旅するように暮らすんだ。十年前、海辺の町への移住を決めたときはそんな自分自身をイメージしていた。誰もいない浜辺でビール片手に青い空を漂う真っ白な雲を見上げて昔の恋に思いを馳せたりする。もちろん手にしたビールはハートランドかコロナの瓶じゃなきゃいけない。旅人に寄り添うのは缶ビールという日常ではなく、瓶ビールという非日常でなければならないのだ。だってほら、旅先では日本酒だってワンカップじゃないか。

 人生で何をもっとも重んじるか。人それぞれだと思うけれど、ぼくの場合は「自由」だった。