結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年4月25日 Vol.265
はじめに
おはようございます。結城浩です。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
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新刊の話。
『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』を書いています。 予定よりだいぶ遅れてしまいましたが、 ようやく脱稿が見えてきました!
先週は第5章と第3章の残りをレビューアさんに送ることができました。 今週はエピローグとあとがきを書く予定です。 そこまでいけば、いったん脱稿し、 編集部に原稿を送れる……かな?
原稿を送ったら、編集部の方で原稿整理しているあいだに、 レビューアさんの指摘事項を結城の方でチェックします。 そこからは並行して作業を進めていくことになりますね。
考えてみれば現時点でも、著者である結城と、 レビューアさんの間では並行作業をしていることになります。 結城は一つの章を書き上げるごとにレビューアさんに原稿を送っています。 結城が次の章を書き進めるあいだに、 レビューアさんは原稿を読み、 結城あてにフィードバックをくれるからです。
アマゾンではすでに予約が始まっていますので、 これからも気を抜かずにがんばろう!
◆『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』
https://bit.ly/girlnote09
応援よろしくお願いいたします!
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マストドンの話。
今週の結城メルマガでは後ほど、 最近話題のSNSであるマストドンの話を書きます。 先週の続きです。
先日結城はsocial.hyuki.netに、 「おひとりさまインスタンス」を実験的に立てました。
◆結城浩のマストドン(social.hyuki.net)実験中
https://social.hyuki.net/@hyuki
でも、現在のところは mstdn.jp の @hyuki0000 というアカウントをメインで使っています。
◆結城浩のマストドン(hyuki0000)
https://mstdn.jp/@hyuki0000
詳しくはまた後ほど。
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自分最古のツイートの話。
ところで、ふと、
自分がTwitterでいちばん最初につぶやいたのはいつごろで、
いったいなんとツイートしたんだろう?
という疑問が心に浮かびました。
調べてみますと、最初のツイートは 2007年4月21日ですね。これです。
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Created my twitter account.
https://twitter.com/hyuki/status/34236342
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驚くべきことに、ちょうど十年前です(!)。
この「結城が行った最古のツイート」は、 Twitterの「全ツイート履歴」から見つけました。
Twitterには標準で「全ツイート履歴」を得る機能があります。 自分のツイートをバックアップしておきたい人には有益な機能ですね。
Webでメニューの「設定とプライバシー」から、 「全ツイート履歴」をリクエストできるのです。
◆Twitter「設定とプライバシー」
https://twitter.com/settings/account
「全ツイート履歴」では、 ツイートしたテキストが単にダウンロードできるだけじゃありません。 リンクをたどることもできる「生きた」形でのエクスポートになりますので、 過去を遡ってみることも容易です。
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『数学ガール』紹介ビデオの話。
先日(2017年4月10日)に、 結城の書籍『数学ガール』が紹介されているYouTube動画を見つけました。 ドラマーの神保洋平さん(@yoheijimbo)の動画です。
◆【数学ガール】女子高生と書評【結城浩】
https://youtu.be/Aa46z7J95wU
動画の内容は『数学ガール』の紹介なのですが、 じんじん先生(神保さん)のやさしい数列の話もあって楽しかったです。
おもしろいと思ったことが一つ。 画面に映っているのは本を紹介している神保さんだけなのですが、 ひとりでずっと話しているわけではありません。 画面には映らない人がときどきツッコミや質問を投げかけています。
つまり、仮想的な《対話》がそこに提示されているというわけです。
その《対話》によって、 視聴者は動画の内容を受け取りやすくなっているのですね。
結城は、『数学ガール』や『数学ガールの秘密ノート』を書いていて、 《対話》がいかに大切であるかをいつも感じています。 登場人物たちは、数学トークという《対話》を行っています。 疑問を投げかけたり、それに答えたり、 相手の発言に異議を唱えたり。 そのようなやりとりがあることで、 ややこしい内容を解きほぐすことができています。
解きほぐしているのは登場人物ですが、 その解きほぐしている場面に、 読者(視聴者)が立ち会い参加しているのが大事なのではないか…… と結城は思っています。
そんなことを神保さんの動画を見ながら思いました。
神保さんのブログにも、数学がいっぱいありますね!
◆ひとりごち - 神保洋平さんのブログ(id:yoheijimbo)
http://final-jinjin.hatenablog.com
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素数の話。
こんなツイートを見かけました。
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そもそも143が『11と13の積』っていう
「お前素数じゃないのかよ」界のサラブレッドなので、
そこに数多の『素数っぽい数字』を生み出した
直感に反するベテラン7をかける事によって、
1001の「お前素数じゃないのかよ」
具合はそんじょそこらの自然数では太刀打ち出来ないレベルにまで達する。
https://twitter.com/ebleco/status/851382665060139009
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143が素数っぽいって言われたら
「え、何いってるの・・・?」って感じあるし、
1001も同様なんだけど、
289の素数っぽさは個人的に凄いと思うし、
これは個人差がありそう。
https://twitter.com/chokudai/status/851945592590925825
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結城には、143も289も1001も素数っぽく感じられます。
何が「素数っぽい」かはさておき、 こういうツイートを見かけると、 結城も何か気の利いたことを言いたくなってきますね (自己顕示欲の発露)。 そこで、考えたのがこれ。
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「314159」
「円周率?」
「素数」
https://twitter.com/hyuki/status/851947822324752384
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「314159」という数の並びを見ると、 多くの人が円周率の、
3.14159...
のことを想像します。 でもよく見ると「3.14159」ではなくて「314159」。 そしてこの数は「素数」です。 おもしろいですよね(無理矢理に賛同を求める姿勢)。
ちなみに「314159が素数である」というのは、 自分で暗記していたわけではありません。 ふと、円周率っぽい数の並びで素数はあるかな……と思ったときに、 「素数判定ツール」を検索して見つかった以下のサイトで調べました。
◆素数判定ツール
https://www.keisan-mondai.com/sosuu.htm
これを使って(手で)調べてみると、
3 は素数である
31 は素数である
314 は素数ではない
3141 は素数ではない
31415 は素数ではない
314159 は素数である
となるようですね。
Rubyには素数に関する prime というライブラリがあるので、 少しプログラムを書けば同じことを実現できます。
◆円周率のような数字列を頭から見て素数を探す(prime.rb)
https://gist.github.com/hyuki0000/8a84085715545078942163abf4d01aff
実行結果は、以下のようになります。
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3 is prime.
31 is prime.
314 is not prime.
3141 is not prime.
31415 is not prime.
314159 is prime.
3141592 is not prime.
31415926 is not prime.
314159265 is not prime.
3141592653 is not prime.
31415926535 is not prime.
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この Prime というモジュールには、 素数を列挙するメソッドもありますので、 いろいろ楽しめそうです。
◆primeライブラリ
https://docs.ruby-lang.org/ja/latest/library/prime.html
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円周率の話。
円周率についてこんなアンケートを取ってみました。
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円周率は3.1415926535...と無限に数字が並びます。
この数字の並びの中に0は出てきますか?
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結果は以下の通り。
1003票のうち66%が「0は出てくる」で、 34%が「0は出てこない」でした。
以下のように「0は出てくる」が正解です。
3.14159265358979323846264338327950…
想像より誤答の人数が多かったですね。
結城がこの問題を出したのは、
(1) 割り切れること(有限小数で表せること)
(2) 数字の並びに0が出てくること
という二つの概念は混同しやすそうだなと思ったからです。
円周率は有限小数では表せませんので(1)は満たしませんが、 0は出てくるので(2)は満たします。
割り算の場合には0が出ると、 「割り切れた!終わりになった!」という気分になります。 割り切れること(1)と、数字の並びに0が出てくること(2)とは、 別の概念なのです。
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統計の話。
先日、大羽成征さん(@shigepong)がツイートなさった、 以下の図に大変感動しました。
◆大羽成征さん(@shigepong)による「母集団・母数・標本・統計量」の図
◆大羽成征さんのツイート
https://twitter.com/shigepong/status/852328842681131009
この図では、母集団・母数・標本・統計量という4つの概念が、
・未知か既知か、
・現実かモデルか、
という二つの軸で整理されています。
母集団は、未知の現実
母数は、未知のモデル
標本は、既知の現実
統計量は、既知のモデル
ということになります。そしてさらに、
サンプリングとは、
「未知の現実」である母集団から、
「既知の現実」である標本を得ること
などのように、四つの概念の相互関係も図から読み取れます。 すばらしい!
この図を見ると、統計では「似て非なるもの」 が重要概念になっていることがよくわかります。 似たような文字、似たような記号で、 異なる四つの概念を扱うのですから、 難しく感じるのはあたりまえかもしれません。
この図を見て感動するのは、 その似て非なる部分がきれいに整理されているからでしょう。 頭の中がきちっと整えられていく感じがします。
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Webで動くMacintoshの話。
1991年のMacintosh OS System 7.0.1がWebブラウザで動作する、 というニュースを知りました。
◆Macintoshの「System 7.0.1」がウェブブラウザーで操作できる、Internet Archiveが公開
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/1055220.html
本体は以下です。
◆MacOS System 7.0.1 Compilation
https://archive.org/details/mac_MacOS_7.0.1_compilation
このページの中央にある「電源ボタン」を押すと、 各種データをダウンロードして、やがて……
Welcome to Macintosh
というオープニングになります。感動ものですね!
そしてもちろん、Macの操作画面に移ります。 Macの操作は、ふつうにマウスで行うことができます。 ほんとにWebブラウザ内でMacが動いているのです。
以下は、製図ソフトのMacDrawを動かしているようすです。
むかしハードウェアで実現していたものが、 現在は、JavaScriptの上で動いていることになります。 まったく驚きですね!
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それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。
どうぞ、ごゆっくりお読みください!
目次
- はじめに
- マストドンとアイデンティティ(2)
- 核になるものを見つける - 仕事の心がけ
- 夫婦は不思議
- おわりに