映画『エル・シュリケンvs悪魔の発明』を上映し
昨晩「大阪」に戻った!
結果は!
あらゆる意味で大成功だった!
『エル・シュリケンvs悪魔の発明』の出品は
スポーツで言えば
まず勝ち目のない試合だったと言える!
なにしろ私が考案した
「デルシネ」という新ジャンルが
観客以前に
主催者側にも
まったく理解してもらえていなかったからだ!
映画祭初日の3月23日に
「宜野湾市(ぎのわんし)」の
「沖縄コンベンションセンター」に到着した
「デルシネ」チームは
大急ぎでセッティングを行った!
最低人数以下のスタッフしか同行を許されなかったため
一人一人が二人か三人分の仕事を行った!
編集マンがカメラのチェックをして
キャストがケーブルをさばいた!
監督である私も
機材を運んだり椅子やテーブルを並べたりした!
”予算の都合”と言われて食事すら用意もしてもらえず
とにかく不休で働いた!
そしてそうする間も私は
宣伝のために表に出る役割をこなさなければならない!
キャストである「稲垣早希」ちゃんや
主演の「エル・シュリケン」さんと
レッドカーペットを歩いたり
ウェルカムパーティに出席したり
マスコミの取材に応じたりと大忙しだ!
しかし!
そんな時に事件は起こった!
そもそも
観客を5つのグループに分けて
それぞれで1シーンずつ撮影し
それらの映像素材をわずかな時間で本編に組み込む
参加型映画の「デルシネ」システム!
本来であれば5つの部屋が用意され
そこをスタジオとして撮影する企画だった!
しかし!
本番当日の少し前になってみると
我々に貸し与えられる部屋は
どういうわけか
たった1部屋しかない
と言い渡された!
主催側に趣旨が伝わらなかったのか
もしくは企画書を読む気が無かったのか
そのどちらかである事は間違いなかった!
それでもなんとか「デルシネ」を成功させるべく
1つの部屋だけで全ての撮影を行えるよう
我々はプランを大幅に変更して
事前に入念な視察を行った!
そしてなんとか上演できる段取りを整えていた!
ところがだ!
私がレッドカーペットを歩いている間に
その最後の望みであったはずの1部屋が
あっさりと”フィルム保管庫”になっていたのだ!
「そんな使用は聞いていない!
そもそも映画の上映になぜ複数の部屋が必要なのか?」
それが主催側の見解だった!
”どひゃー”と驚いた!
主催側が「デルシネ」に関して
まったく理解していなかった事を
開催前日の晩になって知らされたのだ!
そしてそれによって
我々は唯一与えられた「デルシネ」の撮影スタジオを
失ってしまったのだ!
こんな時にはものすごく簡単な方法がある!
”上映中止”だ!
一言それを宣言すれば
翌日からは沖縄観光にいそしむ事ができる!
なぜ中止したのかととがめられても
短文で釈明する事が可能だ!
その上で我々が謝罪する義務も一切見当たらない!
きっと来てくれた観客にも
製作に携わってくれたキャストやスタッフにも
主催側がいっぱい謝ってくれるだろう!
しかし!
それは最低に退屈な方法でしかない!
もしも人生を楽しもうとするならば
”それでもやる!”
を選んだ方がいい!
広い広い建物の中をあわてて散策すると
”何かあった時には好きに使ってもいい部屋”
という名目で
実に広々とした
”ミーティング・ルーム”なる部屋が
放置されているのを発見した!
ありがたい!
なにしろその時の我々以上に
”何かあった”人達はいないだろう!
当然使わせていただくとしよう!
主催側にそれを告げると
「会議がある場合には空けて下さい」
との事!
つまり主催側は
お客さんが映画の出演者となって
笑顔いっぱいに撮影していても
会議があったらそちらを優先して
追い出すと宣言したのだ!
どうやらこの映画祭は
私が想像していたものとは違う種類のお祭りのようだ!
”それでもやる!”
その信念を貫こう!
それこそが私だけの信念論である
「ひろぎの魂」だ!
これはいずれ
私の人生の中で最高の笑い話が
山ほど生まれる時間であるに違いない!
翌日!
『エル・シュリケンvs悪魔の発明』の入場口には
会場前から
5~6人ほどの少年達が座り込んでいた!
春休みを退屈して
スケートボードを片手に
近所から集まって来た子供達だった!
同じ建物では別の映画の上映もあったので
試しに聞いてみる事にした!
「君達何を見るの?」
少年達はぽかーんとした表情を見せた!
何か質問を間違えてしまったのか?
それとも沖縄弁以外で話しかけてしまったために
ちょいと奇異に思われたのか?
怖がらせてしまったのではという不安がよぎったが
彼らから返って来た言葉は
我々「デルシネ」スタッフにとって
最高のものだった!
「見るんじゃないよ!
出るんだよ!」
そして「ほら!」と言いながら
『エル・シュリケンvs悪魔の発明』のチラシを
差し出して来た!
なんだか涙が出そうになった!
主催側が全く理解できていない「デルシネ」を
近所の少年達はもう早くから理解していたのだ!
公園で遊ぶ勢いで
『エル・シュリケンvs悪魔の発明』に
出演しに来てくれたのだ!
いいだろう!
君たちを最高の俳優として
撮影してあげよう!
一生忘れられないほどの
最高の楽しみをプレゼントしよう!
やがてわくわくした目をした観客が
次々と集まり
記念すべき1回目の上演を開始した!
観客の誰もが
最高の笑顔で撮影に挑んでくれた!
照れながらも
わいわい騒ぎながらも
戸惑いながらも
爆笑しながらも
真剣に我々の撮影に応じてくれた!
それを見た我々も
それ以上の笑顔で撮影を続けた!
あろう事か”ミーティングルーム”には
みんなの笑い声を聞きつけて
主催側が何人も覗きに現れた!
「会議があるのでどけて下さい」
などとは決して言えない素敵な場所である事を
すぐに理解してもらえた!
なにしろ映画祭の会場で映画を撮影しているのだ!
それ以上にふさわしい事はないだろう!
完成した映画を
みんなでぎゃあぎゃあ言いながら鑑賞した!
自分達が登場するたびに
スクリーンを指差しては大爆笑してくれた!
豪華俳優と自分達との共演に
みんなが大声を出して拍手をしてくれた!
強いのかどうかもよくわからない
ニューヒーロー「エル・シュリケン」を
いっぱいの歓声で応援してくれた!
大人も子供も実に楽しそうに
「デルシネ」を満喫してくれた!
そこでやっと主催側は
「なるほど!
これがデルシネかぁ!」
と唸り声を出してくれた!
「デルシネ」はその晩のうちに話題となり
新聞やテレビやネットニュースなどから
取材のオファーが次々と寄せられた!
だが!
翌日2回目の上映の際に
最大のトラブルが発生した!
完成したはずの映画が
コンピュータの異常で
取り出せなくなってしまったのだ!
「デルシネ」では致命的な事故だ!
大勢の素敵な演技を
巧みに編集したと言うのに
それを上映できなくなってしまった!
上映開始時間を40分も遅らせたが
それでも復旧はしなかった!
なのでお客さんを撮影した部分を
撮影に使用したカメラから
直接上映するという
とんでもなくめちゃめちゃな上映を行った!
そのため上映は何度も何度も途中で止まった!
私はそのたびにマイクで苦しいジョークを飛ばしながら
説明をして詫びた!
特別ゲストで会場に来てくれた「エル・シュリケン」さんは
客席の子供達をいっぱいあやしてくれた!
一人の観客も途中で帰る事はなかった!
そして怒る人も一人もいなかった!
本来ならば怒鳴られてしかるべきな事態だと言うのに
つぎはぎだらけの上映を
みんなが楽しそうに見てくれた!
しかしそれでよかったなどとは
決して思えなかった!
本当はもっともっと笑顔にできたはずだし
なにしろそれは主催側の対応とは無関係な
「デルシネ」チームによる単独のミスだった!
それだけに
私の心はとんでもなく沈んだ!
ホテルの部屋で一人缶ビールを飲みながら
私はこれまでないほど落ち込んだ!
手に持つ缶が重く感じるほど
全ての力を失った!
立ち直る自信が生まれる兆しは見えなかった!
このまま一生落ち込んで生きるような気がした!
悔しくて悔しくて
あまりにも悔し過ぎて
涙すら出なかった!
しかしだ!
ふと体を抜け出して
そんな自分を遠目で見た時
もう一人の自分がすごい質問をして来た!
「悔しそうだね?
そんなに悔しそうな姿は見た事がないよ!
けどね?
失敗して悔しいと思えるような事に
最近挑んだかい?
どうだい?
後藤ひろひとよ!」
どんな舞台作品でも必ず失敗はあった!
いつでも何かしら大きな失敗があった!
なのに少しも悔しいと思った事が無かった!
ほんの一瞬で
「まぁいいだろ!」
と許して来た!
「今日のお客さんには悪いけど
明日成功すればそれでいいよ!」
そんな言葉で自分を納得させる事ができた!
なのに!
その日の「デルシネ」の失敗を許せる自分はいなかった!
失敗した事をどこまでも後悔しようとしている
そんな自分だけがいた!
ここまで悔しいと思った事はない!
ここまで失敗を悔やむ仕事には
かつて挑んだ事がない!
どうやら私は
どうしてもどうしても
この「デルシネ」を成功させたかったのだ!
私はすぐに抜け出た心を体に戻し
自分だけが従う哲学
「ひろソフィー」
に新たな一節を書き足した!
「失敗しても悔しくない事は
成功しても何ももたらさない!
失敗して悔しいと思えれば
それはその人が”正しい事”に挑んでいる証である!」
会場を那覇市の「桜坂劇場」に移してから
我々は最高に「デルシネ」を楽しんだ!
観客がいなければ成立しないはずの「デルシネ」だと言うのに
趣旨にぴんと来ていなかった主催側は
平日の昼間しか劇場を貸してはくれなかった!
そのために
集まったお客さんの数がわずか18人という時もあった!
しかし!
”正しい事”に挑んでいる自信に満ちた我々には
何の不安も落胆も無かった!
ならば本来5つのグループに分けるところを
2つに分けよう!
そしてお客さんに何シーンも出演してもらおう!
臨機応変なその作戦は見事に成功した!
18人のお客さんが何度も何度も画面に登場し
そのたびに客席からは爆笑と拍手が巻き起こった!
爆笑と拍手が巻き起こる映画上映など
「デルシネ」以外にあろうはずがない!
それこそが私の求めた”正しい事”だ!
1000人で静かに黙って見る映画より
18人で大騒ぎしながら見る映画の方が
価値の高いものであると私は信じている!
いつ途中で放り出しても
誰にもとがめられないほどの悪条件の中
我々は「デルシネ」を成功させた!
そして新し過ぎる「デルシネ」が
一体何であるのかを多くの人に理解してもらった!
4日間かけて全ての上演を終えた我々は
翌日に沖縄在住の「デルシネ」メンバーに車を出してもらい
呑気に沖縄観光に出掛けた!
車の中で何気なくラジオを聴いていたら
パーソナリティがリスナーからのこんな投稿を読み始めた!
「昨日の事なのですが
遊びから帰宅した息子が
おかしな事を言い出しました!
なんでも
”今日の昼間に映画に出た”
と言うのです!
しかもその映画は
その日の晩には完成して上映されると聞き
どういう事なのだろうと一緒に観に行きました!
とても楽しい映画でした!
けど思春期の息子は
終始むすっとした顔で写っていました!
せっかく未来の映画スターになれると思って
期待して観に行ったのにな!」
車内にいた我々は窓を開けたまま
大声で叫んだ!
「デルシネ」が観客の家の中にまで入り込んだ事が
何よりも嬉しかったからだ!
「デルシネ」が親子の絆にまで関われた事が
とんでもなく嬉しかったからだ!
我々は”正しい事”に挑んだ!
そして成し遂げた!
ならば次にすべき事は簡単だ!
これを持って多くの土地を巡ろう!
映画祭への出品を終えた今!
『エル・シュリケンvs悪魔の発明』の宣伝コピーを
改めて唱えたい!
”飛び出す映画”はもう古い!
これからは”出る映画”
「デルシネ」の時代だ!
さーて!
そんな私が次に挑むのは
『インプロビアス・バスターズ』と名を変えた
即興演劇ショーだ!
上演は4月6日!
前回からは「吉本新喜劇」の「尋ね人」こと
「安尾信乃助(やすお・しんのすけ)」先生も参加しているが
今回はなんと!
同じく「吉本新喜劇」から
「ゆみねぇ」こと
「末成由美(すえなり・ゆみ)」伯爵が参加してくれる!
それによってこのイベントは
20代から60代までが入り乱れて
観客からの指示に従う即興演劇を行うものとなる!
もちろん「喜劇王・川下大洋」も健在!
これもまた「デルシネ」同様に
まったく新しいシステムの舞台であるため
まだまだお客さんの方が戸惑っている様子なイベントだが
私はこのショーの司会をしていると
とんでもなくひろいでしまう!
客席を練り歩く私と一緒に
舞台の上の俳優達にいっぱい注文をつけて
どっさり困らせてやろう!
チケットは残りわずかなようなのでお早めに!
詳しくは以下のホームページで!
http://donalab.jp/ib/