ジャン斉藤がジャン斉藤をインタビューして激動のRIZIN大晦日10年間を振り返ります!
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――RIZIN大晦日が今年で10年目を迎えましたので「大晦日格闘技の歴史」を振り返りたいと思います。
斉藤 2023年の大晦日前にビックリしたのは「こんなカードは大晦日にふさわしくない!」という一部のファンの声だったんですよ。ボクは2001年から大晦日格闘技を見てきてますけど、興行&内容的に“勝ち確”で安心して見られたのは小川直也vs吉田秀彦がメインの2005年PRIDE男祭り、そして堀口恭司vs神龍誠、朝倉海vsアーチュレッタの2023年RIZIN大晦日の2大会だけ。あとは「お客は入るか」「PPVは売れるか」「内容はスイングするか」で不安で不安で……。
――前年の2022年RIZINvsベラトールの対抗戦の衝撃が強かったから「こんなの大晦日じゃない!」と言いたくなったんでしょうね。
斉藤 あの対抗戦はハードコアファン直撃企画だからよくわかります! でも、食べやすさでいえば断然2023年。PPV件数も大晦日記録でしたからね。誤解をおそれずにいえば、RIZINvsベラトールの対抗戦のほうが大晦日らしくないというか、あれは榊原さんとスコット・コーカーによる“最後の晩餐”だったた。PRIDEとストライクフォースそれぞれUFCに売却した男たちがMMAの歴史に残る対抗戦をやり遂げたドラマがあったんですよね。
斉藤 もともと大晦日イベントって、お正月のおせち料理じゃないけど、余り物で構成されていたんです
斉藤 RIZINになってからは大晦日に照準を合わせたストーリー作りをしているから、かつてほどのカオス感はないんですけど。ここ数年は超RIZINをでスーパーカードを使い切ったことでの苦労はあると思いますよ。フジテレビ時代のRIZINなら朝倉未来vs平本蓮は大晦日に投入したはず。
――RIZINの旗揚げは2015年の大晦日。フジテレビ中継がありました。
斉藤 PRIDE中継を打ち切ったフジテレビがまた榊原さんと手を組むというサプライズから始まったわけですよね。まあ、また手を切るわけですが……理由は忘れましたよ(笑)。
――2015年は12月29日と31日の2DAYS。ヒョードルの現役復帰、青木真也vs桜庭和志、RENAのMMAデビュー。中1日の8人トーナメント……など企画で始まりました。
斉藤 このポスターのスカスカ感が当時の日本格闘技界のエネルギーの弱さを物語っている!(笑)。当時から選手や関係者から「RIZINは頑張ってる選手をなぜ使わない?」という声が飛んでいたんですけど、”冬の時代“が長かったこともあって興行の理解力も薄かったんですよ。
斉藤 戦極が合戦に敗れ、DREAMが悪夢になってしまったことで、興行がうまくいくかどうかの不安が強かった。あの当時のボクは「どっちが勝つか」とかホントにどうでもよくて、とにかく盛り上がってくれ、視聴率を稼いで1年でも長く続いてくれ……というのが偽らざる心境でしたね。ボクがRIZINの会場で唯一生観戦したのはこの大晦日。それ以降、RIZINを会場で見てないのは、地上波に耐えられるかどうか考えちゃって落ち着かない。だったらテレビ画面で試合を見たほうが入り込みやすいなと。
――RIZIN旗揚げで瞬間最高視聴率を取ったのは曙vsボブ・サップの再戦。
斉藤 2003年以来の再戦で「今頃こんなカードを?」という呆れた声が多かったけど、なんだかんだお叱りカードのほうが見られるってことですよ。この大晦日は新生K-1から武尊が参戦して新生K-1ルールでワンマッチ。各方面の証言によれば、ここで天心vs武尊をやろうとした動きがあった。結果やらなくてよかった。
――引っ張って引っ張ったことで東京ドームを満員にしてPPV50万件超えですもんね。
斉藤 MMAパートでは、のちの重量級のスター候補が続々と登場しています。プロハースカやネムコフ、ブルーノ・カッペローザとか。でも、地上波が生命線のイベントだから無名の外国人は柱にならない。よく旧K-1は「外国人だけで成立していた!」と言われるけど、あの頃の外国人はK-1ブームの波に乗って、何度も何度も地上波で露出し続けたことで知名度が獲得できた。当時のRIZINは年に3回程度の地上波放送。1回2回テレビに写った程度で世間に浸透することはなかなか難しい。RENAがここでスターになったのは、この大晦日を迎えるまでの10年近く、不定期ながらテレビをはじめとする一般メディアに顔を出していたからですよね。どこかで見たことのある子がついに地上波で試合をして「こんなにすごい選手なんだ!」という反響があった。
斉藤 ここで那須川天心がMMA2連戦で地上波デビューするんですよ。そして那須川天心が出ることによって新生K-1がRIZINに関わらなくなる……。
――天心はRISEのエース。当時の新生K-1は硬い外交術でしたね。
斉藤 のちに笹原さんが語るには「どっちを取るかということで那須川天心を選んだ」と。那須川天心はキックでは無双してましたけど、世間的な知名度があったわけではない。人気だけなら新生K-1のほうがあったし、スター選手は揃っていた。でも、RIZINが天心に懸けたことで格闘技界の運命は大きく変わっていきますね。
――もしそこで新生K-1との協調路線を取っていたら……。
斉藤 THEMATCHはなかった。ひょっとしたらどこかで天心vs武尊は実現していたかもしれないけど、あそこまで大きな渦にはなってなかった。ただ、RIZINが狂ってるのは那須川天心選手のRIZINデビュー戦はMMAルールなんですよね。しかも29日、31日の2連戦!
――新生K-1と天秤にかけて契約したのに未知のルールで起用!ここで負けていたらどうなっていたのか!(笑)。
斉藤 いやでもこれが大正解で。ここで普通にキックの試合をやってもチャレンジ感は出なかった。一般世間はともかく格闘技ファンにロマンを植え付けることに成功した。並のプロモーターだったらキックの試合をやらせますよ。でも、あえてMMAをやることで付加価値を付けた。地獄のプロデュースの洗礼を浴びたけど、ボクシングに転向したいまでも天心の身体にこびりついていると思いますよ。
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