海が封鎖された大型連休中、娘を連れていくのはもっぱら里山の畑だった。種を蒔き過ぎたスナップエンドウの収穫と夏野菜の仕度が毎日ぼくらを待っていた。
初夏の青空の下、匂い立つほどの新緑を繁らせた里山は縮こまった心を解放してくれた。鳥の囀りだけが響き渡っていた。
「ひとりでスナップエンドウ収穫できる?」
「できるー」
三歳の娘に収穫を任せて、夏野菜の苗を植える準備を始めた。声が聞こえていれば少しぐらい目を離しても大丈夫なのが畑の良いところだ。どのくらい経っただろうか。「ほうさくだ、ほうさくだ、まんねんほうさくだ」と絵本のフレーズを口遊みながら腰につけてあげた袋に収穫したスナップエンドウを放り込んでいた娘が気がついたときには足下に立っていた。
「どうしたの?」
「うんち」
「マジで?」