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MMA6戦目でRIZIN女子スーパーアトム級王者となった伊澤星花インタビューです!(聞き手/松下ミワ)

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――
RIZIN.35の浜崎朱加戦はめちゃくちゃ面白い試合でした! しかも、試合後の大号泣も非常に印象的で。

伊澤
 ……ああ、そうですよねえ(苦笑)。

――
さらに、マイクをよくよく聞いていると、なぜか悔しくて泣いているという。

伊澤
 3ラウンド終わったときに本当に悔しいと思って。もともと判定で勝つつもりではいたんですけど、3ラウンド目でちょっと気持ちが折れちゃったのが悔しくて。横田(一則・K-Clann主宰)さんに「泣くな」と言われて我慢しようと思ったら、よけいに涙が出てきちゃいました。

――
まさか反省の涙と思わなかったから、会場もちょっとビックリしていたというか。

伊澤
 いやあ、そのときはもう自分に必死だったので、よくわからなかったです。

――
でも、それぐらい自分の中で納得いかない部分があったということなんですか?

伊澤
 1、2ラウンドはちゃんとやりたいことができてたんですけど、3ラウンド目で一回、自分が下になっちゃったときに、そこで妥協しちゃって。下の場面が長くなって「うわ、いま私、めっちゃつまんない試合してるよ」と思っちゃって。

――
え……? 観ていた側としては、1、2ラウンドは伊澤選手が押していたので、3ラウンド目に浜崎選手があの腕を取る体勢に入ったときは、凄く緊張感があって「つまんない」なんて1ミリも思いませんでした。

伊澤
 ホントですか? 腕十字に入る前の体勢で動きが止まっていたじゃないですか。だから「これ面白いのかなあ。でも展開するのも疲れたなあ」と。そこでずっと休んでたんですけど「やばい、何してるんだろう?」と我に返って。でも、抜けようとすると少なからずリスクもあるので「5分間このままの体勢でもいいかな……」という気持ちも湧いてきたり。

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――そもそも、あの体勢に入られたのは何か要因があるんでしょうか?

伊澤
 テイクダウンに入られたときに、すぐ動いてリカバリーしていけばよかったんですけど、3ラウンド目だから疲れもあって動くのをやめちゃって。どんどん浜崎さんの得意なポジションに進められちゃって、動くのがしんどいところまできてしまったという感じです。

――
1、2ラウンド伊澤選手が押してたことによって、3ラウンド目に浜崎選手が絶対に何か仕掛けてくるなという感覚はありました?

伊澤
 それは絶対来るなとは思ってたんですけど、ちょっとそこで引いちゃった部分が……だから、そこが本当に悔しくて。自分に甘さがあったなと思いました。

――
しかし、腕を伸ばされそうになったシーンでも、一気に形勢逆転して。あの逃れ方は本当に凄かったです!

伊澤
 さすがにずっと下になってるのはヤバいなと思ったので、クラッチしていた手を一回伸ばして逃げるという動きをつくって。だから「展開をつくらなきゃ!」という一心ですよね。

――……ちょっと待ってください。ということは、自分からクラッチを外したということですか?

伊澤 そうです(アッサリ)。

――
えええええ! そうだったんですか!

伊澤
 だって、ずっと組んでると5分間その体勢で終わっちゃうじゃないですか。で、やっぱり手を伸ばすのって、その後の展開次第では極められたりもするので。リスクがあるからやりたくはなかったんですけど、でも、やらないとしょうがないし。

――そこで勝負に出た、と。

伊澤
 はい。そしたら、会場が沸いたから「あ、動いてよかった!」と思いました。

――
一瞬「5分間ずっと同じ体勢でもいいか」と頭によぎったという話でしたが、それでも伊澤選手はそれをよしとしなかったということなんですね。

伊澤
 そうです。あれで終わってたら、お客さんは面白くないから。

――
というか、あんなピンチの状態でも、会場が沸いているかどうかずっと気にして戦っているんですか。

伊澤 まあ、それも人によると思うんですけど、自分は歓声が凄くうれしいんですよ。自分はコロナ禍でデビューしたので、最初の試合からずっと応援は拍手だけだったんで。でも、少しずつ緩くなってきて歓声が聞こえるようになってきたので、盛り上がってるかどうかは凄く敏感に感じますね。だから、あの瞬間の盛り上がりを聞いて「やってよかった!」と思いました。

――
しかも、あの場面で浜崎選手が極められなかったのは、伊澤選手のほうから仕掛けて先の展開を考えてたから。

伊澤
 もう抜ける動きを考えてました。だから、さらにもう一個、浜崎さんがその逃げに対しての極めの仕掛けをやってきてたら危なかったかもしれないですけど、まあ自分が思った試合展開になったかな、と。

――いや、伊澤選手、凄いです!

伊澤
 まあ、判定も勝ったかなと思ったんですけど、それよりも悔しさしかなくて。やっぱり、動けなかったところの心の甘さと、体力には自信があったんですけど、キツいシーンになってくると疲れも出てくるので「やっぱり、まだまだだな」と思いました。

――
ズバリ一番の勝因はどこだったんでしょうか?

伊澤
 やっぱり自分のほうが攻めのバリエーションを持っているというか、どのポジションからでも攻められるというところかな、と。どこにいてもダメージを与え続けているという。だから、年末の浜崎さんとの試合では下からの攻めしかしてないんですけど、今回は上からの攻めもできたので、そこはよかったのかなと思います。

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――
驚くべきスピードで成長している伊澤選手ですが、そこもさらに成長したということなんですね。

伊澤
 一番成長したのは、ずっと練習していた打撃だと思うんですけどね。前回はほとんど打撃のシーンはなかったんですけど、今回は打撃の中で組めたのがよかったのかなって。

――たしかに、今回は浜崎選手が距離を取って打撃の展開を選んでくる可能性もありましたよね。

伊澤
 絶対に距離を取ってくるというのは頭に入れていたので、それでも自分から打撃を出して組み付けたのがよかったのかな、と。距離を取られながらも、もう一個距離を詰められたのが。でも、自分自身、RIZINではまだ浜崎さんとしか試合をしていないので。もっと、RIZINの常連選手とも戦って、自分が一番強いんだぞというところを見せたいですね。

――
試合後のマイクでもトーナメント開催を望んでいましたが……、正直、伊澤選手はもう充分に一番強いと思われているんじゃないですか? 「『○○選手を倒してないから一番じゃない』と言われちゃう」とコメントされてましたけど、浜崎選手を倒したことで、誰もそんなこと思わないんじゃないか、と。

伊澤
 あ、ホントですか? そこはでも……どうなんですかね?

――
そこらへんは、自分でもあんまり自分のことわかってない感じなんですかね?

伊澤
 あんまり状況がわかってないかもしれないです(苦笑)。

――
伊澤選手の強さにみんなが驚いてるというのも、あんまりわかってない?

伊澤
 たぶん、周りの評価と自己評価がいま凄くゴチャゴチャで……。

――じゃあ、周りから「凄い、凄い」と言ってもらっても、よくわからない感じなんですか?

伊澤
 自分のことだけど「ああ、そうなんだ……」みたいな。正直、他人事という感じですかね。

――
たとえば、伊澤選手はよく「自分にはまだまだ弱い部分がある」と言われますけど、それはいったい何と比較してそう思っちゃうんでしょう?

伊澤
 自分の理想像というかゴールというか。だから、自分の中の理想像と比べて“まだまだ”なんだと思います。

――
つまり、もっとコンプリートされた伊澤星花が自分の中にあるわけですね。

伊澤
 そうです! そこと比べたら甘いところばかりなんですよ。だから、対戦相手によって試合へのモチベーションが変わる選手もいると思うんですけど、自分としては誰とやるとかは関係なくて。どんな相手とやるときでも、そこでできる自分の最高のパフォーマンスをできれば100点をあげるし、できなければ全然ダメだしという。

――聞くところによると、練習でも男子選手とスパーして負けたりするとギャン泣きしているそうですね。

伊澤
 ああ、今回も試合前は相当ギャン泣きしてましたねえ(苦笑)。じつは、試合前の2週間切ったぐらいの時期にカンピロバクターになってしまって……。つまり、胃腸炎みたいな感じなんですけど。

――
え、そうだったんですか?

伊澤
 だから全然走れなくなって、体力が全然戻らなくて。でも、試合の2週間前というのはちょうど追い込み時期じゃないですか。だから、追い込みで男子選手とスパーするときに、けっこう横田さんは気を遣って選手のモチベーションを上げようとしてくれるんで、その男子選手に「……手を抜いてやれ」と言ってるのが聞こえちゃって。

――
うわ~~。横田さん、もっと小声じゃないとダメですね!
伊澤 スパーの一本目は弟の風我とやってて、弟からいいポジションを取ったのに極められなくて、立たれちゃって。そこで気持ちが折れてた自分を見て、横田さんが次にやる子に「手を抜いてやれ」と。それが聞こえちゃったので、「うわ、手を抜かれるのか……」と思いながらその男子選手とスパーしたら、ちゃんと手を抜いてくるんですよ(笑)。

――
ハハハハハ。

伊澤
 だから、それが悔しくて。一本獲ってブワーっと泣いて、勝ってるのに泣いてる、極めながら泣いてるみたいな。そういうのが今回では一番印象的なギャン泣きですね(笑)。<1万字インタビューはまだまだ続く>

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