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こういうTwitterのまとめがあった。
とある喫茶店で、編集者がマンガ家に「お前は今、ストーリー・テクニック・キャラ、今は全部三流だよ、これじゃすぐ終わる。せめてどれかを1.5流にするか、全部を二流にして。そしたら三年くらいは保つから」とアドバイスしたらしい。
それに対してマンガ家が、「何が悪いか教えてください」と尋ねたところ、編集者は「自分で考えろよ。だいたい、自分の作品の問題点もわからずに創作を続けるってのがもうダメなんだよ!」と答えたそうだ。
これが、ネットで話題になっていた。
そこで今回は、もしぼくがマンガの編集者だったら、どんな解答をしただろうかということを考えてみる。
まず、編集者としては、必ずしも「答え」をマンガ家に教えることが正解ではないだろう。編集者としての正解は、適度なヒントを与えて、マンガ家にそれを考えさせたり、あるいは気づかせたりすることである。
しかしながら、その作業はとても面倒くさい。そして面倒くさいと思ったら、ぼくは用意している答えを言ってしまうと思う。ぼくがこれまで培ってきた、ストーリー、テクニック、キャラを一流にする方法を伝授してしまうだろう。
では、一流マンガ家の「ストーリー・テクニック・キャラ」とはどういうものか?
まず「一流マンガ家のストーリー」とは、「事態の成り行きを、読者にとって切迫した問題にさせる」ということだ。
では、それはどうすれば成し遂げられるか?
それは、読者にとっての「正義」が、なんらかの形で果たされない――という状況を作り、そこに主人公を立ち向かわせることである。
例えば、「ひどい編集者がいて、彼によって有望な若手マンガ家が潰されそうになっている」という状況を作る。マンガの読者は、たいてい若手マンガ家を応援している。だから、有望な若手マンガ家が「潰されるのを防ぐ」ということは、読者にとっての「正義」だ。そのため、それがひどい編集者によって果たされないという状況を作ると、もうそのストーリーから目を離せなくなるのである。
これ以外にも、「読者にとっての正義」はいろいろある。それを上手にピンチに陥れるのが、一流マンガ家のストーリーだ。
続いて、「一流マンガ家のテクニック」とは何か?
ところで、「テクニック」とは、なんだろう?
それは「引き算」のことだ。例えば、普通の人が5コマかかって説明するところを、3コマで説明する。あるいは、1つの絵の中に、2つ以上の情報を入れ込める。
これがテクニックである。いかに省略するか――つまりいかに引き算をするかというのが、テクニックというものの本質なのだ。
だから、テクニックを磨くには、引き算というものをとことん研究するのがいいだろう。
マンガ家で引き算が上手いのは、やはり手塚治虫さんや鳥山明さんといった巨匠になるだろう。彼らは、一コマの中に複数の情報を入れ込める。
ところで、引き算がなぜいいかというと、読者の想像力をかき立てることができるからだ。読者に上手く想像させるのである。引き算というのは、読者の想像力を借りることだ。
読者の想像力を借りると、コミットメントが高まる。読者のコミットメントが高まると、より興味を持って読んでもらえるようになる。
例えば、これは小説だが、「マルタの鷹」の冒頭は、こんな感じになっている。
探偵事務所に主人公のサムと秘書がいる。秘書が部屋に入ってきてサムに言う。
秘書「サム、お客さんよ」
サム「(面倒くさそうに)誰だい?」
秘書「すごい美人よ」
サム「お通ししろ。今すぐにだ」
この一連の台詞で、作者が何を省略しているかというと、「サムが女好き」というキャラクター説明である。お客さんが来たという情報の中に、その情報を入れ込んでいるのだ。
これを読んだ読者は、「サムは女好きなんだな」ということを想像する。想像力で得た情報というのは、説明で得た情報よりコミットメントが高まる。
最後、「一流マンガのキャラクター」とはどういうものだろう?
これも、鉄板の設定がある。キャラクターはこれに始まりこれに終わる。
それは何か?
答えは「自己犠牲」だ。
「自己犠牲」を果たす人物こそ、究極のキャラクターだ。誰かのために自分を犠牲にする人のことを、読者は愛さずにいられない。
だから、「このキャラクターはどういう自己犠牲を果たすのだろう?」という問題設定でキャラクターを造形すると、すぐれたキャラクターが生まれる。その際、「なぜ自己犠牲をするのか」ということも併せて考えると、すぐれたストーリーも後からついてくる。
以上が、もしぼくが編集者だったらするだろうアドバイスだ。
しかし、これで果たして若手マンガ家が成長するかどうか?
それは、試したことがないから分からない。
誰か、ぼくの編集でマンガを描いてみませんか?
興味のあるマンガ家の方は、こちらまでご連絡ください。
huckletv@gmail.com
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