漆黒の闇で激しい風が唸っていた。脆弱な首都圏を混乱に陥れた雪の夜、この海辺の町には「強風波浪警報」が発令され続けていた。凪いでいることが多い海もひっきりなしのうねりで身震いするほど荒れているのだろう。真っ暗で何も見えないけれど、見えないことがかえって怖さを増長させていた。こんな日は夢の世界で嵐が通り過ぎるのを待つしかない。僕らはいつもより早い時間に毛布に潜り込んだ。

 久し振りに疲れていた。雪でダイヤが大幅に乱れていた中、打ち合わせで東京に行かざるを得なかった。