはいっても時代によって関わってる人すら違う……んですけど、松澤さんの菊田早苗インタビューの影響で『紙プロ』は原稿チェックをしないで勝手に書く雑誌、というイメージは付いてましたよね。

松澤
 俺のせいで悪いイメージが……。まあ会長はそこまで管理する人ではなかったから、吉田さんがスーパーバイザーとしてみんなの原稿をチェックしていたというか。これは「面白くないからやり直し」みたいにワンクッションはあったよね。

――
吉田さんはRADICAL時代はもうフリーでしたけど、編集部に席があって。「書評の星座」とロングインタビューの仕事が3万円の家賃代わりだったみたいですね。

松澤
 他にも座談会に出たりとか、それ以上仕事をしてもらってましたね。

――その中に「こうしたほうが面白くなる」というチェックもあった。吉田さんの手が空いたときに各デスクに置いてある校正紙を読み出して……あれは緊張しましたね。

松澤
    なんなら見せたくなかったときもあった(苦笑)。

――
松澤さんはあからさまに吉田さんに見られるの嫌がってましたよ(笑)。締め切りとっくに過ぎてて時間がないのに、いまさら書き直せるわけがないみたいな。

松澤
 そうそう。「え、この段階で直さなきゃいけないの?」って。でも、吉田さんもほぼ無償でスーパーバイズしてくれてるし、その指摘に間違いはないし、内容的に指摘されてもしょうがないところはあるから。ただ、吉田さんもすべての原稿を見てるわけじゃないし、そこをくぐり抜けて問題が起きた原稿もあるんだけど。 小山田さんの件みたいに確信犯的なものはなかったんじゃないかなと思う。 ただ、「絶対にありませんでした!」と強く言える立場でもないかもしれない(笑)。

――
確信犯ではないけど、振り返ればお叱りを受ける原稿はたくさんあったという。

松澤
 まあ、それこそ『紙プロ』は編集者弄りはけっこうしてたから。読者の評判が悪かったら「これはやめた方がいいかな」って幸田珍みたいにフェードアウトさせるとかよくあったし。

――
幸田珍って、もう誰も知らないですよ! ボクも会ったことないですし。 

松澤
 俺は菊田さんの原稿の前に、『紙プロ』に入って早々に原稿チェックでやらかしてるからね。初インタビューで二瓶組の女子マネージャーを取材したんだけど、プライベートな話を赤裸々になんでも喋ってくれて。 「こんな話は『週プロ』や『週刊ゴング』では聞けない!!」って興奮して、最悪削られたらアルファベットにしようとか自分なりに考えて。まずはそのまんまの原稿を二瓶組長に見せたらすごく怒られて。「こんなものを出したら業界の先輩に迷惑だろうが!」と。

――
それは二瓶組長が正しいですね(笑)。

松澤
 それで「編集長を出せ!」ってことで電話越しで山口日昇vs二瓶組長が勃発したという。会長は会長で「二瓶組長って誰だよ!?」っていうスタンスだから、お互いに引けなくて……まあ悪いのは俺なんだけど(笑)。

――
実際にアウトな原稿はありましたよね。山口さんが座談会で当時の『週プロ』佐藤編集長のプライベートに触れたことがあって。山口さん、吉田さん、堀江(ガンツ)さんが出席者で全員の原稿チェックではスルー。新人時代のボクが担当だったんですけど、そのまま載せたら大問題になって。堀江さんに連れられて『週プロ』編集部まで謝りに行ったんですけど、佐藤さんからめちゃくちゃ睨まれて。

松澤
  それ、めっちゃ面白いじゃん。菓子折り事件的な(笑)。

――
紙面で謝罪文も出したんですけど、悪ふざけされないように事前にチェックされた記憶も。

松澤
 ああ、前に何かの謝罪文を出したときにメチャクチャ相手をバカにしたからかなあ。

――似たような件では、また座談会で山口さんや吉田さん、堀江さんがミルコ・クロコップ戦の高田延彦を批判したら、高田道場が超激怒して。そのときも新人のボクが担当という名ばかりの役割で、山口さんから「なんでこんな原稿を載せたんだ!?」って怒られたんですけど、山口さんも事前にチェックしてるんですよって話で(笑)。

松澤 酷い!(笑)。あれ、それが原因で会長とジャン斉藤がつかみ合いになったんだっけ?

――
それはボクが入社した早々、本当にくだらない理由でケンカになりかけたんですよ。クビにならなかったのは人手不足だったからで、山口さん関係のインタビュー原稿や座談会はボクがずっと担当だったんですけど。

松澤
  会長はしょっちゅう行方不明になるから原稿チェックできなかったこともあったりヒヤヒヤしたんじゃないの。

――
なんだかんだチェックはするんですよ。とくに座談会は吉田さんが危険な手直しをしてくるから。当時の山口さんは榊原(信行)さんのブレーンだったからPRIDE方面を刺激したくない。でも、当時の吉田さんはギラギラしてるからPRIDEを刺激したくなるようなことを言いたいという。当時の2人の原稿チェックのやり取りは緊張感ありましたよ……。

松澤
 担当じゃなくてホントよかった。当時『紙プロ』がPRIDE寄りになりつつあったから、吉田さんのスイッチが余計に入ってたときで。

――吉田さんの「書評の星座」もボクが担当だったというか、なんの権限もない担当なんですけど。向井亜紀本の書評は読んだ瞬間、絶対に問題になると思ってましたよ。でも、こっちはどうしようもできない。

松澤
 あったなぁ。吉田さんの原稿はすごい緊張するよね。 吉田さんの原稿だから自分たちは当然変えられないんだけど、会長的には手は入れてほしいってのはあるだろうし。吉田さんが言ってたけど、上品なサブカルと下品なサブカルでいえば、どちらかというと『紙プロ』は下品寄りで。当時で言ったら『クイック・ジャパン』というよりは『スーパー写真塾』的な。

――
そのたとえ、『スーパー写真塾』の説明から必要ですよ(笑)。

松澤
 俺は『クイック・ジャパン』の熱心な読者でもなかったし、どちらかっていえば『紙プロ』にいて、いま新日本プロレスにいるマッシー(真下義之)なんか完全にそっち側じゃない?

――まあ、たしかに真下さんは上品なサブカルっぽいですね。

松澤
 結果的に下品寄りな雑誌で働いてたけど、マッシーは世界の村上隆の弟子だからね。

――
話題になってる当時の『クイック・ジャパン』編集者の村上さんより遥かに知名度は上ですからね(笑)。

松澤
    マッシーはいま新日本でそれなりのポジションにいるみたいだから、もしかしたら今回の騒動がなければ新日本のドーム大会とかで小山田圭吾をブッキングしてる可能性もあったかもしれない(笑)。

――
どんな世界線ですか(笑)。堀江ガンツさんはサブカルではないですよね。

松澤
    そうね。スモーノブさんは本人的にはサブカルじゃないって言うかもだけど、外から見たらサブカルになるかもしれない。自分も 『紙プロ』のサブカル感を作ったのはスモーノブさんだと思うし。実際サブカルっぽいライターを誌面に引っ張ってくるのはスモーノブさんが多くて、俺はお下がりじゃないけど、そういう方々を担当させていただいて。

――
椎名基樹さん、せきしろさん、杉作J太郎さんとか。

松澤
 あと掟ポルシェさんとかも。読者時代から『紙プロ』のコラムは面白くて。あの頃は『テレビブロス』のコラム陣も好きだったけど、『紙プロ』のほうが全然好きで。 俺が思うサブカルな人が集まってたのも『紙プロ』の魅力だった。で、会長は糸井重里、椎名誠方面じゃないですか。

――
小さい判型の『紙プロ』は糸井重里カラーでしたね。

松澤
 で、その中でも花くまゆうさく先生のマンガやコラムが大好きで。花くま先生の影響をモロに受けて、当時知る人ぞ知る的な存在で、あまりメディアには取り上げられてなかった菊田早苗や郷野聡寛を取材をしてみようと。

――
「花くま先生の影響」をわかりやすく解説すると、もともとプロレスファンだったけど、実力主義の格闘技的な見地からプロレス幻想を見極めていくっていうことですね。

松澤
 『紙プロ』は一応プロレス雑誌だけど、『週刊プロレス』や『週刊ゴング』ではやらないようなプロレス企画をやれるのがカッコいいみたいに思って。単純だけど(笑)。

――
 それで原稿チェックの話題になると必ず例の一つとして挙がるのは、その菊田インタビューですよね。

松澤
  いまさら、どっちが悪いかとか言いたくないし……菊田さんはYouTubeなんかで「紙プロにやられた」みたいなこと言ってるんだよなぁ。だからってこっちは菊田さんのことを貶めてやろうというつもりで取材したわけじゃないし、むしろ応援したい気持ちで取り上げたんで、そこはぶっちゃけ悲しい気持ちもあって。ただ本人からすれば、ああいう批判を受けたら、いろいろと言いたくなる気持ちはわからないでもない。

――
あのインタビューで菊田早苗幻想が高まったし、内容もかなり面白かったんですけどね。

松澤
 実際「面白かった」という声もたくさんあったし。ただ菊田さんは「天コジはろくな死に方しない」発言でいろんな方面から批判されたのは間違いないだろうし、実際PRIDE出たときのブーイングも凄かったし、そこはホントに申し訳ないというか。

――
当時のネットっていまみたいな炎上はしないですし、『紙プロ』もそんなに部数も出てないのに、相当反響があったってことですよね。

松澤 そう。で、その数ヵ月後に『ゴング格闘技』で菊田さんが「言ってないことを載せられた」と主張して「えっ?」ってなって。

――
それまで菊田さんから抗議はなかったんですか?

松澤
 「チョロさん、これは酷いですよ」みたいな連絡も特になかったし。だから『ゴング格闘技』を読んでビックリしたし動揺もしたよ。 あれからだいぶ時間も経ってるから何が正しいのかってのは確認しようがないんだけど「あれ、俺が一方的に悪いんだっけ?」みたいな。この件に関する菊田さんの主張もいろいろと変わってるわけで。

――BUBKAでやった吉田さんの菊田さんインタビューだと、原稿チェック後に「2つの文をガガッとくっつけちゃって『天山、小島はろくな死に方はしない』って書いちゃったの」と。

松澤 くっつけちゃったってのは、俺のダメなところで文字量がオーバーして……。

――はみ出した文量を削って収める松澤さんお得意の! 7000字指定なのに15000字流し込んで、デザイナーに怒られるってやつですね(笑)。

松澤     いやいや、さすがに2倍とかはないけど、まあ得意技ではあった(笑)。

――吉田さんの菊田さんインタビューだと、菊田さんはゲラチェックはあったと証言してますね。

松澤 以前はなんなら「原稿チェックもしていない」みたいな発言もしてて。あのとき原稿チェックは確実にやってて。代々木にあった『紙プロ』編集部の近くのモスバーガーだったかな。当時の菊田さんは長めのインタビュー取材は初めてだったからか、2~3時間かけて一緒にチェックしたんだよ。

――
2~3時間って相当ですよ(笑)。

松澤
    で、菊田さんは読んでみて怖気づいたんだろうね。「ちょっとこれは言い過ぎじゃないかなぁ」と。

――現場ではしゃべるけど、活字化すると二の足を踏む人っていますよね。

松澤 一番の問題になっている「天山小島はろくな死に方はしない」。これはインタビュー中、菊田さんは実際に言ってない。あの記事は武藤敬司vsペドロ・オタービオのわりと直後というか、ああいうインチキプロレス的な試合をやられるのは格闘家的に許せないという主張で。

――
まあ、武藤vsオタービオは、なんちゃって総合格闘技の最たる酷い試合でしたからねぇ。

松澤
 それで「武藤・蝶野はろくな死に方はしない」と言ったんだけど。当時のプロレス界の象徴的な存在に噛みつくのは問題ないんじゃないのかなって、駆け出し編集者なりに思って。

――
いや、「ろくな死に方はしない」は問題ありますよ!(笑)。

松澤
 菊田さんも原稿チェックの段階で「これはちょっと……」と渋った。その頃は表になってないけど菊田さんは新日本の練習生だった過去があって、さすがに先輩にそんなことは言えないと。でも、 俺は『紙プロ』の編集者になったばかりで『紙プロ』っぽいことをやらなきゃいけないって思いが強くて。

――
いわゆる“爪痕”を残したいってやつですね。

松澤
 うん。そこで「天コジだったら、ファンがあまりよく思ってないからいいじゃないですかね」と提案して。花くま先生的な文脈で弄りやすいというか。

――当時のプロレス界のムードでいえば、弄ってオッケーじゃないかと。

松澤
 菊田さんも「彼らは知らない仲じゃないから、わかってくれるんじゃないか」ってことで。まあ、こっちからすれば『紙プロ』だったらアリなんじゃねみたいなノリだよね。 ホントに酷い言葉なんだけど。

――これ、面白いのは菊田さんが“言ってない”のは事実なんですよね。原稿チェックで武藤・蝶野から天山・小島に修正しただけで。

松澤 そこは共犯関係の修正ってことだよね。ただ、言っときたいのは「ろくな死に方しない」というパンチの効きすぎたフレーズは自分が作ったわけではない(笑)。

――パンチが効きすぎて、共犯関係を崩さざるをえなかったと。

松澤
 当時は「あれ、じつは武藤や蝶野に対して言ってました」と明かすわけにもいかないし。

――
「新日本プロレスやプロレスラーは本当に強いのか」っていう風潮が加速させたと思うんですよ。だから「ろくな死に方」って言葉自体は、極端なことをいえばどうでもよくて、インタビュー自体が尖ってましたから。いま読み直すと「ろくな死に方」以上にヤバイことを菊田さんは言ってます(笑)。

松澤
 久々に読み返してみたら、ほかにもヤバい発言あるよね。まあでも「八百長は絶対に許さない」という佐藤ルミナ的な立場から「よくぞ言ってくれた!」っていう声も菊田さんのところには届いたと思うんだけど、いわゆる当時の天コジ好きなファンからすれば「ふざけんなよ」と。そういう声に菊田さんは耐えられなかったのかなと。

――
怒っていたのは天コジファンじゃなくて、U系ファンだったと思うんですよね。「プロレスラーは本当は強くあってほしいとは思ってるし、当時のプロレスに不満はあるけど、格闘技側から偉そうにつべこべ言われたくない」という。菊田さんも皮をめくると、じつはプロレス側だったんですが……

松澤 桜庭和志に熱狂していたファン層だよね。サクは結果的にプロレスファンをうまく取り込んだもんなあ。

――そこで菊田さんがプロレスファンを味方につけられていたら……結論的には松澤さんも菊田さんも“若かった”という。

松澤 そうだよねぇ。実際『紙プロ』入り立てだったし、いろいろと配慮が足りなすぎたのは間違いないんで、そこは反省してるし、菊田さんにも申し訳ないと思ってます。ただ、あの件がひとつの契機となって、のちにPRIDEでやった菊田早苗vsアレクサンダー大塚が盛り上がったのは事実としてあるよね。

――菊田さんがPRIDEが提示した数人の候補の中からアレクを対戦相手に指名して。そうしたら当時PRIDEのブレーンだった山口さんが「菊田よ、プロレスラーを舐めるな!」という構図を作って煽って。

松澤 マッチポンプにもほどがあるよ(笑)。

――
酷い話だし、菊田vsアレクは歴史に残る泥試合になって誰も得することなかったわけですけど(笑)。あの試合直後、松澤さんは菊田さんと新横浜駅でバッタリ会ったんですよね。<18000字インタビューはまだまだ続く>
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