Vol.095 結城浩/2年間の学び/フロー・ライティング/ここ変更予定・ここ最前線/

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2014年1月21日 Vol.095

はじめに

おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

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今年も第四週目になりました。 いかがお過ごしですか?

先週末の土日は大学入試センター試験でした。 昨年2013年のセンター試験に初めて「数学的帰納法」が出たので、 『数学ガールの秘密ノート/整数で遊ぼう』にも数学的帰納法の話題を書きましたが、 あの試験からもう一年が経ったのですね……時間の経つのはほんとうに早いものです。

結城も月曜日に数学を何問か解いてみたのですが、 時間制限がある中で解くのはなかなか厳しいものですね。

マークシート方式のために解答枠の大きさがヒントになることが多々ありました。 たとえば[ア][イ]のように二マス並んでいるだけなのに答えがルートを含む 分数になったとしたら、自分がまちがっているのが明らかです。 そこで自分の計算を読み直し、ミスを見つけることができました。

とはいえ問題を読みまちがえて焦ったあとの精神的リカバリー(大げさ)なども、 場数を踏んでいないとつらそうです。 大問の最初の方でミスがあると、かなりダメージが大きいです。

いずれにしても寒い時期ですから、受験生みんなが体調を崩さず 実力を出してほしいなと思います。

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「学び」といえば、先日@fuqinho さんという方のブログのエントリを興味深く読みました。

 ◆2年間の独学をふりかえって | Happy Coder
 http://tech.fuqinho.net/?p=620

まずタイトルの「2年間の独学」というフレーズだけでドキドキ・ワクワクしてきます。 この方は「2012年と2013年を独学に費やしました」という書き出しで、 自分の独学を振り返っています。

以下のやる気対策が非常に興味深いですね。

 ・運動する(2日に1回は1時間くらいウォーキングする)
 ・日光を浴びる
 ・広いところに行く(自分の部屋から自習室へ)
 ・数値で成果を測る(点数の出るテスト、または累積学習時間)
 ・時間を測る/区切る(ストップウォッチも活用)
 ・1日の勉強は、軽いの->重いの->楽しいの の順でやる

結城が一人で仕事するときに考えていることと重なる部分も多く、参考になりました。

学ぶ人の話、学ぶ姿勢の話を聞くのはたいへん刺激になるものですね。 「刺激になる」というのは具体的にいうと、

 ・自分の学び方を振り返り、反省するきっかけになる
 ・自分の学び方と他人の学び方を比較して、どこが違うのか、どこが同じなのかを考える
 ・自分の学び方に取り入れられる要素はないかを考える

ということです。

人間はロボットではないので、たいへん微妙な取り扱いが必要です。 日々仕事に立ち向かい、効果を上げるためどんなことができるのか、 ふだんから気をつけていたいと思います。

あなたは、何か工夫していることはありますか?

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先週の結城メルマガで「インクリメンタルな環境改善」の話を書いたところ、 何人もの方から反響があったので、今回も少し書いてみようと思います。 先週から今週にかけて行った「インクリメンタルな環境改善」です。

(時間を定めた作業用プレイリスト)

結城はカフェで仕事をするときには、 耳栓がてらノイズキャンセリングのヘッドフォンを使います。 そして、予定作業時間に合わせた長さになるように曲を集めた プレイリストで音楽を聴いています。 二本(60分用と90分用)作りましたが、たいていは90分用を聞いています。

(曲想を変えたプレイリスト)

あまり続けて作業し過ぎるのも良くないので、 できれば90分程度で休憩を入れたいと思っています。 でも、集中していると(それこそフロー・ライティングの状態だと)、 音楽が止まったことも分からず続けて作業してしまいます。 そこで、90分経った最後の曲は曲想をがらっと変えました。

具体的には、85分ほどのバッハのチェンバロ曲の最後に、 アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』で使われた「コネクト」という曲を入れています。 曲想が急に変わるので「はっ」と我に返ります。 最近はこの曲でフロー状態から現実世界に戻ってくるのですよ。

(マウスカーソルによるホットコーナーの解除)

Macでは、スクリーンの四隅にマウスカーソルを移動すると、 特定の画面に切りかわるホットコーナーという機能があります。 たとえば、現在結城の設定では、 左上隅にマウスカーソルを移動すると「スクリーンセーバ」が開始し、 画面がロックされます。

結城はMacBook Air買いたてのころ、画面の四隅すべてに機能を割り当てました。 でも、左下隅や右上隅などはふだんの操作でもついマウスカーソルを行くところ。 そのため予期しないタイミングで画面が切り換わりびっくりすることがよくありました。 そのたびごとに自分の「貴重な数秒」が失われるわけです(細かい話ですが)。

そこで、必要な機能が何であるかを見極めて、 左上隅のスクリーンセーバ以外はすべて解除しました。 これもまた(ほんのちょっぴりの)改善になります。

結城はほとんどの仕事をコンピュータの画面を見、 キーボードとマウス操作で行っているわけですから、 ちょっとの改善でも長期的には大きな影響が出てくると思っています。

(不要な宣伝メールの解除)

先々週に引き続き先週も、不要な宣伝メールを多数解除しました。 まったく読まない宣伝メールや、以前は読んでいたけれど最近は読まない宣伝メールって 意外に多いものですね。

(作業用スクリプトの改良)

結城はRubyやPerlといったプログラミング言語を使って、 作業用のスクリプトを多数書いています。 たとえば、

 ・領収書の情報を入力すると、会計ソフトにインポートできるCSVファイルを生成するスクリプト
 ・あるフォーマット入力したテキストを、メールマガジン用に変換するスクリプト
 ・LaTeXの入力ファイルを、適宜バックアップ取りながらPDFに変換するスクリプト

などです。 これらのスクリプトはユーザが自分一人ですから、 必要になったときにバタバタと書いて動けばOKとしたものが多いです。 でも、これらのスクリプトはとても頻繁に使うものですから、 ちょっとした改善でもばかにできないと思いました。

たとえば、

 ・注目すべき警告が出力されたらそこだけハイライトで目立たせる
 ・入力ミスがあったときのエラー処理を厳しくして、後工程が楽になるようにする
 ・できるだけ「自動的」に判断するようにして、人間側(自分)の負担を減らす

などです。

今年はとにかく「習慣の力」を身につけたい。 そしてその一環として「インクリメンタルな環境改善」を心がけています。 「インクリメンタルな環境改善」が習慣になれば、 長期的にはとても大きいと思いませんか。

「インクリメンタルな環境改善」がうまくいくと、 とても楽しいものです。「環境を自分が改善している」ということを実感すると、 「ああ、私は作業の全体をうまくコントロールできているんだな」と無意識のレベルで 感じるからかもしれません。これは作業の満足度を高める効果がありますね。

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作業のコントロールといえば。

確定申告に向けて会計作業を進めています。 毎月こまめにつけていたつもりなのですが、意外に抜けがあるものですね。 昨年の途中でメインマシンをWindowsからMacに変えた影響もあって、 少しごたごたしています。

しかし、今年は「じっくり作業記録を眺める」ことを習慣にしようと思っており、 それを実践しています。具体的には会計作業の場合、 入力した会計用のスプレッドシートを「じっくり眺める」ということです。

人間の頭というのは不思議なもので、 時間を掛けてじっくり眺めていると、さまざまなことに気づきます。

 ・この数値は毎月変化しないはずなのに、どうしてこの月だけ変化しているのか。
 ・科目ごとに並べ替えて表示したら、新しいことに気づくのではないか。
 ・ここの支払は1万円前後のはずなのに、どうしてこの月は3万円なのか。

このような「気づき」のおかげで、重大な入力ミスを見つけたり、 もう使っていないネットサービスにお金を支払っていることを見つけたり、 子供の電話代の大きさを見つけたりしたのです。

思うに、時間をかけて「じっくり眺める」という行為には、 リラックス効果があるようです。

時間が短い中で作業するとどうしてもあわててしまう。 あわてるというのはストレスがかかっている状態で、 あまり余計なことまで気が回らない。 でも、自分に対して「じっくり眺めよう」と言い聞かせると、 自分をリラックスさせ、新しい発見をうながす効果があるようなのです。

「じっくり眺めよう」と自分に言い聞かせると、 リラックスし、余裕を持ってあたることができるので、 まるで自分の能力がアップしたような錯覚にもつながります。 そして、先ほども書いたように「うん、自分は作業をコントロールできてるな」 と実感するのですね。

「じっくり眺めよう」というのはなかなかあなどれないスローガンですよ。

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さて、そろそろ結城メルマガを始めましょう。 今回のメインコンテンツは、 夢中になって書くことをテーマにした連載「フロー・ライティング」です。

どうぞお楽しみください!

目次

  • はじめに
  • フロー・ライティング - 続けることを、始めよう
  • 文章を書く心がけ - ここ変更予定・ここ最前線
  • 次回予告