物心ついた頃から既存の社会秩序やルールに漫然と従わされることが嫌いだった。ひとつ一つ自分で精査して必要だと納得すればむしろ率先してやるし、必要性を感じなければ放り出したり、逃げ出したりする。既製品の服が身体にフィットしないと感じたときは抗いたくなる性分だった。自主性こそがすべての行動の源だった。

 それが「アナキズム」という思想であることを知ったのは大人になった後のことだ。そして、そういう人間がそういう人間のまま父親になることがとても厄介であるという壁に今ぼくは直面している。