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木野龍逸の「ニッポン・リークス」
                   2016/10/2(No.45)
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[目次]
1.東電福島第一原発事故トピック
【No.45】減らない汚染水、タンク不足に有効な対策なし
2.メルマガ後記
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1.福島第一原発事故トピック(1)
減らない汚染水、タンク不足に有効な対策なし

 原子力規制委員会の特定原子力施設監視・評価検討会は9月28日に第46回の会合を開催。汚染水対策の柱とされていた凍土遮水壁の効果の有無についての結論は、東電によるデータ提出がなく、先送りになった。

 一方で検討会では、規制委の更田委員が、原子炉建屋やタービン建屋などの地下に溜まっている6万m3以上の汚染水の総量ではなく、汚染水に含まれる放射性物質の量を減らす方向で対応するよう、東電に求めた。東電は同日の資料で、建屋地下の汚染水は2020年秋までに全量を処理するための作業工程を示しているが、対策には疑問が残る。

 喫緊の課題になっているのは、汚染水を貯蔵するタンクが不足していることや、そのために漏洩事故を起こすリスクの高い組み立て式タンクを、溶接タンクに切り替える作業が遅れていることだ。しかし検討会で議論されている放射性物質の総量を減らす対策は、建屋地下にある復水器に溜まっている、事故初期の濃度の高い汚染水約2000m3を処分するという内容なので、タンク不足の解消にはつながらない。増え続ける汚染水とタンク建設のイタチごっこは、当面続きそうだ。

 今回の検討会で出た対策や目標は次のようなものだった。

1.汚染水に含まれる放射性物質の総量を減らすことでリスクを下げる。
2.サブドレンのくみ上げ設備や、くみ上げた水の浄化設備を強化し、海に放出できる量を増やして汚染水貯蔵量の増加を抑える。
3.上記対策を進めることで、2020年までに建屋内汚染水の処理を完了する(1〜3号機原子炉建屋地下を除いて、建屋際下部の床面を露出させる)。

 この中の2020年までに建屋内汚染水の処理を完了するという目標は、中長期ロードマップの中で示されているもので、東電は、凍土遮水壁の効果が現れなくても可能だと説明している。凍土遮水壁の効果が出れば、さらに2年前倒しして2018年には達成できるという見込みも示している。

 しかしこの見通しは、かなり甘いのではないかと思える。まず、汚染水の現状を見てみたい。