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「あの子は……英二は、おまえのお父さんのことが大好きですね」
智代は、遠くを見るような顔つきになって話を続けた。
「いつもお兄ちゃんの背中ばかり追いかけて。歳がちょうど一回り離れていたから、喧嘩なんていうのも全くなくて。あの子は、おまえのお父さんを本当に尊敬していた」智代は、遠くを見るような顔つきになって話を続けた。
その話に、サト子は食い入るようにして聞き入った。サト子が昔の話をするというのは滅多にないことなのだ。
「だから、あの変な生き物――台獣が現れてからは、ますます尊敬するようになって」
「えっ?」とサト子が驚いた顔で尋ねた。「――どうして?」
「あら、話してなかったかい?――」と智代は、苦笑いをするような顔になって言った。「あの子は、生物学っていうのかい? それの研究者だったんだ。だから、台獣が現れてからは本当に忙しくなってね。あの子の大学が、政府の依頼だかなんだかで、代表して調査することになっていたんだ」
それを聞き、エミ子の
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