――那須川天心vs武尊のルールや判定基準についてネットを中心に激しい議論が繰り広げられていますが、「キック現地観戦の鬼」サーバルさんにもお伺いします。サーバルさん、よろしくお願いします。
サーバル よろしくお願いします。
――ところでサーバルさんは明日のRIZIN TRIGGER 3rd に行かれるそうですね(4月15日に配信)。
サーバル 第1試合(大谷翔司vs力也)のために会場に行きます。
――RIZIN TRIGGER の第1試合にキックがあることを忘れてました(笑)。
サーバル 今回はジモキックが全然話題になってないんですけど(笑)。素晴らしいキックのカードなので、ぜひ行かせていただこうと思って。2人ともそれなりに知名度ある選手で、顔合わせは非常に新鮮ですし、勝敗に興味があります。ただ、夜に別のキックの興行がありますんで、第1試合を見たら、おいとまさせていただくっていう(笑)。
――ハハハハハハハハ! 第1試合だけ見て、はしご観戦ですか。
サーバル 土日はキック興行のバッティング問題がありまして。新宿フェイスで行われるイノベーションに行く予定です。大谷翔司vs力也は前半戦だろうと予測して購入しました。無事に第1試合になったので心置きなく観戦できます(笑)。
――1試合だけなら配信で済ませようとは思わなかったんですか?
サーバル 今回の会場(武蔵野の森総合スポーツプラザ)は私も行ったことがないので、追加の実体験がチケット代に入ってるかなと。
――素晴らしい姿勢ですね! 今回のRIZIN 2DAYSはキックのカードが少ないって喜んでいるファンが大半なんですけど、もしかしたら一番悲しんでるのはサーバルさんなのかもしれない(笑)。
サーバル そうかもしれないですね。ただキックのいいカードがRIZINで組まれすぎると、今度は新宿フェイスのほうが見られなくなるというジレンマがあります(笑)。
――ちょうどいいわけですね。今回のテーマですが、那須川天心vs武尊の契約体重やルールにはどんな印象がありますか?
サーバル 「3分3ラウンドで延長あり」は予想どおりというか、場合によっては延長2ラウンドの可能性もあるかなと思っていたんですが、まあ2人が戦ってきたルールからいえば驚きはなく。契約体重に関しては天心サイドが相当、武尊選手の身体の大きさを気にしてるんだなって感じました。まあよく武尊選手側が飲んだなっていうのが私の素直な感想です。
――なにしろ契約体重以外にも、当日の体重戻しも規定されている。キックで当日戻しの制限って聞いたことありますか?
サーバル ここまで厳密に、しかも試合直前まで縛るケースはないですよね。
――天心選手は4月のRISEでの引退が決まっていたから、ボクシング転向を延期してまでやるのなら、この条件ではないと……ということなんでしょうね。
サーバル そうなんでしょうね。この試合が合意するまでの流れを見てきたことでいえば、もともと天心選手が武尊選手を追っかけていた状況が途中から変わったじゃないですか。
――天心選手のRIZIN参戦以降、知名度が逆転したことで。
サーバル その逆転現象も面白いですね。途中から武尊選手のほうが偲ぶ恋というか。一方的に思いを寄せて、自分を押し殺しながら「必ず実現させる」と。逆に追っかけていた天心選手のほうがあっさり感が出てきました。その武尊選手の執念が私の中ではすごく気になって。武尊選手の天心選手に対する片思いと言っていいのかわからないんですけど、このルールも武尊選手が飲むことに驚いてますし。
――武尊選手の思いを感じてしまうことで、このルール問題を感情的に見てしまうファンも多いのかなと思いますね。
サーバル ある時期までK-1側が天心選手に「武尊選手と戦いたいのであればK-1と契約すればいい」という態度を取っていたときは、もし2人が戦えば天心選手が問題なく勝つだろうなと思ったんです。逆に武尊選手の偲ぶ恋が始まりだして、武尊選手の人間性とかも含めて、ファンが後押しするようなことが起こり出してから見方が変わりまして。天心選手も昔ほどの神通力を出すような試合がちょっと少なくなり、本来であれば天心選手が年齢と共に才能を開花させ、武尊選手が年齢と共に落ち気味になる2人の交錯だと思っていたんですけど。天心選手が簡単に勝てるのかなっていう疑問がここ最近、芽生えてきました。それはこの条件を飲んだ武尊選手に不気味さを感じるというか。試合当日、武尊選手が体重をうまくクリアしたときに、もともと骨格的にも大きいわけですから、何かが見られるんじゃないかなって。
――天心vs武尊はカード的には旬が過ぎたみたいな言い方もされましたが。こうした人間ドラマが見えることで、より重厚になったわけですね。キックには団体対抗戦的な試合は昔からあったわけですけど、毎回ルールが議論されていたんですか?
サーバル 90年代までさかのぼれば、キックボクシングは団体によってルールが違うということはなかったので、ルールで揉めることはなかったと思います。
――当時はヒジ・首相撲あり、メインイベントの試合になれば5ラウンドですね。
サーバル 何をスタンダードにするかって考えたときには、やはりヒヨコが自分の親を認識するのと同じように、自分がファンになったときのルールになると思うんですよね。私は88年から観戦を始めてるわけですから、その頃のキックボクシングのルールがスタンダードになるんです。ただ、昭和のキックには頭突きがあったり、背負い投げがあったりしましたので。
――キックで背負い投げ!(笑)。
サーバル 私が3分5ラウンドがスタンダードだと言ったとしても、黎明期のキックボクシングには投げがあったと異を唱える方もいると思うんですよ。ちなみに余談なんですけど、私がキックを見始めたのは、ちょうどシュートボクシングが立ち上がったときで。格闘技雑誌は「投げのあるシュートボクシングは、キックの原点回帰だ」という書き方をしてました。
――そういえば、タイ人以外で初めてラジャダムナン王者になった藤原敏男先生もタイ人に首相撲で勝つために、レスリングの練習をしていたそうですね。藤原先生の試合動画を見てると、MMAをやったら、めちゃくちゃ強かったんだろうなって。
サーバル もともとあの方は動物として強いっていう感じがありますけどね(笑)。話を戻すと、さすがに頭突きを認める団体は続かなかったんですけど、シュートボクシングはキックボクシングを基にした亜流のルールであると見てましたが、でもそうとも言えない側面もある。今回の天心vs武尊を5回戦で見たいって声もありましたが、それは40代以上の古いファンが言ってるような印象があります。私も5回戦でやってほしいなって気持ちはありましたけど、それは通らないんだろうなってのは同時に思った感想で。魔娑斗選手が引退試合を5回戦でやったのは、それは彼のスタートが全日本キックだからでしょう。メインは3分5ラウンドで締めるものという思いがあったんじゃないかなと。そういう根っこを持ってる人にとっては、やっぱり5回戦には意味があるというか、そこに意味を持たせられるルールだと思うんです。
――天心vs武尊はそういう文化圏にないってことですね。
サーバル あの2人は3分3ラウンドの申し子なので、これはこれで納得というか。3分3ラウンドの中で最大限のものを見せてもらえればいいかなっていうスタンスで見てます。
――キックのスタンダードが変わっていったのが、いわゆる旧K-1の登場になるんですよね。
アメリカはローキックなし? なぜ天心vs武尊は「10-10」がポイントなのか? キックルール談義はまだまだ続く
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