葉山に棚田があるというと多くの人は驚く。僕自身もそうだった。海と山に囲まれた自然豊かな町ではあるけれど、東京から1時間足らずの場所でもあるのだ。 
 農をきっかけにつながった地元の方の紹介で、春から葉山の棚田での米作りに携わることになった。134号線から里山に続く長いトンネルを抜け、曲がりくねった道を上っていく。窓から吹き込む風には夏草の湿った匂いが混じり始めている。カーラジオが熱中症に注意と呼び掛ける五月の終わりだった。