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 そんなふうに、ぼくたちが文化祭に向けて準備を進めているときだった。
 一〇月終盤の土曜日、いよいよ碧の舞台が開幕することとなった。
 ぼくとエミ子は、この日ばかりは文化祭の稽古を休んで、初日の舞台に駆けつけた。いや、これもいうなれば稽古の一環だった。碧が舞台に立つのを見ることで、いろいろと吸収できることはあるはずだ。
 ぼくらは、会場よりだいぶ前に着いたので、楽屋を訪れてみることにした。この舞台の関係者たちとはもうずいぶんと親しくなっていたので、パスこそ持っていなかったものの、入り口のところにいたスタッフにすんなりと通してもらうことができた。
 ところが、入ってみると楽屋手前のクロークのところが、なにやら騒然としている。演出家をはじめ、プロデューサーや舞台監督など主要なスタッフたちが顔を突き合わせ、深刻な顔で何かを話している。
「どうしたんだろう?」と、エミ子がぼくにそっと耳打ちし