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「犬のように彼を使う」 2014年3月21日
先日おじさまが面会室で「バターつけて食べるなら塩ビスケットがいいだろうと思って差し入れておいたから」と言っていた。
塩ビスケットってどんな物だろう。
マリーより美味しいのかなぁ。
ワクワクしながら待っていたら、届いたのはナビスコのリッツクラッカーだった。原材料名に小麦粉の次が植物油脂のクラッカーはバターに合わない。ジャムとコンビーフは相性良し。
今週面会に来た年上の彼に、売店にあるビスケット全種類買ってとお願いした。この際、手に入るビスケットを徹底研究しようかと思ったのだ。
勿論きっかけはバターとマリービスケットのハーモニーに感動したからであるが、もうひとつ気になることがあった。
東京拘置所のウィキペディアに
「一般雑居房で『ビスケット』の購入願箋を提出すると、愛知県にある松永製菓の『しるこサンド』が届けられる。関東でなぜ愛知県の菓子なのかは未だに不明」
という記述を見つけたからである。
まず、食料品の購入において独居と雑居でメニューの違いはない。埼玉も同じだったし、東拘で担当のよしみさんに尋ねても同じだという回答を得た。
そして現在、正しく言えば私が入所した時から「しるこサンド」という商品は売っていない。日用品においては、独居では許可されているが、雑居にいる被収容者は購入できない物品があるのは本当です。しかし「一般雑居房で」という記述は食品においては正しくないと言える。
これ以外にも特に構造についての記述は間違いが多い。新舎房での入退場は看守、施設職員のセキュリティカード認証システムと指紋認証システムが採用されており、2つが一致しないと開錠されない、というのも事実ではない。
詳しくは書けないが、私が入所した2013年夏の時点でウィキペディアに記されているシステムではなかったし、今年になってからセキュリティ機器が新しい物に付け替えられた。
それはともかく、ビスケットのお話。関東で愛知県の菓子が売られているのが謎という発想はおかしくないですか。東拘では北海道から九州まで全国津々浦々で製造された商品が売っていますよ。
佐藤優氏が「獄中記」の文庫版あとがきに平成13年の自弁物品購入価格表を掲載していたので確認したら、何と「ビスケット(しるこサンド)156円」を発見。ウィキペディアは矯正協会が納入していた時代の古い情報を載せていると思われます。
賞味期限の短い食品は首都圏の製造者が多いです。私が好物のカステラは東京都足立区花畑、どら焼きは中央区湊、ワッフルは中央区築地、大福と餡ドーナツは埼玉県八潮市のお店で作られている。
ちなみに賞味期限の長いどら焼きや大福もありますが、街の和菓子屋ではなく工場製です。こちらはマズい。 来年まで日持ちする羊羹は愛知県豊橋市。しょうゆは千葉県銚子市。練乳は北海道の雪印興部工場。さんまの蒲焼きは、根室と釧路の道東産秋刀魚を北海道厚岸町で加工し、たれと山椒が別添えされた本格的なもの。さんま1.5枚に、たれ17g、山椒0.1g付きでかなり豪華なさんま丼が部屋で作れてしまうのだ。
ビスケットを差し入れてくれた彼は、今月写真を送ってくれた。27枚の写真を同封したという手紙だけが3日に届いた。
写真が私に交付されたのは19日。21枚だけ。6枚は禁止領置。2週間以上、拘置所の検閲で審査をされていたことになる。私が彼に頼んだのは、愛犬の写真を撮影して送ってほしいということだけである。
「犬の顔を掴んで自分で撮りました。結構難しいなァ~。」と書かれた手紙は3日に読んでいた。座っている犬に遠くからカメラを向ければ済むことの何が難しいのかわからず、写真が届くのを待っていた。
彼から、愛犬はやたら力が強い、しかも吠える、牙がすごい、散歩してたら子供はビビる、警察犬の学校に入れようと思っているなどと聞いていたので大型犬に縁のない私には想像がつかず、写真を見たいと所望したのだった。
果たしてその犬は松嶋菜々子にとっては小動物という犬で、去年新聞の全面カラーで見た6頭の番犬とカップルの写真と共に「もっと簡単に、大切なパートナーの未来を守れます」というコピーがついたチューリッヒ生命の広告を彷彿とさせた。
なにゆえ審査に時間がかかったのか。私は色々考えた。
彼は左腕に愛犬を抱え込み、左手で犬の首を鷲掴みにし、右にカメラを持ち自分と犬をフレームに入れてシャッターを押したらしい。 彼は黒いジャケットを着てサングラスをかけていた。マフィアのようである。正直言って堅気には見えない。拘置所から反社会的勢力だと疑われた可能性もあるだろう。職業欄に経営者と書く彼を、何とか組や何とか会の長だと思い身元調査をされたのかもしれない。確かにインテリヤクザ的な風貌をしていることは紛れもない事実であるが、疚しいことはない。
彼のプライベートはともかく、私は彼に写真の撮り直しを命じた。自然光の下で、引きで撮ってと。
彼は私に言ったのだ。「俺のことは犬のように使ってもらっていい」と。
だから私は「犬のように可愛がって使わせて頂きます。覚悟して下さいね」と言った。私と彼とはそういう仲である。
先日おじさまが面会室で「バターつけて食べるなら塩ビスケットがいいだろうと思って差し入れておいたから」と言っていた。
塩ビスケットってどんな物だろう。
マリーより美味しいのかなぁ。
ワクワクしながら待っていたら、届いたのはナビスコのリッツクラッカーだった。原材料名に小麦粉の次が植物油脂のクラッカーはバターに合わない。ジャムとコンビーフは相性良し。
今週面会に来た年上の彼に、売店にあるビスケット全種類買ってとお願いした。この際、手に入るビスケットを徹底研究しようかと思ったのだ。
勿論きっかけはバターとマリービスケットのハーモニーに感動したからであるが、もうひとつ気になることがあった。
東京拘置所のウィキペディアに
「一般雑居房で『ビスケット』の購入願箋を提出すると、愛知県にある松永製菓の『しるこサンド』が届けられる。関東でなぜ愛知県の菓子なのかは未だに不明」
という記述を見つけたからである。
まず、食料品の購入において独居と雑居でメニューの違いはない。埼玉も同じだったし、東拘で担当のよしみさんに尋ねても同じだという回答を得た。
そして現在、正しく言えば私が入所した時から「しるこサンド」という商品は売っていない。日用品においては、独居では許可されているが、雑居にいる被収容者は購入できない物品があるのは本当です。しかし「一般雑居房で」という記述は食品においては正しくないと言える。
これ以外にも特に構造についての記述は間違いが多い。新舎房での入退場は看守、施設職員のセキュリティカード認証システムと指紋認証システムが採用されており、2つが一致しないと開錠されない、というのも事実ではない。
詳しくは書けないが、私が入所した2013年夏の時点でウィキペディアに記されているシステムではなかったし、今年になってからセキュリティ機器が新しい物に付け替えられた。
それはともかく、ビスケットのお話。関東で愛知県の菓子が売られているのが謎という発想はおかしくないですか。東拘では北海道から九州まで全国津々浦々で製造された商品が売っていますよ。
佐藤優氏が「獄中記」の文庫版あとがきに平成13年の自弁物品購入価格表を掲載していたので確認したら、何と「ビスケット(しるこサンド)156円」を発見。ウィキペディアは矯正協会が納入していた時代の古い情報を載せていると思われます。
賞味期限の短い食品は首都圏の製造者が多いです。私が好物のカステラは東京都足立区花畑、どら焼きは中央区湊、ワッフルは中央区築地、大福と餡ドーナツは埼玉県八潮市のお店で作られている。
ちなみに賞味期限の長いどら焼きや大福もありますが、街の和菓子屋ではなく工場製です。こちらはマズい。 来年まで日持ちする羊羹は愛知県豊橋市。しょうゆは千葉県銚子市。練乳は北海道の雪印興部工場。さんまの蒲焼きは、根室と釧路の道東産秋刀魚を北海道厚岸町で加工し、たれと山椒が別添えされた本格的なもの。さんま1.5枚に、たれ17g、山椒0.1g付きでかなり豪華なさんま丼が部屋で作れてしまうのだ。
ビスケットを差し入れてくれた彼は、今月写真を送ってくれた。27枚の写真を同封したという手紙だけが3日に届いた。
写真が私に交付されたのは19日。21枚だけ。6枚は禁止領置。2週間以上、拘置所の検閲で審査をされていたことになる。私が彼に頼んだのは、愛犬の写真を撮影して送ってほしいということだけである。
「犬の顔を掴んで自分で撮りました。結構難しいなァ~。」と書かれた手紙は3日に読んでいた。座っている犬に遠くからカメラを向ければ済むことの何が難しいのかわからず、写真が届くのを待っていた。
彼から、愛犬はやたら力が強い、しかも吠える、牙がすごい、散歩してたら子供はビビる、警察犬の学校に入れようと思っているなどと聞いていたので大型犬に縁のない私には想像がつかず、写真を見たいと所望したのだった。
果たしてその犬は松嶋菜々子にとっては小動物という犬で、去年新聞の全面カラーで見た6頭の番犬とカップルの写真と共に「もっと簡単に、大切なパートナーの未来を守れます」というコピーがついたチューリッヒ生命の広告を彷彿とさせた。
なにゆえ審査に時間がかかったのか。私は色々考えた。
彼は左腕に愛犬を抱え込み、左手で犬の首を鷲掴みにし、右にカメラを持ち自分と犬をフレームに入れてシャッターを押したらしい。 彼は黒いジャケットを着てサングラスをかけていた。マフィアのようである。正直言って堅気には見えない。拘置所から反社会的勢力だと疑われた可能性もあるだろう。職業欄に経営者と書く彼を、何とか組や何とか会の長だと思い身元調査をされたのかもしれない。確かにインテリヤクザ的な風貌をしていることは紛れもない事実であるが、疚しいことはない。
彼のプライベートはともかく、私は彼に写真の撮り直しを命じた。自然光の下で、引きで撮ってと。
彼は私に言ったのだ。「俺のことは犬のように使ってもらっていい」と。
だから私は「犬のように可愛がって使わせて頂きます。覚悟して下さいね」と言った。私と彼とはそういう仲である。
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