ぼくは、恥ずかしながら40歳くらいまで「言い訳をする」ということができなかった。真正直な人間で、嘘をつけなかった。

しかし、自分の人生が上手くいかない理由を分析するうちに、やがて「他者に嘘をつかないからでは?」と思うようになった。実際、自分が知っている人生が上手くいっている人は、他者に平気で嘘をついていた。しかも、その嘘がばれてもひょうひょうとしていた。要はいい加減なのである。適当なのだ。

そのため、やがて「適当さがないと自分はこの先生きていけない」と考えるようになった。そうして、意識的に嘘をつくようにした。いい意味で他者を軽んじるようにした。自分の都合を優先させるようにしたのだ。言い方を変えれば、自分をもっとだいじにするようにしたのである。

そうしたところ、人生が上手く回り始めた。これはぼくにとってコペルニクス的転回だった。たとえは古いが挫折した「ガリガリの共産主義者が資本主義の急先鋒へ