「今年は不作かもしれないらしいね」

 浜で顔を合わせる近所のおばあさんや精肉店のご主人までもが時候の挨拶のように口にするのは、ワカメのことだ。ヒジキなどとともに2月から春にかけて解禁となる海草なのだけれど、今シーズンは不作かもしれないという情報が町一帯に口コミで駆け巡っていたのだ。原因は秋から冬にかけて海水温が思うように下がらなかったことだという。去年の夏、熊本の海草屋さんを取材させて頂いたときにももう45年、海草が採れていないと伺った。沖縄にしかいないような熱帯魚がうようよ泳いでいると言っていた。いよいよ来たか、と思った。地球温暖化によって上がり続けている大気中の熱を海が吸収している為、秋になっても海水温が下がらないのだ。結果、秋に根付いて成長するワカメは根付くことができず、不作となってしまう。神奈川だけでなく、千葉県などでも今年は天然、養殖ともに不作だそうだ。